ヤスベェの人生100歳満点!

転ばぬ先の知恵

2025年03月 月間アーカイブ
終活の未来②
2025/03/29放送
出演者
NPO法人 山口県終活支援協議会 理事長 徳沢靖さん

◆いよいよ最終回になりました。リスナーの皆さん、3年間ありがとうございました。スタジオには先週に引き続き、NPO法人 山口県終活支援協議会理事長 徳沢靖さんにお越しいただきました。とくさん、おはようございます。よろしくお願いします。
 
◇おはようございます。よろしくお願いします。
 
◆さてテーマは先週に続き、「終活の未来」ですね。とくさん、最終回なので、特に分かりやすく、気合いを入れてお願いしますね。
 
◇分かりました。この3年間本当にありがとうございました。このスタジオにも大きな変化がありました。まずパーソナリティーのヤスベェさんと奥様も終活カウンセラー研修・試験を経て「終活カウンセラー」になられたこと、さらに番組のディレクターの伯野さんは研鑽を積まれ、「認定終活講師」にまで上り詰められました。またリスナーの中にも「終活カウンセラー」になられた方が多数おられ、「終活」の普及について大きな成果が上がったものと考えています。これは素晴らしいことで、本当にありがとうございました。
 
◆私もこの3年間で「終活」について随分と学び、詳しくなりました。
 
◇そうですね。それでは先週の続きとなりますが、「終活の未来」についてお話しします。
 
◆お願いします。
 
◇まず数字的なことですが、全国の65歳以上の単身高齢者数、いわゆる「お一人様」は2020年は723万人でしたが、2050年には1084万人と1.5倍になると予測されています。
 
◆え~、2050年には単身高齢者が1000万人を超えるんですか?
 
◇そうです。そして少子化や結婚しない未婚化が進んでおりますので、その内3親等以内の親族がいない、まさに「身寄りのないお一人様」は現在286万人ですが、2050年には448万人になると推計されてます。
 
◆は~、家族がいない「身寄りのないお一人様」が2050年には448万人になる予測なんですか?
 
◇そうです。これは高齢者の9人に1人にあたり、今の状況が続くとさらに増えていきます。大きな社会問題だと思います。ヤスベェさん、このような「身寄りのない高齢者」は、何をしないといけないと思われますか?
 
◆そうですね。不安なことをすべて自分で解決しないといけませんよね。
 
◇その通りです。自分の面倒を見てくれる人がいないわけですから、自分が元気なうちに「体が弱ったらどうする」「認知症になったらどうする」「亡くなった後はどうする」ということを決めて、それを信頼できる人や事業者に託す必要がありますね。今後はこのような世の中になっていくと思います。
 
◆なるほど、家族や親族がいなくなるとそうなりますよね。
 
◇昨年6月に大きな動きがありました。それは政府が「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を作成したことです。
 
◆「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」ですか。
 
◇はい。身寄りのない高齢者らの日常生活、身元保証や死後事務手続きなどを支援する事業者が守るべき指針、方向性が示されました。まさに今から必要とされることですね。これまで法的規制がなく放置されていたので、いろいろと問題点もありましたが、今後は良い方向に進むと思います。また、この規定が出来たことにより高齢者サポートが「業」として認められたことにもなります。まだ法令としての規制はできていませんが、近いうちに必ず法律としての規制ができると思います。また、業界団体設立の動きもあります。
 
◆「高齢者等終身サポート事業者」は、身寄りのない高齢者にとって本当に必要な存在ですから、しっかりとした信念を持ってやってほしいと思います。
 
◇その通りです。私たちもこの事業者の一員ですが、事業者の質が向上し信頼が高まれば、身寄りのない高齢者が安心して暮らせる社会の実現に貢献できると考えています。
 
◆よろしくお願いしたいと思います。
 
◇はい。次に私の専門分野でもある「防犯」について触れておきます。これも法律の改正でいわゆる「囮捜査」がある程度容認されたことからSNS型投資詐欺などは激減しています。
 
