転ばぬ先の知恵
◆今週もファイナンシャル・プランナーで、柳井市の上津原マネークリニック代表の上津原 章 さんにお越しいただきました。上津原さん、よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
◆先週はファイナンシャル・プランナーの概略についてお話しいただき、仕事の内容やどのようなことを相談すればよいかということが分かりました。今日は「人生100年時代のお金との付き合い方」と題してシルバー世代の方を中心にお話いただけるとのことです。ではお願いします。
まず、以前「老後2000万円問題」がありましたが、このことについてお話しします。
60歳代の方が老後に必要と思っている金融資産は2081万円、老後に必要と思っている毎月の生活資金は32万円。厚生労働省が公表している2022年度の標準的な年金額は月額約22万円。(40年間厚生年金の職場で働いた方と、その扶養者のご夫婦の例)このまま当てはめて計算すると、毎月10万円の赤字。(統計数字は、金融広報委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」(令和3年によるものです)
◆2000万円という数字が出てきた経緯はわかりました。上津原さんはこの「老後2000万円問題」についてはどう思われますか?
今までも、2000万円を老後資金の目標としていた方はおられました。国が出した報告書は、安心した老後を迎えるために何が必要かを示したものにすぎません。老後に必要なお金は人それぞれで、(2000万円より)もっと少ないお金でも一生涯安心して暮らせる方はおられると思います。
◆現在のシルバー世代の金融資産(預貯金)はどれくらいなんでしょうか?
実際にお持ちの金融資産の中央値は60歳代で1400万円、70歳代で1500万円。仮に毎月5万円ずつ取り崩した場合、1500万円だと25年でなくなる計算。つまり、いくら預貯金が必要かよりも、毎月いくらで暮らすかが大事。心配であれば、無理のない範囲で働くのもよい。49.1%の方が、老後の収入源の一つとして働くことによる収入を考えている。
◆実際のシルバー世代の預貯金平均額は2000万円は無いんですね。また、働くことを考えている方が半分近くいらっしゃるんですか。
そうですね。実際、いろいろな職場で年金生活者の方が増えてきたように感じます。
お金をふやす話でいえば、60歳代のうち、一時的な元本割れを受け入れてでも、大きくふえる資産運用をしたいと思っているのは(現在運用している方を含め)およそ9人に1人。興味がある方(少しは運用してもよい)を含めても45%で半数以下。不安に駆られて、無理にふやそうと考えなくてよい。
生活設計を立てている方の割合は、全体の38.2%(全年齢)と増えてきているが、20年以上先まで立てている方の割合は、15.7%。およそ6人に1人。年金生活者の方に、「死ぬときにお金がいくらあったらよいですか?」と問いかけると、たいていの方は、「間に合えばよい。借金が無ければ(迷惑をかけなければ)よい」と答える。
◆資金運用を考えている方も少なく、長期の生活設計を立てている方も少ないんですね。
今申し上げたことが現実なんですね。
しかし、生きがいの面から考えると、何歳になっても、何らかの役割や楽しみがあった方がよいと思う。目標を持ってお金を楽しく使う動機をつくることが、借金を作らないための計画になる。また、お金がない、少ないと思っている方こそ、長期的な資金繰り計画をつくると安心につながる。これからやりたいことを資金繰り計画の中に入れる。使う時には使う、残すときには残すといったメリハリが大事。「人生100年時代」、何をするにせよ遅いということはありません。これからの自分をイメージしつつ、ライフプランを考えていきましょう。そして、分からないことが出てきたら我々ファイナンシャル・プランナーに相談してください。状況は個人個人違いますので、それぞれに応じたサポートをしていきます。
◆我々だけでは、税制、不動産、保険、介護・医療費、相続・贈与など分からないことが多いですからね。私も60歳を超えていますが、まだまだ前向きに生きていきたいと思うのですが、将来的に健康面を含めてどうなるか分からないので、不安な面がありますね。
そうですね。お金を踏まえてのこれからのライフプランを考えることは大事なことです。しかし、私の長年の経験から言わせていただきますと、年を重ねるごとにお金の心配の前には、心の心配がある。心の心配を聞いてくれる人の存在が、お金を長く残すことにつながる。つまり、人とのつながりも大切ということです。
