NO.58 1/3の確率

2007年7月 3日 カテゴリ:ダメだコリャ

一昨日、山開きがあった富士山。
登山愛好家には待ちに待った季節だ。
かつて僕も富士山に登ったことがある。
もちろん山頂まで。
 
中1の夏休み。塾の特別合宿で行った富士登山。
別に富士山に登っても頭がグンと良くなるわけでもないのだが、
精神を鍛えるという意味があったのだろう。
 
いつも実家の二階から眺めていた富士山。
特に真冬、夕焼けに浮かぶシルエットは美しい。
その富士山に登る。胸がワクワクした。
しかも頂上の宿に泊まって翌朝ご来光まで拝もうという計画だ。
 
五合目までバスで上がりいざスタート。
途中知り合ったおじさんから
「ご来光が拝める確率は1/3だ」と教えられた。
2/3は曇りや雨で見られないらしい。
中学に入りテニス部で毎日走り鍛えていたので
登るペースは速かった。どんどん登る。
今だったら考えられないことだが、
かなりの距離を富士登山駅伝のように小走りで駆け上がったりもした。
それでも九合目まで来るとかなり酸素が薄くなり、
苦労しながらようやく登頂!
バッグに入れていたポテトチップの袋は
パンパンに膨れ上がっていた。
 
頂上に宿があること自体驚きなのだが本当に何軒か宿があった。
ご飯もちゃんと出る。
確かメインはレトルトのハンバーグだったような…。
ただ、寝場所が超狭い。
より多くの登山客を寝かすためだろう、
雑魚寝で布団が普通のサイズの縦半分しかない。
寝返りを打ったら隣の人にぶつかる。
運悪くジャンケンに負けグループの一番端っこになってしまった。
隣はオバサン集団。
夜中そのオバサンが寝返りを打ってこっちに迫ってくる。
暗くて良く分からないが結構唇が厚く、怖い。
僕は背中を向ける。
仮に寝返りのタイミングが重なり合ったりでもしたら…
なんて考えるだけで眠れない。
あーあついてない。
結局、ほとんど寝られず翌朝僕は一番に起きた。
 
さあ、ご来光の時間。
外の気温は真夏でも3度。寒さに振るえながら東へ向かう。
徐々に東の空が赤く染まってきた。
眼下には白い雲。その切れ間から富士五湖が覗く。
そして…ゆっくりゆっくりお日様が顔を出してきた。
思わず両手を合わせる。
昔の人がお天道様とかお日様と「様」をつける気持ちが良く分かる。
1/3の確率。一回目で拝めた。涙が出た。
夜中のおばちゃんの寝返りの恐怖は、すっかり忘れていた。