みどころ

 2023年、米国の有力シンクタンク「CSIS」が台湾有事のシミュレーション結果を公表した。中国が2026年、台湾に侵攻する想定で、24のシナリオを検証…その大半で、中国は在日米軍基地をミサイル等で攻撃したのだった。安全保障が専門の沖縄国際大・野添文彬准教授も、「中国は台湾有事が始まった途端に、在日米軍基地を攻撃するだろう」と分析する。CSISの報告書に基地外の被害の記載はないが、「全く民間人に影響が出ないのはあり得ない」と警鐘を鳴らす。
 台湾に近い米軍基地を抱えるまち、岩国と沖縄…基地に対する民意は真逆だ。かつて空母艦載機部隊の受け入れを巡り、国による「アメとムチ」政策に翻弄された岩国では現在、豊富な基地財源を活用したまちづくりが進み、市民は基地がもたらす恩恵を求めるようになっている。対して沖縄では、米軍基地が集中する負担やかつての沖縄戦の経験から、基地への反対は根強い。台湾有事を念頭に、基地は恩恵ではなく、「標的となるリスク」と捉えられている。  
 CSISはシミュレーション結果を基に、台湾有事を有利に進めるため「戦力の分散」を提言。ひとつの基地が攻撃を受けても作戦を継続していくため、戦闘機部隊を所属する基地に固定させるのではなく、普段は使っていない基地に展開させるべきというのだ。岩国基地では近年、この提言通りの動きが見られるようになっている。ハワイやアラスカ、嘉手納、三沢などの基地から相次いで戦闘機部隊が展開してくるようになったのだ。さらにCSISの提言は、日本国内の民間空港をも、米軍が使えるようにしておくべきと踏み込む。先の大戦から79年…私たちが生きているのは、本当に「戦後」なのだろうか。

 

放送日時

「戦前リアル」
2024年5月23日(木) 10:25~11:30