転ばぬ先の知恵
◆今週も先週に引き続き「歯とお口」について、学んでいきたいと思います。今日も周南市のかねおか歯科クリニック医院長、金岡雅浩さんにお話をお伺いします。金岡さん、おはようございます。
◇おはようございます。
◆今日のテーマは何でしょうか?
◇今日は「人生は生も死も口から」と題して、お話ししたいと思います。
◆「人生は生も死も口から」ですか。興味深いテーマですね。よろしくお願いします。
◇はい。中国には「人相学」の中に『歯相学』というものが有ります。それによると「人間は生も死も口から始まり口で終わる」と記されています。人間が生まれた時は「心臓が動いた」とは言いません。『産声をあげた』と言います。亡くなる時は、『息を引き取った』と言います。中国の『歯相学』では、人間は口から生気や運気が入り出ていくと言われています。
◆確かに、生まれる時は「産声をあげる」、亡くなる時は「息を引き取る」と言いますね。それで「人生は生も死も口から」ですか。
◇そうです。2023年世界平均寿命ランキングでは日本は1位で男女平均寿命は84.3歳(男81.5歳、女87.6歳)、そして健康寿命も日本は世界ランキング1位の74.1歳です。この差10年間をいかに過ごすかが大切です。何故なら歯の方が寿命が短いからです。
◆歯の方が寿命が短いのですか?
◇厚労省の調査によると歯の平均寿命は約50年から65年なんです。
◆そうなんですか。
◇はい。健康寿命から寿命までの10年間は特に肺炎に気を付けてください。
◆平均寿命と健康寿命の差の10年は、心身が自分の思い通りにならない期間、つまり介護を必要とする期間と言えますよね。この期間は特に肺炎に気を付けないといけないということですね。
◇そうです。肺炎は高齢者の死因の3番には入ります。人間本来の呼吸法は「鼻呼吸」です。鼻から入った空気は入り口の鼻毛がフィルターになり大きなごみを除去し、鼻腔の中を通過する際に適切な温度と湿度に調整されるので肺の負担を軽減し肺の中でスムーズに循環されるようになっています。そして鼻から入る空気は、口から入る空気よりも感染症に罹るリスクが少ないんです。
◆なるほど。「鼻呼吸」は大切なんですね。
◇逆を言えば口呼吸は空気がダイレクトに肺に直結するので肺炎に感染するリスクが高いんです。また口の中が乾燥していると口腔内の細菌が増え、食事中に食物・飲料を間違って気管や肺に入るウイルス性の「誤嚥性(ごえんせい)肺炎」や、就寝中などに唾液や異物が気管や肺に入って感染する「不顕性(ふけんせい)肺炎」にかかりやすい。しっかりと義歯等で噛み合わせを回復して唾液の分泌を促した方が細菌の数が少なくなります。口腔内の細菌の数と肺炎の罹患率は相関関係になります。
◆「口呼吸」は肺炎に感染するリスクが高いんですね。そして口腔内を清潔に保っておくことが大切ということですね。
ところで、誤嚥性肺炎はよく聞きますが、不顕性肺炎はあまり聞いたことがありません。詳しく教えてください。
◇不顕性肺炎とは就寝中や安静時に無意識のうちに唾液が気道や肺に流れ込む誤嚥の一種で、異物が気道内に入った時に起こる「咳き込み」や「むせ」などの反射が見られないのが特徴です
◆不顕性肺炎も誤嚥の一種なんですね。異物が入っても「咳き込み」や「むせ」などの反射がないのはおそろしいですね。
◇そうなんです。それから就寝時には義歯は外してください。入れ歯=不潔なものとして理解してください。アメリカの研究ですが、就寝前にX線造影剤の粉を塗った入れ歯をはめて就寝したところ朝に胸部X線TVで確認すると肺が真っ白だったそうです。もし細菌だったらと思うと…不潔な義歯を入れていると肺炎へのリスクは高くなるのでご注意ください。歯科衛生士による専門的口腔ケアを受けているグループは、受けていないグループに比べインフルエンザの罹患率は1/10という報告もあります。実際、わがクリニックが訪問診療をして管理している施設でも、最近入所者のインフルエンザの感染は聞きません。