◆一時期、問題になりましたSNS型投資詐欺は減っているんですね。
 
◇はい。しかし犯罪組織はより巧妙化しており海外拠点の世界規模での犯行は増加しています。また、空き巣や強盗と言った凶悪な犯罪も大きく増加しており、山口県内でも発生していますから決して他人事ではありません。現在、私は会員の皆さんの自宅を訪問して防犯診断の上、防犯シールの貼付などを行っていますが、近々、警察に対して防犯上問題のある家屋の通報などを行いたいと思っています。
 
◆特殊詐欺被害も増えていますが、凶悪犯罪が特に恐ろしいですね。とくさん、時間が来てしまいました。最後に一言お願いします。
 
◇はい。今後は身寄りのない高齢者が増えていきますので、行政に「終活」を積極的に取り入れていただき、高齢者対策を強化してもらいたいと思います。すでにその動きも出ていますが、もっともっと広げていただきたいと思います。そして、官民が一体となり、高齢期に身寄りがなくても、尊厳のある自分らしい人生を送っていくことが出来る社会をつくっていくことが何よりも大切だと考えています。
 
◆その通りだと思います。とくさん、大切なお話ありがとうございました。そして3年間、お世話になりました。
 
◇ありがとうございました。お世話になりました。

終活の未来①
2025/03/22放送
出演者
NPO法人 山口県終活支援協議会 理事長 徳沢靖さん

◆残念ですが、この番組もあと2回となりました。ラストの2回はこの番組の準レギュラー、NPO法人 山口県終活支援協議会理事長 徳沢靖さんにご出演いただきます。とくさん、おはようございます。
 
◇おはようございます。
 
◆とくさん、3年間お世話になりました。ありがとうございました。
 
◇こちらこそありがとうございました。
 
◆とくさんには「終活」について色々と教えていただきましたが、今日はどのようなお話しをしていただけますか?
 
◇最後ですので、今週、来週と2週に渡って「終活の未来」について、お話ししたいと思います。
 
◆「終活の未来」ですね。よろしくお願いします。
 
◇私がこの番組に参加させていただいてまもなく丸三年になりますが、この3年の間に終活を取り巻く状況は大きく変わってきました。
 
◆確かに。私もこの3年間で「終活」という言葉を耳にすることが確実に増えてきました。
 
◇そうですね。そもそも「終活」の概念は抽象的なものが多く、結局、何をしなければいけないのか分からないと言ったことがよく聞かれました。ですが最近では「終活」そのものが一般化しており、参考書的な書籍やインターネットでの動画等、色々なメディアで紹介され具体的な勉強も個人レベルで十分進められるようになってきました。しかしながらご存知の通りネットでの情報は玉石混交、かなり怪しい情報も含まれています。そのような状況ではせっかく盛り上がってきた「終活」が信用できないということにもなりかねません。そこで今回は「終活」の将来を希望も含めてお話ししようと思います。
 
◆お願いします。
 
◇「終活」という言葉自体は2009年に「週刊朝日」で連載された「現代終活事情 変わりゆく葬儀のかたち」で初めて用いられた言葉で、2011年に私の所属する一般社団法人終活カウンセラー協会の設立により一般への普及が進み出しました。しかしながら現在に至るまで、あくまでも一般、民間の組織であり、行政からの援助等はありませんでした。理由としては先ほど申しました通り、その活動内容が抽象的であり時には宗教的な要素も入ってきたことからだと思います。しかし「終活」に具体性が出てきたことから、先進的な行政機関では「終活」を行政サービスの一部として取り入れる動きが出ています。
 
◆ほう、どのような動きでしょうか?
 