また、介護が必要になった時や大きな病気をして入院した時でも笑顔でいられる私は、どのような私か。考えてみるのも大切かもしれません。元気な時の生き方を考えることにつながります。笑顔、生き生きしている様子、仕事などのやりがいなど、見えない財産は見える財産より大事かもしれません。自分にとって「よりよい人生とは何か」について考えることは大切なことだと思います。
◆確かに家族や親族、知人、友人、そして今後の生活を助けてくれる人などとのつながりは大事ですね。また、何よりイキイキとして自分らしく生きていくことが一番大切なことですよね。そうあるためにお金も必要ということでしょうかね。上津原さん、ありがとうございました。
◆今週、来週は、今注目の職業と言っていいでしょう「ファイナンシャル・プランナー」について学んでいきたいと思います。スタジオにはそのファイナンシャルプランナーであり、柳井市で上津原マネークリニックを開いていらっしゃいます上津原 章さんにお越しいただきました。上津原さん、よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
◆まずは、上津原さんのプロフィールをご紹介します。上津原さんは周南市のご出身で山口大学経済学部をご卒業後、広島市の税理士事務所に入られました。そこで初めてファイナンシャル・プランナーの存在を知り、相続税申告や相続対策の仕事をしているうちに、もっと身近な方の役に立ちたいと思い、ファイナンシャル・プランナーの国際資格CFP(R)を2000年に取得、2003年春、柳井市に現在の上津原マネークリニックを開業されました。開業されて19年、相談実績1000件以上というまさにファイナンシャル・プランナーという方です。まずは、「ファイナンシャル・プランナー」とはどういうお仕事ですか?分かりやすく教えてください。
ファイナンシャルとは「財政」という意味があります。財はお金やご自宅などの財産、政は祭りごと、ご自身やご家族のイベントごとです。つまり、ファイナンシャル・プランナーは、ご自身の財産を上手に活用しながら、ご自身やご家族がよりよい人生を送る計画を一緒に考えて実行するお手伝いをする人です。
◆なるほど。相談者の夢や目標がかなうように「財政」「金融」など経済的な側面からサポートする人ということですかね。具体的にはどのようなことが相談出来るんでしょうか?
お金に関わることならなんでもご相談ください。よくあるのは、マイホームの上手な買い方、教育資金を上手に貯める方法、老後もずっと安心して暮らせるための長期的な資金繰り計画。といったところです。最近は、資産運用や相続についての相談が増えました。ファイナンシャル・プランナーには、それぞれ得意な分野があります。私が好きなのは、お客様の旅行計画を一緒に考えることです。だから、お客様も旅好きな方が多いです。
◆「旅」はいいですよね。具体的にはどういう相談がありましたか?
弊社のお客様は、毎年1年間の行動計画を作成しています。その中で、旅行の時期や、旅行に向けての資金の準備を考えてもらっています。最近だと、県民割を使って旅行をしたい、あこがれの宿に泊まりたいという相談もお受けしました。(ヤスベエさんに相談した案件もあります(笑))
◆相談実績が1000件を超えているとのことですが、予想外の相談をされることもあるんじゃないでしょうね。
今まで受けたちょっと変わった相談ごととしては、お見合いの相談、パソコンの購入、お子様の進路相談、婚活(結婚資金の貯め方含む)、ひたすら愚痴を聞く、おいしい地酒を知りたい、老人ホームへ入居できるだろうか など
◆どのように対応されるんですか?
専門外のことでも私の持っている知識をフルに活用して対応する場合もありますし、知っている専門家を紹介することもあります。
◆ファイナンシャル・プランナーは、幅広い知識が必要で、いろいろな業界の方を知っておくことも大切なのですね。また、「ひたすら愚痴を聞く」ということがありましたが、お仕事柄 じっくりと話を聞く、相談者に寄り添うという姿勢も大切なのでしょうね。
お客様が事務所に来られる前より、少しでもよりよい状態にならないかを一所懸命考えています。
◆我々は年齢がいくつになっても夢ややってみたいことはあると思います。しかし、同時に将来どうなるかが分からないので、金銭面での不安も付きまといます。何かアドバイスはありますか?