◆そうですか。やはり口腔ケアは大切なんですね。そして入れ歯は、細菌がつきやすいので就寝時には必ず外さないといけないということですね。
◇はい。「誤嚥性肺炎」の予防は食事中の姿勢がポイントです。しっかりと起き上がり背筋を伸ばして食べてください。斜めの角度で寝そべった姿勢で食事をすると誤嚥します。自分の歯で食べれる方は食べ始めが要注意です。義歯の方は安定が大切です。安定が悪いとリズムが悪くなり誤嚥する確率が高くなります。
「不顕性肺炎」の予防は就寝前の手入れがポイントです。義歯はしっかり洗浄して専用のケースに水や洗浄剤を入れて保管してください。
◆シルバー世代は、特に「誤嚥性肺炎」「不顕性肺炎」にならないよう注意しないといけないですね。今日はいろいろと勉強になりましたが、特に「鼻呼吸」の大切さに改めて気づかされました。
◇私は実際の寿命と健康寿命との差が出来るだけ無いこと、つまり「ピンピンコロリ」が理想だと思っています。高齢化社会では避けては通れない「肺炎」に感染する確率を下げるため、「歯とお口」のケアに努めてください。
◆金岡さん、本当に「歯とお口」のケアの大切さがよく分かりました。2週にわたり、貴重なお話、ありがとうございました。
◆さて今週と来週は、「歯とお口」について学んでいきたいと思います。「歯とお口」のケアは、全身の健康のために大変重要と言われていますよね。スタジオには、かねおか歯科クリニック医院長、金岡雅浩さんにお越しいただきました。金岡さん、おはようございます。
◇おはようございます。
◆まずは金岡さんのプロフィールをご紹介しましょう。昭和36年徳山市(現在の周南市)のお生まれ。日本大学大学院で小児歯科学を専攻、ご卒業後、平成3年に地元の徳山駅新幹線口近くにかねおか歯科クリニックを開業されました。20年前からクリニックでの診察の他、リハビリ病院、老人ホーム、グループホームなど訪問診療を続けておられ、その数は30施設にのぼります。元山口県医療審議会委員。若い頃は青年会議所いわゆるJCで活躍され、徳山青年会議所理事長、山口ブロック協議会会長を歴任されました。そして今、またの名を「ダニー・K」というジャズシンガーでもあるんです…というユニークな経歴をお持ちの金岡さんですが、今日はどのようなお話しをしていただけますか?
◇今日は「転ばぬ先の歯の知識」と言うこのコーナーにぴったりのテーマでお話しをさせていただきます。
◆「転ばぬ先の歯の知識」ですね。よろしくお願いします。
◇はい。近年ご高齢の方が病院に救急搬送される原因は「転倒」が最も多く半数以上を占めます。「転倒」により足や腰を骨折し入院するケースも増加しています。ご紹介にもありましたように、私は現在、自分のクリニック以外に老人介護施設等に沢山往診に行っていますが、顔を見なくなったと思ったら実は転倒骨折して入院しているという患者さんを沢山見てきました。筋力や視力の低下等、様々な要因があるとは思いますが、歯科領域では歯の数が少ないと「転倒」しやすくなると言う研究報告が沢山あります。
◆え~。歯の数が少ないと転倒しやすくなるんですか。
◇はい。令和2年に厚生労働省は、歯の数が19本以下の方は歯の数が20本以上の方に比べ2.5倍「転倒」しやすくなると報告しています。歯がたくさん無くて入れ歯も入れてない方はもっと転倒しやすくなると容易に予測できます。
広島の病院では奥歯の咬み合わせが無くなると、自分の奥歯の咬み合わせが有る人の約5倍「転倒」しやすくなるという報告もしています。ただし入れ歯を入れて奥歯で噛めるようになると自分の奥歯で噛める人と同じくらい「転倒」しなくなるとも報告しています。