◇はい。先進的な神奈川県横須賀市では、終活支援センターを設立し、エンディングプラン・サポート事業として独自のサービスを開始しています。その内容は基本的に葬儀から埋葬までのサポートで、基準を満たせば行政からの金銭的な援助が受けられるというものです。
 
◆自治体からの援助が受けられるんですか?
 
◇はい。これだけでも全国的には最先端と言えるのですが、今や終活の範囲は福祉や防犯、相続、死後の事務やデジタル、ペットといった問題まで含まれるようになってきました。
 
◆確かに、とくさんもよく言っていますが、「終活」の範囲がどんどん広がっているんすよね。
 
◇そうです。これらの問題まで行政が関与することは将来的に絶対に必要なことだと思いますし、特に福祉関係では現時点で行政が行っている自立支援等の事業の範囲を拡大していく必要性はあると思います。既に現時点で福祉に関しては数々の問題点が噴出しており、福祉現場の方々のご苦労は並大抵なことではありません。
 
◆高齢者の一人暮らしの数は増加の一途ですし、その方々の社会的な孤立も大きな問題ですよね。
 
◇必要なサポートが受けられず不幸な老後を迎えられている方々も多くいます。いわゆる高齢化社会問題というもので、今後、さらなる超高齢社会を迎えるにあたり、極めて重要な問題ではないかと思います。
 
◆現在でも65歳以上の高齢者が全人口の29%を占めている超高齢社会ですが、その割合はさらに高まっていく状況にありますからね。
 
◇そうです。では、まず何が大切かということですが、それは何よりも「終活」に関する関心を高めることです。「終活」に関する啓発活動ですが、「終活」に関して何もしていない方の理由は「まだ若いから」が最多です。今まで何度も言ってきましたが、終活の開始は若いほど有利になりますし、ご両親のサポートにも通じることから若い方もぜひ「終活」に参加してもらいたいものです。
 
◆そうですね。いつどうなるかは誰にも分かりませんからね。早めの準備が必要ですね。
 
◇また「終活」という言葉は知っているけど、私には関係ないという意識を変える運動が、終活の未来にとって大切なことだと思います。そのためにはキャンペーンや展示会、また他のイベントとのタイアップを積極的に行い、「終活」の認知度を上げていくことです。また行政への働きかけも大切なことだと思います。私たちNPO法人山口県終活支援協議会も啓発活動を積極的に行っていきますので、皆様もぜひ、ご参加をお願いします。
 
◆私からもよろしくお願いします。
 
◇ここまで「終活の未来」の触り部分のお話をしてきましたが、次回は「終活の未来」の核心についてお話ししたいと思います。
 
◆分かりました。来週もよろしくお願いします。とくさん、今日はありがとうございました。
 
◇ありがとうございました。

認知症を正しく知ろう②
2025/03/15放送
出演者
山口県長寿社会課 地域包括ケア推進班 鯨田愛奈さん

◆先週と今週は「認知症を正しく知ろう」というテーマでお送りしています。スタジオには先週に引き続き、山口県長寿社会課 地域包括ケア推進班 鯨田愛奈さんにお越しいただきました。鯨田さん、おはようございます。
 
◇おはようございます。
 
◆先週は、
・認知症は誰にでも発症する可能性がある病気である
・運動や栄養改善など日常生活における取組が認知症の予防につながる
・早期発見が大事で、新しい治療薬が使える可能性がある
・若くても認知症になりうるので、気になることがあれば早めに相談することが大切
ということを学びました。今週は「認知症」に対する早期発見・早期対応と理解促進に向けての取組についてお話しいただきます。それでは鯨田さん、よろしくお願いします。
 
◇分かりました。認知症の早期発見・早期診断・相談対応の取組として、県と県医師会が連携して「オレンジドクター制度」を運営しています。
 
◆「オレンジドクター制度」ですか。どのようなものですか?
 
