『雛まつり』
桃の節句に合わせて。女の子にとって雛まつりは、とても華やかで嬉しいはずですが、豪華なひな人形ではないお家の女の子の、さみしさが伝わってくる一編です。みすゞさんは、華やかな裏のさみしさにもそっと眼差しを向けていて、物事の表と裏、明と暗を、ちゃんと全て掬い取ってくれている、そんな気がします。だから、みすゞさんの詩を読むと、心がホッとするのかもしれませんね。
『桃の花びら』
お花の咲かない場所に桃が自分の花びらを散らして、その場所に花を咲かせようとする様子。それを見たおてんとうさまが、そのやさしさに喜んで、日の光が更に強くなって温かくなります。すると、かげろうがゆらゆらとのぼるのです。そしてそのかげろうを、散ってしまった花びらの魂の姿に見立てています。
相手のために自分が犠牲になることを厭わないその桃の魂を、お日様が昇らせているんですね。素敵な素敵なみすゞさんの優しさがそこに溢れているように思います。おてんとうさまは、まるでみすゞさんそのものです。