何となく心配するよりも、まずは家計の現状を把握し、長期的な資金繰り計画を立てることが大切。自分なりに動いてみることが重要です。また、実現したい、叶えたいなど、前向きなことを考え、自分をその気にさせることも必要。心配事が起きた時のことも気になりますが、前向きなことのお金の準備ができていたら、心配事に対するお金の準備も出来る、と自分に言い聞かせることが大切です。
そしてお金を上手に使うためには、「心が穏やかになる」「周りにいる人たちが幸せになる」「体がずっと元気なままでいることができる」計画をつくることが大事。損得より尊徳。100か0(できるかできないか)で考えない。0.1でもできないかと考える。実現したいと思っていることのほんの少しでもできれば、何もしないよりずっとまし。と楽観的に考えることも大切です。
過去の事例を踏まえていろいろと言いましたが、人生設計(ライフプラン)とお金に関することは、ファイナンシャル・プランナーにご相談ください。相談者の夢や目標を達成するために、長期的かつ総合的な視点でさまざまなアドバイスや資産設計を行い、併せてその実行を援助いたします。ファイナンシャル・プランナーは人生の伴走者 長いおつきあいをお勧めします。
◆「上津原マネークリニック」でもお客様と長いおつきあいをされているんですよね。
その通りです。私たちとの付き合い方は、お客様ご自身が考えてくださっています。
◆なるほど。自分の夢や目標をかなえるためには、ファイナンシャル・プランナーと何でも話せる信頼関係を作り、長くおつきあいすることが、大切なんですね。上津原さん。時間となりました。来週のテーマは何ですか?
来週は「人生100年時代のお金との付き合い方」と題して、シルバー世代の方を中心にお話ししたいと思います。
◆わかりました。今日はありがとうございました。
◆先週は「シルバー人材センター」の理念や実際の仕事の内容など、概略について学びました。仕事が多岐に渡っていることに驚きましたが、今日は、さらに「独自事業」や女性会員「シルボンヌ」の活動について教えてください。
「独自事業」としては、金魚提灯の制作やシルバー農園の運営、また、手芸品・布製品を作って道の駅などで販売しています。子育てサロンを開設して子供さんを遊ばせながら親御さんの子育ての相談に応じたり、いくつかのセンターではしめ縄や門松の制作やパソコン教室、刃物研ぎや剪定の枝葉をチップにして土壌改良の肥料にして販売しているセンターもあります。
独自事業はSDGsの取組みとしても評価できると思います。
◆「独自事業」もいろいろあるんですね。自分がやってみたい事業があればやってもいいですか?
はい。起業と同様に自らが作りだし、自らが働くことができます。兵庫県のセンターでは、“3人寄れば独自事業”といって、たくさんの事業に取り組んでいる例があります。一人暮らしの高齢の方のお話相手となる「傾聴」なども事業として成り立っています。事業のヒントがあれば是非、お教えください。
◆先週、シルボンヌというワードがありましたが、具体的にお話いただけますか?
はい。先週、少しご紹介したとおり、「シルボンヌ」は「シルバー」とフランス語のお手伝いや親切を意味する「ボンヌ」を合わせた造語です。シルバー人材センターのイメージアップと女性会員の入会促進のために、もともとは埼玉県のシルバー人材センター連合の「いきいき埼玉」が平成30年に定めた女性会員の愛称です。シルバー人材センターの全体のイメージ改革に繋げたいとの思いから、現在は全国でこの愛称が使われ、昨年、一昨年は東京でシルボンヌ全国大会が開催されました。
シルバー人材センターは、庭木の剪定や草刈が主な仕事で男性が多いイメージがあるかもしれませんが、女性会員も多く、活躍されています。県下では女性会員の割合は1/3程度ですが、女性活躍の時代に乗り遅れないよう、シルバー人材センターでももっとたくさんの女性に会員になっていただきたいと思っています。もちろん、男性のかたも歓迎いたします。
◆「シルバー人材センター」へ入会するにはどうすればいいのですか?