◆入れ歯をしていると「転倒」しにくくなるんですか
◇はい。入れ歯は物を食べるためだけではなく「転倒」を防いだり、姿勢を維持したりする為にとても重要なんです。往診先のリハビリ病院でもリハビリの際、義歯を装着するとリハビリの成果は向上すると言われます。
◆入れ歯は大切な役目を果たしているんですね。
◇そうですね。人間は生物学的に重心が高い生き物の1種だと言われ、頭の重さは体重の約10%、体重60㎏の人の頭の重さは男性が使用するボウリングの球くらい重いんです。その重たい頭が物干し竿の様な背骨の上に乗った不安定な状態を首周りの筋肉の緊張で支えています。その為には奥歯でしっかり噛みしめることが大切で、そうすることにより頭部、体幹、骨盤、四肢の配列(アライメント)や重心線が安定し「転倒」する確率が低くなります。
◆本当の歯でも入れ歯でも奥歯でしっかり噛みしめることが大事なんですね。
◇人間という生き物は器用で優秀な生き物ですから、歯がだんだん無くなってきても食材を変えたりして何とか上手く食べていけるんです。厚労省や日本歯科医師会が1990年頃からスタートし、皆様よくご存じの80歳まで20本の歯を残そうという「8020運動」は当時15%の達成率でしたが、2023年現在の達成率は52%にもなりました。ですが、まだまだ私達も患者さんに何とか理解していただいて歯の無いところに義歯を入れる必要性を訴えていかなければいけません。
◆「8020」運動はかなり普及してきた感じがしますね。出来るかぎり歯を残すことも大切ですが、歯の無いところに義歯を入れることも大事なんですね。
◇はい。また歯の残存数と認知症の進行スピードには相関関係があり、歯の数が早く無くなった人程早く認知症に進行すると言われています。
◆歯の数は、認知症にも関係するんですか?
◇はい。しかし歯が無くなっても欠損部に入れ歯を入れている人は、歯がある人とさほど差は生じません。広島大学の研究ですが、歯がある実験用のネズミに硬い餌を与えて育てたグループと歯が無く柔らかい餌で育てたグループを同時に迷路に入れると歯があり硬い餌で育てたネズミは直ぐに迷路を脱出できますが、歯が無くて柔らかい餌で育てたネズミはじっとして動けないそうです。
◆歯でしっかりと硬い物を食べることは大切ということですね。
◇他の報告では、奥歯でしっかり咬むと1回につき約3㏄(お弁当魚の醤油さし)脳の血流が良くなるという報告もあります。そりゃ~脳に沢山血が回ると脳の機能は向上しますよね?そして入れ歯を入れてよく咬むと唾液が沢山出てきます。実は口の中は乾燥している時よりも唾液で潤っている時の方が細菌が少ないんです。口の中の細菌が少ないとインフルエンザや肺炎にかかるリスクも少なくなると言われています。
◆自分の奥歯でしっかりと噛むことは色々な面で重要ということですね。また、義歯であってもしっかり噛むと同様な効果があるということですね。
◇はい。自分の歯であっても義歯であってもしっかりと噛んで、脳の血流を良くするとともに唾液を出し、口腔内ケアに努めてください。現在は歯医者さんも往診してくれます。一生お付き合いでき、やがては施設や自宅に往診に来てくれる「かかりつけ歯科医」として今から良好な関係を築かれることをお勧めします。現在お困り事や往診の依頼はそれぞれの地域の歯科医師会に問い合わせてみてください。
◆金岡さん、今日はいろいろと勉強になりました。ありがとうございました。
◇ありがとうございました。
◆今週も先週に引き続きまして、防府市の「上田・藤井総合法律事務所」で弁護士としてご活躍中、そして山口県議会議員、一男一女のお母さんでもある有近眞知子さんにお越しいただきました。有近さん、おはようございます。