◇「オレンジドクター制度」とは、もの忘れや認知症の相談支援ができる医師をオレンジドクターとして登録・公表し、ご本人やご家族がオレンジドクターに気軽に相談することで、早い段階から適切な医療や支援につなげられるようにするものです。
 
◆身近なところで相談ができるのは心強いですね。「オレンジドクター」に相談したい場合は、どうしたらよいのですか。
 
◇オレンジドクターがいる医療機関には、「オレンジドクター」のロゴが入った専用のプレートとポスターが掲示されています。また、県長寿社会課のホームページで、お近くのオレンジドクターを調べることもできます。気軽に相談ができ、他の医療機関と連携したり、専門医をご紹介するなど、必要な支援につなげて下さいます。気になることがありましたら、早めに、ご相談ください。
 
◆オレンジドクターや地域包括支援センターなど身近な窓口に、早めに相談することが大切ですね。
 
◇そうですね。次に「認知症の理解促進と認知症の人や家族が希望をもって暮らせる地域づくり」の取組をご紹介します。
令和6年1月1日に「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が施行されました。この法律は、認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らせるよう、認知症の人を含めた国民一人ひとりが相互に尊重しつつ支え合いながら共生する社会の実現を目指しています。
特に、国民一人ひとりが認知症を自分ごととして捉え、「新しい認知症観」を理解することが重要とされています。「新しい認知症観」とは、認知症になったら何もできなくなるのではなく、認知症になってからもできること・やりたいことがあり、住み慣れた地域で仲間等とつながりながら希望を持って自分らしく暮らし続けることができるという考え方です。
県では、認知症月間である9月を中心に、「認知症を知ろうキャンペーン」として、市町や家族会、関係機関とともに、県内各地で講演会や相談会などの普及啓発を行っています。
 
◆高齢者の5人に1人は認知症になる時代ですからね。本当に自分ごととして考えることが大切だと思います。
 
◇そうですね。また、認知症に関する社会の理解を深めて本人や家族の視点を重視した地域づくりを推進するため、山口県では初めて、令和5年8月に、県内在住の認知症の方5名を認知症本人大使「やまぐち希望大使」として委嘱しました。
 
◆「やまぐち希望大使」は、認知症の方ご本人がなられるのですね。
 
◇はい。国では「普及啓発・本人発信支援」が認知症施策の柱の一つとされ、認知症の人本人からの発信機会の拡大を目的に、令和元年度に5名の方を、昨年度新たに2名の方を追加して「希望大使」として任命し、普及啓発活動に取り組んでいます。また都道府県ごとの「地域版希望大使」の設置も目指しており、全国で設置が進んでいます。
 
◆なるほど。それで山口県でも始まったということですね。やまぐち希望大使の皆さんは自ら「認知症」を認めておられるので、大変勇気のある方々だと思いますが、どのような活動をされているんでしょうか?
 
◇講演会や研修会の場でご自身の体験をお話いただいたり、認知症カフェに参加し交流を深める等の普及啓発活動にご協力いただいています。希望大使の皆さんが、自分らしく、いきいきと前向きに暮らしている姿を発信することは、認知症に対する見方を変えるきっかけとなり、多くの人々に勇気と希望を与え、認知症と認知症の人についての正しい理解が広がっていくことを期待しています。
また「やまぐち希望大使」へのインタビューを中心に、やまぐち希望大使の活動や暮らしの様子、「新しい認知症観」や関係機関の取組をまとめた動画を作成し、昨年末に新しい動画をYouTubeで公開しました。ぜひご覧ください。
 
◆「やまぐち希望大使」本人の体験談は聴く方の心に響くでしょうね。希望大使の皆さんのご活躍により、認知症と認知症の人についての正しい理解が広がっていくといいですね。
最後に、山口県長寿社会課としてリスナーの皆さんに、強調して言いたいことがあればお願いします。
 
◇県では、「認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持ってできる限り地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会」を実現するため、認知症の人や家族の視点に立った支援の充実や環境・体制づくりに取り組んでいますのでよろしくお願いします。
 