原則60歳以上の健康で働く意欲のある方ならどなたでも会員になれます。
まずは、お住まいの地域のセンターが開催する入会説明会などに参加の上、シルバー人材センターの仕組みをご理解いただき、趣旨に賛同していただければ、会費を納めて入会していただくことになります。
◆住んでいるところを管轄しているセンターに入会するということでね。会費と言われましたが、どれくらいなのですか?
センターによって異なりますが、4月から3月までの年会費として、2400円~3000円です。センターごとに入会時期による割引やご夫婦で入会された場合の割引などがあります。
◆現在の山口県の会員数は9158人と言われましたが、増えているのですか?
残念ながら会員は減少傾向にあります。現在センターでは会員の減少と会員の高齢化が課題となっています。企業における70歳までの就業機会の確保が努力義務となったことも影響して、60歳代の新規入会会員が減少し、新規入会者の年齢が上がっていることにより会員の高齢化が進んでいます。お仕事のご依頼に対し就業できる会員が不足している状況であるので、是非とも地域の60歳以上の皆様には会員になっていただき、地域のために力を貸していただきたいと思っています。
◆求められている仕事量に比べて会員が不足している状況なのですか。しかし、先ほどの女性会員「シルボンヌ」たちが輝いていることや「独自事業」が広がっている状況などを見ると活性化する可能性は十分にあると思います。男性会員にもいい愛称があるといいかもしれませんね。
そうですね。男女を問わず、新規会員大募集中です。ご入会をご検討中の方は,まずは各シルバー人材センターの入会説明会にお越しください。入会前、入会後の就業体験や各種講習会も行っております。
また、ご入会を検討されている方だけではなく、地域の皆様には「シルバー人材センター」は草刈り・清掃・剪定の他にも、多種多様な仕事を引き受けているので、困ったことがあれば、是非、センターにご相談ください。
◆秋に大きなイベントがあるそうですが?
まだ先の話になりますが、10月21日には11年ぶりとなる「シルバーフェスティバル」を新山口駅そばのKDDI維新ホールで開催します。
辛坊治郎さんの講演や会員の活動発表会、ロビーでは手作り品の作品展示や販売など行う予定です。近づいてまいりましたら、また、ご案内しますので一般の方も奮ってご参加ください。
◆11年ぶりの開催ですか。辛坊治郎さんの講演会や会員の皆さんの発表会など、聴いてみたいですね。
ありがとうございます。お問い合わせ・ご相談は。
山口県シルバー人材センター連合会
電話番号 083-921-6070
または、最寄りのシルバー人材センターにご連絡くだい。
◆今週と来週は2週に渡って「シルバー人材センター」について、学んでいこうと思います。まず、浜田さんのプロフィールをご紹介します。
浜田さんは、2001年10月に山口県シルバー人材センター連合会に入られ、経理、総務をご担当。2019年4月より事務局長、6月より常務理事にご就任。20年以上にわたりシルバー人材センターに携わり、全国シルバー人材センター事業協会のシルボンヌ全国大会の実行委員会委員もお務めです。
◆「シルボンヌ」という言葉が出てきましたが、「シルボンヌ」とは何ですか?