◇おはようございます。
◆今週も先週に引き続き「成年後見制度」をテーマに、お話しいただけるんですよね。
◇はい。先週は「成年後見制度」の基本的なことをお話しさせていただきました。今週は「成年後見制度」について、皆さんからよくある質問に対してお答えする形でお話ししたいと思います。
◆分かりました。ではよろしくお願いします。
◇はい。まずよくある質問の1つ目「法定後見制度の後見人に、家族はなれないの?」という質問です。
◆この質問はよく聞きますね。
◇はい。後見人に家族がなれるかどうかは、最終的には家庭裁判所の裁判官が決定します。ご家族が後見人になりたい場合は、申し立て書類の中で、後見人候補者という箇所がありますので、そこに名前を書いて出すことができます。ただ、親族が後見人になる割合は年々減少傾向にあって、全体として約3割くらいですね。残りの約7割は、弁護士などの専門家がなっています。どうしてもご家族がいい、という方は、前回お話した任意後見制度を活用されるとよいと思います。
◆任意後見制度とは、まだ判断能力があるうちに、将来判断能力が衰えた時に備え、自分を守ってもらう契約を結んでおく制度でしたね。
◇そうです。次に「法定後見制度の申立ては誰でもできますか?」という質問です。
◆「判断能力が不十分な状態になっている人に、成年後見人をつけてもらうよう依頼することは誰でも出来ますか。」という質問ですね。
◇そうです。後見申立ては、その人の財産管理や人生そのものに重大な影響を与えますから、誰でもできるわけではないんです。どんなに仲が良くても、お友達や隣近所の人では申立てはできません。親族でも、四親等内の親族に限られます。四親等内といったら、はとことか、姪の子供とかになります。しかし、世の中には、配偶者も子供もいない、兄弟もいないという方は珍しくありません。また家族がいても、家族もご高齢だったり、ご病気だったりで、後見申立てに協力してもらえないこともままあります。こういう時はどうしたらいいんでしょうか。
◆こういう状況の人も多くなってきましたよね。本当にどうしたらいいんですか?
◇はい。65歳以上の認知症高齢者の方や、知的障害者、精神障害者の方で、身寄りがない時は、「市町村長が申し立てをすることができる」となっています。ちなみに、令和2年度のデータですが、誰が申立人となったかの割合を見てみますと、市町村長が24%、子供が21%、兄弟が11%、配偶者が5%という感じで、なんとなんと市町村長が1位という結果になっています。今後も、核家族化や非婚化、晩婚化が進むことで、申し立てをする親族が
いなくて、市町村長申立てを行うケースは増えていくと予想されています。
◆え~!市町村長の申し立てが1位とは驚きですね。
◇ただし、市町村長申立ての場合は、調査のために時間がかかることが多いので、そのうちに、本人の手持ちの生活費もなくなって、本人の生活を守ることができない困った事態が生じます。ですので、ご家族がいない場合は、あらかじめ元気なうちに任意後見制度などの準備をしておきましょう。十分防げます。
◆確かにご家族のいらっしゃらない方は、早めに信頼できる方と任意後見制度の契約をむすんでおくことが大切ですね。
◇そうですね。続いて、「後見人の交代はできるのですか?」という質問です。
後見人の交代は、基本的にはできません。家族からの要望で、性格が合わないとか、すごく偉そうだーなどという理由では後見人の交代はできません。では、どういった場合に認められるのかというと、後見人が遠方へ引っ越しすることになって、物理的に後見人としての業務をすることが難しくなった場合や、後見人が急病になってしまった場合とか、例外的な場合に限られます。あとは、本人から預かっている財産を横領したり、法律に反する行為をした場合などですね。
