ヤスベェの人生100歳満点!

転ばぬ先の知恵

2024年07月 月間アーカイブ
地域包括支援センターについて
2024/07/27放送
出演者
徳山医師会地域包括支援センター センター長 内藤誠さん

◆先週は「地域包括ケアシステム」について学びました。そしてその中心となる場所が「地域包括支援センター」ということで、今日はこの「地域包括支援センター」について学びたいと思います。スタジオには周南市にあります「徳山医師会地域包括支援センター」センター長 内藤誠さんにお越しいただきました。内藤さん、おはようございます。
 
◇おはようございます。
 
◆さっそくですが内藤さん、「地域包括支援センター」とはどういう場所なのか?教えてください。
 
◇はい。「地域包括支援センター」は高齢者に関わる介護や健康維持、認知症ケア、福祉制度など、高齢者の皆さんが地域で元気に暮らして頂くための総合的な支援機関です。高齢者とは65歳以上の方を指しますが、65歳未満の方でも介護保険サービスを利用されている方などは相談の対象となります。年齢を重ねると、心身の衰えや、持病の悪化が目立つようになり、日常生活の支障や将来への不安が大きくなりがちです。そんな時、「転ばぬ先の杖」としてご活用いただけるのが「地域包括支援センター」です。
 
◆分かりました。「地域包括支援センター」は高齢者の総合相談窓口ということですが、家族や関係者の方が相談してもよいのですか?
 
◇はい大丈夫です。地域包括支援センターは「どこに相談したらわからない」ことでも、まずお話をしっかり伺い、困り事を把握し、解決に必要な制度やサービスに橋渡しする役割を担います。高齢者ご本人やご家族だけでなく、地域住民、ケアマネジャーや介護サービス事業者、医療機関、行政機関など、様々な方からの相談を受け付けています。
 
◆心強い施設ですね。
 
◇センターには保健師・主任介護支援専門員・社会福祉士といった保健・医療・福祉に関する専門知識を持つ職員が配置されています。個々の相談には、各職種の知識を活かしながら協力して対応しています。センターは介護保険法に基づく機関であり、日本全国どの地域にもセンターは設置されています。ご自分の地域を管轄する包括支援センターは市区町村役場や市町のホームページで確認できますので、県外に高齢のご家族がお住まいの場合なども、一度ご確認してみてはいかがでしょうか。
 
◆「地域包括支援センター」は、全国すべての市区町村にあるんですね。具体的にはどのような相談に対応していただけるのでしょうか?
 
◇地域包括支援センターは具体的に4つの業務を行っています。まずは先ほど申し上げた「総合相談」。高齢者の健康や日常生活に関わる様々な相談をしっかり受け止め、解決の手立てを一緒に考え、必要な支援につなげます。続いて「介護予防ケアマネジメント」。日本は世界に類を見ない長寿国ですが、出来るだけ要介護状態に至らず、最後まで自分らしく人生を全うできるかという課題があります。「フレイル」という言葉をご存じでしょうか?「フレイル」とは「虚弱」を意味し、健康と要介護状態の中間を指します。身辺動作は自立していても、家事仕事や外出、社会交流などに支障があるといったイメージです。加齢による衰えは仕方ない、とあきらめてしまいがちですが、フレイルの時点で生活習慣を見直し、健康への意識を高めることで要介護状態になることを防ぐことができます。私たちはフレイル状態にある高齢者に対し、リハビリ専門職などと協力して運動、お口のケア、栄養の摂り方などのアドバイスをしています。
 
◆「フレイル」は最近よく聞く言葉ですね。「フレイル」状態で気づき、健康な状態に戻ることが出来ると本当に嬉しいことですね。
 
◇そうですね。3つ目は「権利擁護業務」です。一般的に高齢期になると、健康上の問題だけでなく、物事への対処能力・判断力の低下、孤立感などから様々な不安を抱えがちになります。このような不安や孤立を背景に、消費者被害、生活環境の悪化、不適切な介護や虐待被害といった権利侵害を受けやすくなります。包括支援センターは、このような高齢者に対する権利侵害を把握した際は、行政機関や法律の専門家などと協力し、ご本人の生活の安定と権利の擁護に向けて対応します。
 