「シルボンヌ」とは「シルバー人材センター」で働く女性会員の愛称なんです。「シルバー」とフランス語のお手伝いや親切を意味する「ボンヌ」を合わせた造語です。全国各地でたくさんの「シルボンヌ」さんが活躍されています。
◆「シルボンヌ」についてはまた、お聞きしたいと思いますが、まずはシルバー人材センターについて教えてください。
はい。シルバー人材センターは、60以上の高年齢者が働くことを通じて生きがいを得るとともに地域社会の活性化に貢献する組織です。センターでは、企業・個人家庭・公共団体などから会員に相応しい臨時的且つ短期的、または軽易な仕事をお引き受けし、その仕事にあった働き方、請負・委任、派遣、職業紹介により、会員の皆さんにお仕事を提供しています。
原則、市や町単位に設立されており、全国では約1,300センターあり、会員数は約70万人。山口県では17の市町に14のセンターがあります。会員は3月末現在9,158名で平均年齢は74歳です。
◆シルバー人材センターは全国にあり、山口県内では14センター、17市町で展開ということで、ほぼ県下全域で活動されていると言っていいですね。そして定年退職された方など60歳以上の高年齢者が働く団体ということでいいですかね。
そうですね。そしてシルバー人材センターには理念を表す5つのキーワードがあるんです。それは、「臨・短・軽」「健康維持」「社会貢献」「仲間づくり」「生きがい」の5つです。「健康維持」「社会貢献」「仲間づくり」「生きがい」は分かると思いますが、「臨・短・軽」とは「シルバー人材センター」での働き方を表しておりまして、臨時的・短期的・軽易な業務という意味で、働く日数が月10日程度以内または週20時間未満となっています。現役の時のようにフルタイムでなく無理なく余裕を持って働こうということです。仕事を紹介しているだけではなく、社会参加を通じて「健康維持」や「仲間づくり」そして「生きがい」のある充実した生活を目指した組織でもあります。仕事を離れた活動として、各種同好会活動や親睦会・会員旅行などがあります。会員の特典もあり地域の店舗と連携して割引やプレゼントがもらえるフレンドリーショップ制度を実施しているセンターもあります。
◆働く日数が月10日程度以内または週20時間未満というルールがあるんですか?
そうですね。ですから、お仕事の違いや地域差はありますが、平均的な収入は月3万5000円くらいなので、お小遣い程度といったところでしょうか。社会と自分のために無理なく余裕を持って働こうということですね。
◆なるほど。収入的にはあまり大きくはないが、仲間と楽しみながら働く、自分の居場所づくり、生きがいづくりという意味合いが強い感じがしますね。
そうですね。加えて働くことで会員の健康水準は一般の高齢者に比べて高いという統計も出ています。なので地域にプラス、社会にプラス、自分にもプラスと言えます。
◆それは素晴らしいことですね。健康第一ですから。実際の仕事の内容はどうようなものですか?草刈りや駐輪場の管理というようなイメージがあるのですが。
はい。今言われた、草刈、駐輪場の管理やお庭の剪定、「公園の清掃」「ゴミの分別」など「環境美化、生活の利便性の確保」に関することが従来の主な仕事でしたが、時代の変化とともに仕事内容も多彩になってきています。
・同世代を支える仕事として個人家庭の家事援助、地方公共団体が行う介護予防・日常生活支援総合事業の受託による生活支援サービス提供
・次世代を支える仕事としては放課後児童クラブの補助員、子育て支援、食育交流など
・地域社会を支える仕事として空き家・お墓の管理、公民館・駐輪場など施設管理、空き店舗の活用など
・人手不足企業への労働者派遣も行っています。スーパーやホームセンターでの商品管理や介護施設や飲食店での調理補助、自動車販売店での洗車、送迎バスの運転なども行っています。
◆ずいぶんと業務内容が多岐に渡っているんですね。びっくりしました。また、介護予防・日常生活支援総合事業の受託団体としての活動もされているんですね。
はい。県下では7センターが介護予防・日常生活支援総合事業の委託を市から受け、会員の方が生活援助サービスとして、掃除や調理などをされています。また、この他にも会員が自ら取組んでいる、独自事業もあるんですよ。
◆すごいですね。残念ながら時間となってしまいました。独自事業や冒頭触れました「シルボンヌ」の活動などは来週お話しいただければと思います。浜田さん、今日はありがとうございました。