◆認知症の人が暮らしやすい、やさしい社会は、誰にとっても優しい社会と言えそうですね。先週・今週と「認知症を正しく知ろう」をテーマに学んできましたが、皆さん、いかがだったでしょうか?
実際に自分の親や親族、自分自身も「認知症」になる可能性が大いにある訳ですから、我々県民も正しい知識を持ち、予防や早期発見に努めながら、認知症の人やその家族の声に耳を傾け、誰もが暮らしやすい地域を一緒に考えていくという意識を持つことが大切だと感じました。鯨田さん、2週に渡り、大切なお話ありがとうございました。
 
◇ありがとうございました。

認知症を正しく知ろう①
2025/03/08放送
出演者
山口県長寿社会課 地域包括ケア推進班 鯨田愛奈さん

◆今週と来週は2週に渡って、「認知症を正しく知ろう」をテーマに誰もが関心のある身近な病気「認知症」について学んでいきたいと思います。今日は山口県長寿社会課 地域包括ケア推進班 鯨田愛奈さんにお話をお伺いします。鯨田さん、おはようございます。よろしくお願いします。
 
◇おはようございます。よろしくお願いします。
 
◆早速ですが、「認知症」は、どのような病気なのか、改めて教えてください。
 
◇はい。認知症は、何らかの原因により脳の働きが低下して日常生活が自立できなくなる状態で、年齢とともに増加するものの、誰にでも発症する可能性があります。認知症になると、新しい出来事を記憶する力が弱くなり探し物が増えたり、時間の感覚が薄れることで予定に合わせて準備ができなくなったりします。意欲や関心がなくなることもあります。
 
◆「認知症」は誰にでも発症する可能性がある、身近な病気なんですね。ちょっとした疑問ですが、認知症って、予防することができるんですか?
 
◇はい。認知症の予防とは、認知症の発症及び進行のリスクを少なくすることです。運動や栄養改善、生活習慣病予防などの日常生活における取組が、認知機能低下の予防につながる可能性が高いと言われています。また認知症は、徐々に進行する病気ですが、早期に発見し適切に対応することで、その後の生活を自分らしく組み立てることや生活習慣の改善、治療薬によって進行を緩やかにできる可能性があります。
 
◆なるほど。運動や栄養改善など日常生活における取組が認知症の予防につながるんですね。お話の中に出てきた治療薬といえば、昨年度からアルツハイマー病の新たな治療薬が日本でも使えるようになり、話題になりましたね。
 
◇そうですね。日本でもレカネマブやドナネマブが使えるようになりました。これらの薬は、認知症の原因の1つであるアルツハイマー病に対する薬で、病気の進行を遅らせ、認知機能の低下を緩やかにする効果が見込まれています。治療の対象となるのは、認知症を発症する前段階の「軽度認知障害」の方、あるいは軽度の認知症の方です。山口県内でも少しずつですが、薬の投与ができる医療機関が増えてきました。この治療に関するご相談は、かかりつけの医師にお尋ねください。
 
◆なるほど。認知症の初期の段階で見つかると、治療薬が使える可能性があるんですね。県内には「認知症」の方はどれくらいいらっしゃるんですか?
 
◇はい。認知症の方の実数は出ていませんが、令和7年に、山口県で約9万人、65歳以上の5人に1人が認知症になると推計されています。
 
◆え~高齢者の5人に1人ですか。それだけ誰でも認知症になりうる可能性があるということなんですね。
 
◇また、認知症は、高齢者だけでなく、65歳未満で発症した場合、「若年性認知症」といわれ、本県には、約400人の若年性認知症の方がいると推計されています。
 
◆「若年性認知症」ですか。若くても「認知症」になるということですね。
 
◇はい。若年性認知症は、仕事でミスが重なったり、家事が億劫になったりしても、認知症が原因と思わず、受診が遅れることも多くあります。また、働き世代で発症すると、経済的な問題に繋がったり、子育てや親世代の介護と重なる等、多くの課題に直面することがあります。
 