◆「権利擁護」も大切なことですね。
 
◇はい。最後は「包括的・継続的ケアマネジメント」。これは「地域の様々な人、機関とネットワークをつくる活動」です。高齢者が住みやすい地域をつくることは、限られた人や機関、サービスだけでは達成できません。地域の様々な分野で活躍されている専門職、サービス事業所、地域住民、場所を知り、お互いが協力し合える関係を創ることが重要です。そのために私たちは、医療・介護専門職や地域住民の集まる会合に積極的に参加し、顔の見える関係づくりを行います。
 
◆いろいろなことを相談出来ることが良く分かりました。内藤さん、「徳山医師会地域包括支援センター」センター長として感じていらっしゃることがありましたら、お願いします。
 
◇はい。寄せられる相談から感じる最近の傾向ですが、お一人暮らしや高齢者世帯が当たり前の時代になり、一昔前なら家族間や地域のつながりで何とかなったであろうことが相談として上がってきます。病気の治療や難しい症状への対応、要介護状態の方へのケアは専門家に任せる必要があります。一方で、必ずしも専門家が対応しなくても解決できそうな困り事、例えばちょっとした家事の手助けや生活の見守り、声掛け、地域活動へのお誘いなどは、地域の方々にも協力していただきながら、高齢者を支えていくことが重要だと思います。
 
◆可能なことは地域で支え合うということですね。大切なことですね。少子高齢化や財政状況などから、どうしても手の届かないところもあると思います。お互いが助け合う「互助」の精神ですね。「明日は我が身」でもありますので、皆さん協力し合いましょう!内藤さん、今日はありがとうございました。
 
◇地域包括支援センターをご活用下さい。ありがとうございました。

地域包括ケアシステムについて
2024/07/20放送
出演者
山口県長寿社会課 地域包括ケア推進班 班長 木村和人さん

◆番組のタイトル「ヤスベェの人生100歳満点」でもありますように、人の寿命は伸び続けており、「人生100年時代」と呼ばれるようになってきました。今後さらに高齢化は進むと見られており、全国的に導入が進んでいますのが「地域包括ケアシステム」と言われるものです。今日はこの「地域包括ケアシステム」について皆さんと一緒に学んでいきたいと思います。スタジオには山口県長寿社会課 地域包括ケア推進班 班長の木村和人さんにお越しいただきました。木村さん、おはようございます。
 
◇おはようございます。
 
◆以前にも山口県長寿社会課さんにはご出演いただいたことはあるのですが、改めてどのような部署なのか教えてください。
 
◇はい。長寿社会課は、山口県の高齢者施策の総合調整をはじめ、高齢者の福祉や介護保険に関する事務などを所管している部署になりまして、市町や関係団体等と一体となって、本県の高齢者保健福祉の推進に取り組んでいます。
 
◆県内の高齢者のことを総合的に考える部署と言うことでよろしいでしょうか?
 
◇はい、大丈夫です。
 
◆それでは「地域包括ケアシステム」について、詳しく教えてください。
 
◇はい分かりました。まず山口県の高齢者の状況です。総人口に占める65歳以上の高齢者の割合を高齢化率と言いますが、一般に、高齢化率が21%を超えると超高齢社会と言われます。令和5年10月1日現在で、山口県の高齢化率は35.3%と、全国第3位となっており、全国に先行して高齢化が進行しています。
 
◆以前教えていただいた時、驚きましたが、なんと山口県の高齢化率は全国3位なんですね。
 
◇そうなんです。そして来年、令和7年(2025年)には、団塊の世代が全員75歳以上となり、また令和22年にはいわゆる団塊ジュニア世代が65歳以上になることから、今後、県全体の年齢構成の高齢化が進むことが予想されています。
 
◆そうなると高齢化率がさらに高くなっていきますね。
 
◇はい。本県の65歳以上の高齢者人口は、実は令和2年の約46万5千人をピークに緩やかに減少に転じています。一方、県の総人口の将来推計をみてみると、年少人口や生産年齢人口の減少はさらに大きいことから、高齢化が一層進むことが予想されています。高齢化が進むと高齢単身世帯や認知症の人の増加が見込まれ、医療や介護サービスを受ける人が多くなることが見込まれます。
 