◆今日のテーマはいよいよ「成年後見人制度」。特殊詐欺や悪質商法など高齢者被害の犯罪を防ぐ切り札とも言われています。ではよろしくお願いします。◆
はい。今回は少し難しい内容になりますが、高齢者の保護に関しての決定打とも言える「成年後見制度」について出来るだけ分かりやすくお話したいと思います。
そもそも「成年後見制度」は介護保険制度と同時の2000年に施行された制度で、まだ20年ほどしか歴史がありません。そのため制度の改正が度々行われており2015年には成年後見人の促進法が制定されて市民後見人の育成にも力が入れられるようになりました。
◆なるほど。
では、後見人とは何をするのかを簡単に説明します。
まず第一に後見を受けるご本人の財産管理があげられます。ようするにご本人の財布を預かるといったイメージでしょうか。後見人に指名されると預金通帳もご本人と後見人の連名で作成でき、後見人はご本人の財産を自由に出し入れできるようになります。もちろん後見人がご本人の財産を勝手に私的に使えば、通常の窃盗や横領よりも思い刑罰が科せられます。そのため後見人の選任には家庭裁判所が審査して弁護士や司法書士、社会福祉士等の専門職や一定の研修を受けた市民後見人、実は私も一定の研修を受けた市民後見人なんですが…ご家族も後見人として指名される場合があります。
◆成年後見人は後見を受ける人の財産を管理するわけですね。確かに財布のひもをしっかりした成年後見人が握っていれば特殊詐欺や悪質商法に引っかかることもなくなりますね。
次に後見人はご本人に代わり各種の契約を締結できます。そもそも後見人が付けられるのはご本人の認知能力が低下している場合で、一般の契約でも認知能力が低下していた場合は締結できませんので、例えば、ご本人が施設などに入居して住まなくなった家屋の処分や保険の契約等、ご本人に代わって契約することができます。また、ご本人が締結した契約についても取り消す権限があります。
さらに後見人はご本人の身体監護を行います。これは後見人本人が直接的な介護等をするのではなく、ご本人に対して適切な施設や病院へ入居・入院させることができます。もちろん入居時の保証人にもなれますし、その後の転院などについても判断することができます。もちろんご本人の意向が大切なのは言うまでもありません。
また、「成年後見制度」には「補助」「保佐」といった権限を限定した制度もありますが、本日は割愛いたします。
◆なるほど。成年後見人は本人の体をケアし、状況に応じて適切な施設や病院に入れるなど身体監護の役目もあるんですね。
そうです。このように高齢者保護の観点から非常に優れた「成年後見制度」ではありますが、問題点もいくつかあります。そのひとつとして、後見人は他人の財産やご本人の身体監護をあずかる非常に重要な職務となります。そのため高度な知識と法を守る順法精神が要求されます。よって対応できる人材が限られており、家庭裁判所も後見人の指名に苦慮しているところもあるようです。
さらにもう一つの問題として、これだけの責任をもって活動してもらうためには報酬付与が必要となってきます。もちろんこの制度で儲けようと考える人はいませんが、どうしても活動経費が必要であり、最低限でも報酬を支払わなければならないと言うことです。残念ながら「成年後見制度」は法律に基づく制度なのですが、その維持には各々契約者が報酬を支払わなければなりません。そこで私は個人的な考えではありますが後見人に対する報酬は税金で賄われるべきではないかと考えています。今後の超高齢化社会に対応し、年間何億円にもなる特殊詐欺や悪質商法の排除のためにも「成年後見制度」は最大の予防策であることを理解していただき、完全な公的制度として確立していただきたいなと考えています。
さいごに「成年後見制度」には申立人の申し出により家庭裁判所が審査して後見人を付与する「法定後見人制度」とご本人があらかじめ後見人を指名しておく「任意後見人制度」があり、更にお亡くなりになった後の財産処理等を委任する「死後事務委任契約」等の制度もありますので、お元気な今、これらの制度について調べられるのは、究極の終活と言えるかも知れません。
◆「成年後見人制度」が非常に重要な制度であることがよく分かりました。また、問題点があることもわかりました。高齢者の財産と身体を守るために「成年後見人制度」をうまく活用していきたいですね。とくさん、ありがとうございました。