◆確かに、「何かおかしい」と感じても、ストレスや忙しさのせいと考えてしまいそうですね。また、働き世代で発症すると影響が大きそうですね。
 
◇はい。だからこそ、「若年性認知症」について、地域の方々、職場や企業の方など多くの方に知っていただきたいのです。県では、県立こころの医療センター内の専用窓口に若年性認知症支援コーディネーターを配置し、ご本人やご家族、企業や地域の医療福祉関係者からの相談もお受けしています。
 
◆気になることがあれば、早めに相談することが大切ですね。
 
◇そうですね。また、高齢者等の保健医療・介護等に関する身近な相談窓口として、地域包括支援センターでも相談することができます。
 
◆この番組でも何度か取り上げました「地域包括支援センター」ですね。高齢者に関することであれば何でもご相談いただきたいと思います。「地域包括支援センター」がどこにあるか知りたい時はどうしたらいいですか?
 
◇お住まいの地域の地域包括支援センターの情報をお知りになりたい場合は、各市町の高齢福祉担当課へお尋ねください。
 
◆鯨田さん、残念ながら時間が来てしまいました。続きは来週お願いします。今日は「認知症は誰にでも発症する可能性がある病気であるということ、運動や栄養改善など日常生活における取組が認知症の予防につながること、早期発見が大事で、新しい治療薬が使える可能性があるということ、そして若くても認知症になりうるので、気になることがあれば早めに相談することが大切。」ということを学びました。大変大事なことですね。鯨田さん、来週もよろしくお願いします。
 
◇よろしくお願いします。

平均寿命と健康寿命の差を縮めるには
2025/03/01放送
出演者
海風診療所院長 沼田光生さん

◆先週に引き続き今週も予防医療について学んでいきたいと思います。スタジオには周南市にあります海風診療所 院長の沼田光生さんにお越しいただきました。沼田先生、おはようございます。今週もよろしくお願いします。
 
◇おはようございます。よろしくお願いします。
 
◆沼田先生、先週は「なぜ平均寿命と健康寿命に大きな差があるのか?」というテーマでお話しいただきましたが、今日はどのようなお話しをしていただけますか?
 
◇今日は、平均寿命と健康寿命の差を縮める、つまり、ピンピンコロリを達成するにはどうしたらいいか、医療の仕組みはどのように変化をしたら良いかについてお話ししたいと思います。
 
◆今日のテーマは「平均寿命と健康寿命の差を縮めるには」ですね。これも興味深いテーマですね。よろしくお願いします。
 
◇分かりました。先週も申しましたが、そのためには病気の治療オンリーになっているドクターのうち2~3割のドクターを病気にさせない=予防医療推進の仕事にシフトさせることが必要ではないかと考えています。また、病気の治療は国家資格を持つドクターにしか許されていない行為ですが、健康の維持・増進については、資格のない一般の人でも生業(なりわい)にすることができますので、そのような人材育成も必要なのではと考えています。
 
◆予防医療推進のドクターを増やすことと健康の維持・増進の知識を持つ人を育成することが大切ということですね。
 
◇そうです。当方では、健康マイスター協会という一般社団法人を作り、予防医療を推進するドクターの育成と健康マイスターと言う健康増進の知識を持った人材育成をしております。
 
◆大切な取り組みだと思います。
 
◇日本に蔓延している多くの病気(高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病)が慢性疾患で、急に発症するわけではなく、白(健康な状態)から長いグレーゾーン(未病の状態)を経て、黒(病的な状態)になりますが、グレーゾーンにいる人について、黒の側から見るのと、白の側から見るのとでは見え方が違います。黒の側から見ると「黒ではないからまだ大丈夫」ということになってしまいますが、白の側から見ると、グレーの人が黒に向かっている場合、「今のままでは黒になってしまうのでまずい」と言うことになります。
 