◆特に社会問題にもなってきていますが、高齢者の単身世帯は心配ですよね。
 
◇はい。そこで県が市町と連携して取り組んでいるのが、「地域包括ケアシステム」の推進なんです。     「地域包括ケアシステム」とは、高齢者の方が可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい自立した日常生活を続けることが出来るよう、医療、介護、予防、住まいそして生活支援の各サービスが一体的・総合的に提供される体制です。
 
◆誰しも生涯にわたり、住み慣れた家庭や地域で、安心していきいきと暮らしたいものですよね。「地域包括ケアシステム」の内容を具体的に教えてください。
 
◇具体的には、皆様が暮らしている市や町が地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じた地域包括ケアシステムを構築していくことになります。
 
◆具体的な内容は各市町の特性に応じて違うんですね。
 
◇はい。そして、この取組の拠点となるのが、各市町に設置されている「地域包括支援センター」で、高齢者の方が地域で安心して暮らしていけるよう、様々な相談に対応するなど総合的な支援を行っています。
 
◆「地域包括ケアシステム」の中心となる場所が、「地域包括支援センター」なんですね。高齢者やそのご家族の方で心配事がある場合、何でも相談していいんですか?
 
◇はい大丈夫です。また、地域包括支援センター等が開催する「地域ケア会議」という会議もあります。
 
◆「地域ケア会議」とはどういうものですか?
 
◇この会議は、当事者だけでは解決できない困難な課題に対して、医療や介護などの専門職から地域住民まで幅広い人が集まり、困っている高齢者の支援方法を検討するとともに、地域に共通した課題を発見し、その解決をみんなで考える会議です。
 
◆1つの「地域包括支援センター」だけでは解決が難しい課題などを各専門家や色々な分野で活動を行っている地域住民、そして各「地域包括支援センター」の方々などが集まって解決策を考える会議が「地域ケア会議」なんですね。大変重要な会議ですね。
 
◇はい。このようなことから「地域包括ケアシステム」は、私たちの手でつくる「地域づくり」とも言えると思います。
 
◆そうですね。地域に根差し、地域を挙げて高齢者の意思を尊重しながら支えるシステムという感じがしますね。
 
◇令和6年6月1日時点で、県内すべての市町に地域包括支援センターがあり、その数は62か所です。県も、地域包括支援センターの体制の強化や総合相談機能の強化を支援していますので、介護や生活のことで悩み事などがあれば、まずは、お住まいの近くにある地域包括支援センターに相談していただきたいと思います。
 
◆今日は「地域包括ケアシステム」のことがよく分かりました。木村さん、ありがとうございました。
 
◇ありがとうございました。
 
◆来週は「地域包括ケアシステム」の中核的な役割を担う「地域包括支援センター」について、学んでいこうと思います。

相続土地国庫帰属制度
2024/07/13放送
出演者
弁護士 有近眞知子さん

◆先週は、所有者不明の土地が九州の面積よりも広く、さらに拡大しているという現状と「相続登記の義務化」について勉強しました。今日もスタジオに弁護士の有近眞知子さんにお越しいただきました。有近さん、おはようございます。
 
◇おはようございます。
 
◆今日のテーマは、「相続土地国庫帰属制度」ですね。
 
◇はい。昨年の4月に新しくできた「相続土地国庫帰属制度」について一緒に勉強していきましょう。
 
◆相続した土地がせっかくあっても「遠くに住んじょって利用する予定がないんよ」とか、「周りの土地に迷惑がかからんように草刈りしよるけど、はーこれ以上は管理していかれん」とか、よく聞きますよね。
 
◇そうなんです。「先祖代々受け継いだ土地じゃけど、息子には迷惑かけられん。自分の代で手放したい」とか、「かといって買い手もないような土地なんよ」とかですね。こういう売れない、管理の難しい土地が放置されて「所有者不明土地」になるケースが年々増えてます。公共事業が円滑に進まなかったり、民間取引が阻害されたり、土地の利活用ができないだけでなく、きちんと管理できないことで隣人トラブルになるなどの社会問題が深刻化しています。
 
◆特に古い家があったりするとさらに大変ですよね。そこで、始まったのが「相続土地国庫帰属制度」ですね?
 
◇おっしゃるとおりです。相続人が、相続したけど利用しないっていう土地を手放せるようになりました。
 
◆具体的に制度を使うにはどうすればよいのですか?
 
