「チッ、チッ、チッ、チッ、チッ」
おとといの夜、珍客が我が家にやってきた。
秋の虫らしい。
「チッ、チッ、チッ、チッ、チッ」
玄関の方向から聞こえる。
近づくと、チッ、チッ、チッ……と止まる。
で、またしばらくすると、
チッ、チッ、チッ、チッ。
可愛い音。秋の虫はコオロギくらいしか思いつかない。
でも、コオロギとは明らかに鳴き声が違う。
どこにいるのか姿は見せない。
そして昨日。
「家で鳴いている虫ね、“カネタタキ”っていうんだって」
息子が教えてくれた。
スマホで母親と音を聞き比べながら調べたらしい。
カネタタキ。ネット図鑑を見ると…褐色の小さいコオロギ。
人家周辺に多く、庭木や生け垣の樹上に棲む。
鳴き声が鉦(カネ)の音に似ていることから
呼ばれるようになったとある。
「チッ、チッ、チッ、チッ、チッ」
昨日は洗面所から聞こえはじめた。
確かに鉦を叩いている音に聞こえてくる。親しみがわいてきた。
家の中を歩くと止まる。
夜遅く、ベッドに入ってからも
「チッ、チッ、チッ、チッ、チッ」
心地良いBGM。
もう2~3日居候してくれるのだろうか。
秋の楽しみのひとつになった。