◆成年被後見人の家族が成年後見人に一度も会ったことがないなど、不満があるケースをテレビで見たことがありますが、特別な事情が無い限り、後見人の交代は出来ないのですね。
◇そうです。最後ですが、「後見人の報酬は、毎月いくら位払えば良いですか?」という質問です。
◆これは気になる質問ですね。
◇法定後見人の報酬は、裁判官が1年ごとに決めます。後見人から提出された、後見事務の報告書や、財産の内容やらを総合考慮して、各事案ごとに適正妥当な金額が算定されます。通常の後見事務を行った場合の報酬のめやすは、月額2万円です。管理してる財産が高額な場合には、事務が複雑だったり難しい場合が多いので、3万円から6万円となることもあります。一方、任意後見の場合は、契約で自由に報酬の金額も決めることができます。
◆法定後見人の報酬は家庭裁判所の裁判官が決め、任意後見人は契約で自由に決めることが出来るということですね。皆さん、いかがでしたでしょうか?2週に渡り、「成年後見制度」についてお伝えしてまいりましたが、ご理解していただけましたでしょうか?「成年後見制度」についてのご質問・ご相談は、専門家の弁護士に相談されるか、または番組にあてにご連絡ください。番組あてにいただきましたご質問・ご相談は、また番組を通して有近弁護士にお答えしていただきます。他のテーマのご質問・ご相談でも大丈夫です。
宛先は、
(ハガキ)
〒745-8686
KRYラジオ「ヤスベェの人生100歳満点!」係
(FAX)
0834-32-9000
(メール)
manten@kry.co.jp
採用された方には終活カウンセラー協会監修によるエンディングノート「マイ・ウエイ」をお送りいたします。住所、氏名、年齢、電話番号も忘れずにお願いします。
有近さん、2週に渡り、大切なお話、ありがとうございました。
◇ありがとうございました。
◆今週と来週は、弁護士の有近眞知子さんにご出演いただきます。有近さん、おはようございます。よろしくお願いします。
◇おはようございます。
◆有近さんは2回目のご出演なんですが、改めて簡単にプロフィールをご紹介いたします。山口市徳地のご出身で、広島大学法科大学院をご卒業。現在、防府市の「上田・藤井総合法律事務所」で弁護士としてご活躍中です。また有近さんは、柳井市選出の山口県議会議員でもあり、ご家庭では一男一女のお母さんでもあるんです。1人で3役をこなすスーパーレディーでいらっしゃいます。ということでお忙しい毎日をお過ごしの有近さんですが、今日は何についてお話しいただけますか?
◇今回は、2週にわたり「成年後見制度」について、お話しさせていただきたいと思います。
◆「成年後見制度」ですか。最近よく聞くようになりましたね。分かりやすく教えてください。
◇はい。歳をとって認知症などにより判断能力が衰えてくると、だんだん自分で財産管理をすることができなくなります。市役所の手続きや入院の手続きも難しくなります。そういった日常生活に関する判断が十分できなくなった時、後見人といわれる自分を守ってくれる人を選任して、法律行為を有効に成立させたり、行政手続きや財産管理などを行ってもらう制度が、成年後見制度です。
◆なるほど。「成年後見制度」とは、認知症などにより判断能力が衰えた人の財産を管理し、契約など法的な面から日常生活を守る制度なんですね。
◇はい。2000年に始まった制度で、早いもので20年以上経つので、皆さんだいぶ聞き慣れておられる制度だと思いますが、認知症になってからというより、なる前に事前の準備ができることもありますので、ぜひ最後まで聞いていただけたら嬉しいです。
成年後見制度には、法定の後見制度(法定後見制度)と、任意の後見制度(任意後見制度)があります。