◇まず、法務局に相談する、次に、申請書類を作成・提出して審査を通過する、最後に負担金を納付する、という3つのステップを経ることで、土地を国に引き渡すことができます。
 
◆なるほど。国にお金を出して土地を引き取ってもらう制度なんですね。この制度は始まって1年と少しですが、制度が始まる前、たとえば、5年前とか20年前とかに相続した土地でも申請できるんですか?
 
◇はい、制度が始まる前に相続された土地であっても、申請することができます。
 
◆申請先は法務局でしたよね?全国どこの法務局でもできるんですか?
 
◇土地が所在する法務局の本局で手続きをすることになります。山口県に所在する土地でしたら、山口市にある山口地方法務局になります。
 
◆申請の要件や、審査は、厳しいものなんでしょうか?
 
◇そうですね。なんでもかんでも、国に帰属させてしまうと、国も管理の負担が過大になってしまいます。なので、そもそも申請できない土地や、申請はできても承認されない土地というのがあります。 
 
◆申請できない土地とはどのような土地ですか?
 
◇たとえば、建物が建っている土地、担保権などの権利が設定されている土地、通路や墓地、汚染されている土地、境界が明らかでない土地などは、そもそも申請することができません。崖のある土地や、地下に除去が必要な物がある土地などは、申請しても承認が得られないようになっています。
 
◆なるほど。いろいろと条件があるんですね。申請をしてから結果が出るまでの期間はどのくらいですか。
 
◇標準処理期間は8か月とされていますが、事案によってはその期間を超える場合もあります。
 
◆分かりました。ちなみに制度を利用した際の費用って、いくら位なんですか?
 
◇まず、申請をするときに、1筆の土地当たり1万4000円の審査手数料がかかります。そして、法務局で審査されて承認がされると、10年分の土地管理費相当額の負担金を納付します。その負担金は、1筆ごとに20万円というのが基本です。同じ種目の土地で隣接していれば、2筆以上でも負担金は20万円。これが基本となります。一部の市街地の宅地、農用地区域内の農地、森林などについては、面積に応じて負担金を算定するものもあります。
 
◆なるほど。1筆とはどういう単位ですか?
 
◇不動産の個数を表す単位で、土地の場合は、地番ごとに1筆という数え方をします。
 
◆分かりました。国庫帰属制度は、相続した財産を手放すという意味では、以前お話いただいた相続放棄とも似ているのですが、その違いは何ですか。
 
◇相続放棄の場合、すべての財産を放棄しなければならないのですが、国庫帰属だと、特定の土地だけを手放すことができます。それから相続放棄は3ヶ月の時間制限がありましたが、国庫帰属だとそういう時間制限はありません。一方で、国庫帰属にもデメリットはあって、相続放棄の場合、相続人一人でも手続きができましたが、国庫帰属の場合は、共有者がいたら全員で共同申請しなければいけないので、合意をとる手間が要ります。それと相続放棄には費用がさほどかかりませんが、国庫帰属は、先ほどお話したような相当額の負担金が必要になります。
 
◆なるほど。それぞれに、メリット、デメリットがあるわけですね。
 
◇ですね。残念なことではありますが、これからますます放棄されて荒れ果てる土地やら、持ち主の分からない土地が増えてしまうでしょうからね、そういう土地を増やさないためにも、こういう制度を使っていく必要があるんだと思います。
 
◆所有者不明土地を減らす対策として「相続土地国庫帰属制度」と先週の「相続登記の義務化」ができたということですね。有近さん、お困りの方は是非ご相談いただきたいですね。

◇そうですね。重要な問題ですので、是非専門家にご相談ください。
 
◆有近さん、2週に渡りありがとうございました。
 
◇ありがとうございました。

相続登記の義務化
2024/07/06放送
出演者
弁護士 有近眞知子さん

◆さて以前、リスナーの方から番組宛にこんなご意見をいただきました。「令和6年4月1日より相続登記の申請が義務化されたとのこと。登記をそのままにしている方も多いと思いますので、相続登記についての解説や費用、そして所有権を取得したことを知ったのはいつの事を指すのかなど放送で専門家の方に解説いただくと良いかなと思います」
ということで、今週と来週は、リクエストのあった「相続登記の義務化」の解説とその背景にある「所有者不明土地問題、空き家・空き地」について、勉強していきたいと思います。弁護士の有近眞知子さんにお越しいただきました。有近さん、おはようございます。
 