◆なるほど。しかし、できるだけ軽いうちに健康な状態に戻りたいですね。それから今、グレーゾーンのことを未病の状態と言われましたが、未来の未(み)に病(やまい)と書く「未病(みびょう)」について説明してください。
 
◇はい。「未病」とは「発病には至らないものの、健康な状態から離れつつある状態」のことを言います。それで「未来の病気」と書きます。そして、日本人の平均寿命と健康寿命の差を大きくしてしまっているのは、長い闘病期間を経て亡くなってしまうことになる死亡原因になっている病気や、要介護状態になってしまう病気ですが、それらの多くが予防できる病態なのです。
 
◆予防できるのですか。詳しく教えてください。
 
◇死亡原因の第1位であるガンという病気は、炎症体質や細胞の中のエネルギー工場であるミトコンドリアの活性が落ちると正常細胞が正常な機能を維持できなくなってガン化すると言われております。また、死亡原因の第2位である心疾患や第3位である脳血管疾患といった血管の病気は、動脈硬化が徐々に進んでいって、心臓の血管が詰まれば心筋梗塞になりますし、脳の血管が詰まれば脳梗塞になり、脳の血管が破れれば脳出血になります。また、要介護となる原因の第4位である骨折・転倒や第5位である関節疾患は、ロコモやフレイルという状態がもとに起こってきます。そして、そのロコモやフレイルは、筋肉量低下が徐々に進んでいって発症します。
 
◆それぞれの病気には原因というか元があるということですね。
 
◇はい。それぞれの病気の元になっている「慢性炎症」「ミトコンドリア活性低下」「動脈硬化」「筋肉量低下」を予防できれば、死亡原因の上位にある病気や、要介護となる原因の上位にある病気は予防できることになるのですが、「慢性炎症」も「ミトコンドリア活性の低下」も「動脈硬化」も「筋肉量低下」も病態の初期に自覚症状がないのが見逃されてしまう大きな要因になっています。
 
◆ではどうすればいいのですか?
 
◇なので、自覚症状に頼るのではなく、それぞれの病態を客観的に評価することが病気の予防には重要になります。そして、その客観的な評価をする際に医療機関に行かないといけなかったり、特殊な器械が必要になるようなら、予防医療の推進も時間がかかることになりますが、実は簡単な方法でそれぞれの病態を客観的に評価することができるのです。
 
◆ほう!どんな方法ですか?
 
◇「炎症体質」や「ミトコンドリア活性の低下」は健康診断の血液検査の結果や体温測定(正確な体温は実測式の体温計で測ってください)で評価することができます。また、「動脈硬化」の状態も健康診断の血圧測定の結果で評価することができます。さらに、「筋肉量低下」の状態も片足立ち上がりテストや指輪っかテスト、家庭用にも販売されている体組成計を使った測定や握力測定で評価することができます。
 
◆これらの検査からこの先、どのような病気になるか、どのような状態になるかが予想できるということですか?
 
◇そうです。日本で行われている健康診断は、良い仕組みだと思いますが、病気診断にのみ使われているのがとても残念です。同じ結果を、病気に向かっている徴候が出ていないかどうかという見方をすることで、予防医療推進に活かすことができます。当方ではこれを未病診断と呼んでいます。
 
◆未病診断ですか。先ほど説明のあった「健康な状態から離れつつある状態」・グレーゾーンの「未病」ですね。
 
◇はい。この未病診断を広めていき、未病の状態にあるとわかったら、それを改善する生活習慣に気を付ける、つまり、考え方を変える、運動習慣を改善する、食習慣を改善することで、死亡原因となってしまう病気や、要介護状態に至る病気の予防ができると考えます。
 
◆なるほど。非常に大切なことだと思います。2週にわたり予防医療について学んできましたが、よく分かりました。沼田先生、大切なお話、ありがとうございました。
 
◇ありがとうございました。