◆「成年後見制度」が出来て20年経つんですか。そして「成年後見制度」には、法定後見制度と任意後見制度の2種類があるんですね。
◇はい。皆さんが良く知っておられるのは、法定後見制度です。これは認知症などで判断能力がなくなったり、衰えたりしてしまった後に利用する制度です。
たとえば、ご自宅で妻が夫を介護し、財産も管理していたとしましょう。夫が認知症を発症して、介護度も上がってしまい、自宅で生活を続けていくのが難しくなってしまった。そこで、妻はケアマネジャーと相談して、有料老人ホームに夫婦で入ることにしました。
有料老人ホームに入るには、入居一時金を支払わなくてはなりません。妻は夫の退職金を銀行に預けていたので、このお金で入居一時金を支払おうと考えました。銀行へ行って、振り込み手続きをしようと窓口で通帳を出しました。定期預金に預けていたため、定期預金を解約して、振り込みを依頼しました。そうすると、銀行の窓口の女性はこう言いました。
銀行「お客様、失礼ですが、ご本人様は一緒に来ておられますか?」
妻「いや、一緒に来ていません。私は妻ですので大丈夫です。定期預金の解約手続きをしてください。」
銀行「定期預金の解約は、ご本人様が窓口に来ていただく必要があります。」
妻「主人は介護が必要な状態で、外出できません。認知症にもなっちょるから、妻の私が夫の代わりに色々しているんです。」
銀行「ご主人様は認知症になられているんですか?そのような状態でしたら、奥様であってもご主人様の定期預金を解約することはできません。」
妻「じゃあ、どうすれば主人の定期預金を解約できるんですか?」
銀行「お客様、成年後見制度はご存知でしょうか?ご主人様に後見人をつけてもらってください。」
妻「私たち夫婦なのに、そんな手続きをしないと解約できんの?後見人がつくと、主人のお金を自由にできないんでしょう?」
…こんな感じで、困られてから、成年後見の申し立てを弁護士に依頼される方が多いです。
◆よくありそうなお話ですね。すでに判断能力が不十分な人のための制度が法定後見制度ですね。
◇はい。後見申し立ては、裁判所にします。後見を申し立ててから数ヶ月後に、裁判所が後見人を決定します。稀に後見人に家族などがなる場合もありますが、弁護士などの専門家がつくことが多いです。
一方の、任意後見制度は、まだ元気な時に、判断能力が十分あるうちに、将来、誰に財産管理や市役所の手続きなどを任せるかをあらかじめ契約で決めておく制度です。自分で将来認知症など判断能力が衰えた時に、任せる相手を決めることができるので、おそらく任される方は、自分のことをよく知ってくれている人で、信頼関係がしっかり築けている人だと思います。この人ならこうして欲しいって言うじゃろうな、これは嫌がるじゃろうなということを良くわかってくれている利点があります。「自分らしく生きる」ことは、老後の生活を送る上で、とても大切で、重要なことですから、信頼する人と任意後見契約を締結しておくのはおすすめです。
◆元気なうちに信頼できる人と契約し、将来判断能力が衰えたら守ってもらうのが任意後見制度ですね。
◇日本人の寿命は、どんどん伸び続けています。寿命が伸びると、認知症になる確率は高まります。私も含めて、多くのかたが認知症になる可能性がありますから、認知症になっても大丈夫なように、元気なうちに準備しておきましょう。
◆まさに「転ばぬ先の知恵」ですね。「成年後見制度」は、高齢者詐欺の有効な手段としても注目されていますよね。有近さん、今日は貴重なお話、ありがとうございました。来週もよろしくお願いします。
◇ありがとうございました。
◆今日もNPO法人 山口県終活支援協議会理事長、徳沢靖さんにお越しいただきました。とくさん、おはようございます。
◇おはようございます。
◆今日は何について、お話しいただけますか?