◇おはようございます。放送を聞かれた方からご意見やリクエストをいただけるなんて、ありがたいですね。さすがヤスベェさんの番組!皆さん毎週楽しみにされてますよね。私もこの間、この番組を聞かれた方から「朝、農作業をしながら、トラクターに乗りながら聴いてます!」と言っていただきましたよ。嬉しいですね。本当にありがとうございます。
 
◆ありがたいことですね。さらに気合を入れて頑張っていきたいと思います。有近さんは防府市の「上田・藤井総合法律事務所」で弁護士としてご活躍中であると同時に、柳井市選出の山口県議会議員でもあり、ご家庭では一男一女のお母さんでもあるんです。1人で3役をこなすスーパーレディーでいらっしゃいます。さて今回は相続登記のお話ですけど、確かにそのままにしている方が多いんでしょうね。
 
◇ちょっと面倒くさいですよね。登記ってね、人に頼まんといけないし。お金もかかりますし。売却処分する予定でもなければなおさら放っておきたいですよね。 
 
◆「相続登記の義務化」って、どのような内容なんですか?
 
◇はい。「相続登記」とは、正確には「相続による所有権の移転の登記」といい、土地や建物の不動産の所有者が亡くなったときに、土地や建物の名義を亡くなった方から遺産を引き継いだ相続人へ変更する手続きのことです。これまでは、相続登記は任意でした。ですが義務化になった後は、相続人は不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記することが法律上の義務になります。遺産分割で不動産を取得した場合は、遺産分割から3年以内に、遺産分割の内容に応じた登記をすることが法律上の義務になります。
 
◆登記しないとどうなるんですか?
 
◇正当な理由がないのに相続登記をしなかったら、10万円以下の過料が科される可能性があります。
 
◆正当な理由があれば、許される場合もあるんですね。どういう場合に許されるんですか?
 
◇個別の事情によって具体的に判断されますが、例えば相続人が極めて多数で、戸籍関係の書類を集めたり、相続人が誰かを調べるのに多くの時間を要する場合や、ゆい言の有効性や遺産の範囲が相続人間で争われて、相続不動産が誰のものになるのか明らかにならない場合や、重病、経済的困窮といった場合です。
 
◆なるほど。相続で取得したことを「知った日」というのは、いつなんでしょうか?親が不動産を所有しているかどうかよく分からないような場合もあると思うのですが。
 
◇「知った日」とは、特定の不動産を相続で取得したことを知った日です。自分がどんな不動産を取得したか、具体的に知るまでは、相続登記の義務はありません。
 
◆相続登記の義務化が制度として始まったのは、今年令和6年4月1日からとのことですが、それより前に相続した不動産はどうなるんですか?
 
◇令和6年4月1日より前に相続した不動産も、相続登記がされていないものも、義務化の対象になりまして、令和9年3月31日までに相続登記をしていただく必要があります。
 
◆へぇ。それは大変ですね。そもそも、どうして義務化がされたのでしょう?
 
◇はい。所有者が亡くなったのに相続登記がされないことによって登記簿を見ても所有者が分からない「所有者不明土地」が全国で増加して、周辺の環境が悪化したり民間取引や公共事業が円滑に進まなかったり、社会問題となっていますよね。こういった問題を解決するために令和3年に法律が改正され、これまで任意だった相続登記が義務化されることになりました。
 
◆全国の「所有者不明土地」面積を合わせると九州の面積より広いと聞いたことがあります。
 
◇そうなんです。このまま所有者不明土地が増加していくと、2040年にはなんと北海道の面積の90%に匹敵するとの予測がされており、約6兆円もの経済損失を招くと懸念されています。
 
◆は~、大変なことですね。
 
◇ですので、「相続登記の義務化」となったわけです。また先ほども少し触れましたが、登記をせずほっておくと相続人がどんどん増えていき、相続人を把握するだけでも大変な状況になっていきますので早めに対応した方が良いと思います。次回は「所有者不明土地問題」に関連して「相続土地国庫帰属制度」についてご紹介しようと思います。
 
◆なるほど。よくわかりました。有近さん、今日はありがとうございました。来週もよろしくお願いします。
 
◇ありがとうございました。