豪雨災害から考える

2009年7月28日 カテゴリ:お天気や

豪雨災害から1週間が経ちました。
現場の状況を見るたびに、
この災害を防ぐことは出来なかったのかを考えます。
 
「災害が起きた時は、自分の呼びかけが足りなかった、と思いなさい」
先輩の気象キャスターの言葉です。
天気予報の一番の使命は「人間の命、財産を守ること」。
その使命を果たすことが出来なかったことが、悔やまれてなりません。
 
今回の災害が発生してから、行政の対応、土地開発など、
様々な問題点が浮かび上がっていますが、
私は天気予報の観点から、検証してみました。
 
災害発生前日の20日、私は大雨情報を伝えていました。
すでに交通の乱れが発生するような大雨に見舞われていて、
その後も、さらに激しい雨となり、土砂災害の危険が高まる予想。
典型的な梅雨末期の大雨パターンで、
土砂災害や川の増水、氾濫、低地の浸水などへの十分な警戒を
伝えていました。
前日のうちに、ある程度、予測されていた、という点では、
天気予報は防災のために、一定の義務を果たした、
と言えるかもしれません。
しかし、それでも災害が発生してしまった……
 
以前、気象情報サービスの現場で働く先輩に、
こんな言葉も、教わりました。
「天気予報は、“伝える”だけでは不十分。“伝わる”ことが大切。」
 
私は災害発生前日、大雨災害の危険があることを伝えていました。
しかし、皆さんに、危険であることが、しっかり伝わっていたか?
防災意識を最大限に高めてもらえるような、
情報の伝え方が出来ていたか?
ここは、なかなか難しい問題です。
防災心理学には「正常性バイアス」という言葉があります。
人間には「自分だけは大丈夫。災害には遭遇しない。」
という先入観があり、
危険が迫っていても、平常心を保とうとする心理が働くそうなんです。
避難勧告や避難指示が出ても
避難する人が少ない、というニュースもありますが、
それは、この心理状態が影響しているそうです。

ひとりひとりの心の持ちようであり、天気予報に責任はない、
と言ってしまえば、それまでですが、
危険が近いことを、最初に知らせるのは、天気予報であり、
この天気予報には、
人間の行動を変えるだけの説得力を持たせる努力が必要です。

災害は忘れた頃にやってくること、
そして、情報を流すだけでは意味がないことを、今回、痛感しました。
皆さんが、どんな場面に遭遇するのかを想像しやすく、
命、財産を守る行動に繋がる気象情報を、お伝えしていけるよう
今後、いっそう努力していきたいと思います。
また、皆さんも、身の回りにどんな危険があるのか、
危険が迫った時に、どんな行動を取ればいいのか、
普段から災害に対する想像力を高める練習を
行って頂けたら幸いです。