◇はい。実は「終活」に関する資格には、「終活ガイド」「終活ライフケアプランナー」「終活アドバイザー」など現在、数種類あるんです。
◆いろいろとあるんですね。
◇はい。今日はその中から、私が資格を取得しました「終活カウンセラー」についてお話してみようと思います。
◆今日のテーマは「終活カウンセラー」ですね。よろしくお願いします。
◇はい。一般社団法人終活カウンセラー協会という組織がありまして、この組織は全国的に終活の普及について活動しています。私もこのカウンセラー協会の会員でして、認定終活講師に任命されています。
◆協会の認定終活講師なんですか。さすがですね。
◇いえいえ、ただ全国に2万3000名いる会員の中でも100名余りしかいませんので、希少種ではあると思います。
◆では、終活カウンセラーはどんな仕事をするのでしょうか。
◇まず終活カウンセラーの知識は、終活に関する専門分野を全て網羅するものではありませんが、終活に必要な幅広い知識を持ち、相談者の「悩み」がどの分野に当てはまるかを的確に応えることができます、例えば相続と生命保険の関係や年金と葬儀、供養の関係など分野の違うような事柄についても総合的に関連を判断することができます。また相談者が次に何をすれば良いか、また「話を聞いてくれた」と喜ばれるスキルの持ち主でもあります。
◆終活カウンセラーは、「終活」についての幅広い知識を持ち、相談者に寄り添い、アドバイスができる存在ということですかね。
◇そうですね。要するに終活カウンセラーは町医者のようなもので、些細な悩み事でも全て対応して、相続、介護、年金、生命保険、葬儀や供養などを総合的に回答します。その中でも専門家の対応が必要な場合には大病院の専門医、司法書士や税理士などの士業の方々に引き継ぐ役割を持っています。士業とは、司法書士のように最後に「士」がつく専門家のことです。各士業とは関係を維持しており、相互の情報交換などを常に行うように活動しています。
◆なるほど。各業界の専門家とのネットワークづくりも終活カウンセラーの大切な仕事ということですね。
◇そうです。また、終活相談会についてですが、昨今の終活ブームで各種の相談会が開催されています。しかし、特定の業種に特化されたものが多く、相談者の望む回答が得られないケースや中には特定の会員になるように仕向けてくるセールス相談会も見られますので、注意が必要です。また、士業などの専門家も相談に応じてくれますが、有料であったり、例え無料であっても相談者が士業という壁を感じてなかなか相談しづらいこともあるようです。
◆一言で「終活相談会」と言っても、たくさんあるので、有料か無料か、自分の知りたいことが得られそうかどうかなど、事前によく検討することが大切ということですね。
◇そうです。その点、終活カウンセラーは相談に特化していますので、非常に間口の広い存在だと思います。さらに終活カウンセラーの中には本業として弁護士や司法書士、行政書士などの士業や看護師、元公務員、宅建士、また市民後見人養成講座の修了生も多数で、これら専門知識を有する者も多く、また、全国の終活カウンセラー同士の横のつながりが非常に強いため、相談などで壁に突き当たっても、すぐに仲間へ相談することで解決できます。また、極めて特殊な、士業などの専門職でも困るような事案でも、終活カウンセラー協会が提携している大学やシンクタンクなどに尋ねることができるため、より正確な回答や情報を提供できる環境となっています。
◆終活カウンセラーの中には本業が専門家の方も多く、協会も大学やシンクタンクと提携しているんですね。
◇ただ、問題点もあります。全国に終活カウンセラーの資格を有する会員が2万3千人ほど存在しているのですが、実際に相談活動をしているのが約3000人程度、また、高いスキルを持つ認定終活講師は全国に100人ほどしかいません。終活カウンセラー協会では、より皆さんの身近で終活カウンセラーが活動できるように力を入れているところなのですが、その一環として今月30日の日曜日、山口市小郡にあります「維新ホール」において終活カウンセラー2級検定及びセミナーが開催されます。
◆今月30日(日)、山口市小郡の「KDDI維新ホール」で終活カウンセラー2級検定及びセミナーが開かれるんですか。
◇はい。これは終活カウンセラーの登竜門であるカウンセラー2級のセミナーを行い、その日に2級検定を行うものでカウンセラー2級の資格を取得できます。また、資格は別にしてもご自身の終活知識の向上に極めて役に立つセミナーとなります。当日は一般社団法人終活カウンセラー協会の代表理事や私も講師の一人として参加を予定しています。
◆「終活」にご興味のある方は、是非ご参加いただきたいですね。費用はかかるのですか?
◇受講料としてテキスト代・昼食代・受検代込みで一般15,000円、学生10,000円です。詳しくは終活カウンセラー協会のホームページをご確認下さい。
◆もう一度お伝えしておきましょう。7月30日(日)、山口市小郡の「KDDI維新ホール」で終活カウンセラー2級検定及びセミナーが開催されます。ご興味のある方はご参加ください。とくさん、ありがとうございました。頑張ってください。
◇ありがとうございました。