大人の音楽堂 ブログ
JACKSON BROWNE
2022年06月13日
1974年の「レイト・フォー・ザ・スカイ」。3枚目のアルバムを足掛かりにジャクソン・ブラウンの成功への道が始まります。前の2枚のアルバムも優れているのですがセールス的に伸びなかったわけで、それまでのスタジオ・ミュージシャン起用から、かねてから希望だった自分のバンドを持つことで、環境の変化か、見事なサウンドになっています。スライドギターの名手デビット・リンドレーをはじめ、ラリー・ザック、ジェイ・ワインディング、ダグ・ヘイウッドなどのメンバーが集結。アルバムのカバーデザインの凝ったこと…1950年ころのシボレー・ベルエアが雲の多い空の景色に映えている、あのアルバムです。
ベトナム戦争への反発から生まれた1960年代後半からのヒッピー文化、ラブ&ピースが衰退したころ、ウエストコーストの新しい音楽スタイルを筆頭にいろんなサブカルチャーがブームになります。当時大手レコード会社は第二のLED ZEPPELINを探していたころでしたが、ある程度名前が知られていたデビッド・ゲフィンが時代の風を読み、西海岸ならではのミュージシャンの売り込みをはじめ、アトランティック・レーベルからの援助で自らのゲフィン・レコードを立ち上げ、ジャクソン・ブラウンの他、イーグルス、リンダ・ロンシュタット、トム・ウェイツらドル箱スターたちを次々に送り出し、アッと言う間に世界中に知られるレーベルとなったことは有名な話です。
ジャクソン・ブラウンの「レイト・フォー・ザ・スカイ」はシングルがないのに大ヒット。アルバム単位での評価という、アメリカのシーンでは珍しい現象を起こしました。その後の「プリテンダー」「孤独のランナー」が世界的に大ヒット、その後の「ホールドアウト」では亡くなったリトル・フィートのローウェル・ジョージのことを歌った「オブ・ミッシング・パーソンズ」が胸に響きます。この曲は残された娘さんにプレゼントされました。歌詞を読むと、人生における「家族」がテーマで、あるミュージシャンの死を通じて聴く者のイマジネイションを広げる、とでも言いましょうか、誰にでも当てはまる人生の「光と影」、切なさを感じます。
それとこの方は、「人は自然の中で、その恩恵の中で生きている」。そんな当たり前のことを歌っているとも感じます。非常にナイーブな歌詞なのですが、ライブではかなりハードな面もありソロミュージシャンでありながらインパクトの強いバンド演奏を観ることが出来ます。アコースティックなシンプルな面とアグレッシブな面、うまくバランスが取れています。キャッチーでポップではありませんが、奥深い哲学的で社会派なミュージシャンです。彼のピアノでの弾き語りはジーンときます。ウエストコーストには留まらないアメリカの偉大なミュージシャンなのです。日本のビッグネームのミュージシャンも大きな影響を受けています。
次回はこの流れで「ロギンス&メッシーナ」「アメリカ」のキャッチーな曲をセレクトします。
【今回オンエア】
TAKE IT EASY
LATE FOR THE SKY
RUNNING ON EMPTY 孤独のランナー
HOLD OUT
OF MISSING PERSONS
THE PRETENDER