大人の音楽堂 ブログ
THE BAND
2022年05月30日
大学生のころ映画「ラスト・ワルツ」を観ました。当時の映画館は入れ替えが無かったので、3回観ました。なんて、かっこいいバンドなんだろう。演奏スタイル、楽曲に楽器…ゲストも非常に豪華…。ベースのリック・ダンコは入手したばかりに見えるギブソンのリッパー…ロビー・ロバートソンはフロントにシングル、リアにハンバッキングを斜めにしたカスタムのストラトキャスター、キーボードのガース・ハドソンはRolandのキーボードを斜めにセットしている。キーボードを水平ではなく斜めにセットする人はこの方しか知りません。その後DVD化されて何度も観ました。今回のオンエア後も観ました。酔っぱらいました。音楽の素晴らしさがこの映画にあります。解散コンサートですが、心にしみます。なんてかっこいいんだろう。そんな感想しかありません。シングル・ヘッドのバスドラム、なぜかカバーでおおわれているフルコンのピアノ、でかいオルガン、センスのいいギターアンプ。ミキシングは後に調整されたのでしょうが、とても心地よい。さすがマーティン・スコセッシです。映画の合間のメンバーのインタビュー・トークも興味深いところです。この「ザ・ラスト・ワルツ」すべての音楽ファンに観ていただきたい。空気が音楽を響かせています。こんな音楽が出来るミュージシャン、最高。とても羨ましいかぎりです。時代ですね。
たまに聞く「ミューシャンズ・ミュージシャン」という言葉があります。プロミュージシャンが好むバンドの事です。まさにTHE BANDのことです。1960年代ロニー・ホーキンスのバックメンバーからボブ・ディランのバックバンドとしてその名が広まりますが(当時のバンド名はザ・ホークス)。フォークギターからエレキギターに持ち替えたボブ・ディランは各地のコンサート会場でブーイングの嵐…。アメリカ、ヨーロッパをツアー、しかし1966年、ボブ・ディランが交通事故。彼らは仕事を失います。メンバー5人のうち4人が出身国のカナダに帰ることも考えたかもしれませんが、彼らはボブ・ディランの住んでいたNY郊外のウッドストックで共同生活、有名なBIGPINKという家にスタジオを作り、音楽制作を繰り返す日々を続けます。そして1968年「MUSIC FROM BIG PINK」をリリース。ロックをベースにカントリー、フォーク、R&B、ブルースといったルーツミュージックに傾倒したサウンドがとてもバランスよくかっこいいモノになり話題になります。
映画「イージーライダー」に「ザ・ウェイト」が使われてますますTHE BANDは有名になり、1969年の「WOOD STOCK」に出演。この時あのエリック・クラプトンが「サイドギターでいいのでメンバーにしてくれないか?」と頼んだが却下…その後一時的にボブ・ディランと活動。そして名盤「THE BAND」(ブラウンアルバム)をリリース。名盤です。彼らはバンドアンサンブルより楽曲のメロディーやコーラスを重視。素晴らしいコーラスと各楽器の音色を大切にしていると感じます。当時ありがちな長いギターソロとかはほとんどなし…。そして計算されたアレンジが特長。音楽制作集団なのです。
うまくいっていたバンドでしたが、やはりメンバーの数人にドラッグやアルコールの問題が出てきます。おまけに交通事故…3枚目のアルバムもセカンドアルバムほど評価はされませんでした。しかし、ボブ・ディランの本格的な復活に同行…受けまくります。アルバム「偉大なる復活」でその様子がわかります。是非聴いてほしい作品です。そのころイニシアティブを持っていたギターのロビー・ロバートソンは本来のスタイルでスタジオでの音楽制作を重視していましたが、ツアーを重視するほかのメンバーとの対立が表面化します。しかし「南十字星」というアルバムをリリース、これがなかなかの評価を受けるのですが、ドラッグ問題は解決できずに、バンドは残念ながら…1976年あの「ザ・ラスト・ワルツ」に向かっていきます。
サンフランシスコのウインターランドにエリック・クラプトン、ドクター・ジョン、ニール・ヤング、ジョニ・ミッチェル、ロニー・ウッド、リンゴ・スターにマディー・ウォーターズ、ロニー・ホーキンス、ニール・ダイヤモンド、ポール・バターフィールド、ヴァン・モリソンそしてボブ・ディラン等そうそうたるミュージシャンを迎えて開催された事実上の解散コンサート。まあいろいろな問題があったのでしょうが、素晴らしいコンサートです。この模様はマーティン・スコセッシ監督で映画になり大ヒット。その後ロビー・ロバートソン抜きで何度か活動します。しかし過労とドラックでピアノ、ヴォーカルのリチャード・マニュエルが自殺…しかしサポートメンバーを加えて活動します。ロックの殿堂入りもしますが、ベースのリック・ダンコ、中心メンバーレボン・ヘルムが死去…伝説が伝説になってしまいました。存命のオルガンのガース・ハドソンはソロ・アルバムを出しています。
そしてロビー・ロバートソンは音楽制作等でマルチに活動しています。彼がプロデュースした映画「THE BAND あのころ僕らは兄弟だった」が昨年公開されました。近くでの上映がなかったのでソフト化されて購入しました。少々物足りなさも感じますがとてもいい作品です。音楽制作職人集団で非常にかっこいいライブパフォーマンスのTHE BAND。ルーツミュージックを掘り下げることで新しい音楽を作った「ミューシャンズ・ミュージシャン」なのです。個人的にとても好きなバンドです。
次回は1970年代から80年代アメリカの歌姫と言われた「リンダ・ロンシュタット」の名曲をセレクトします。お楽しみに。
【今回オンエア】
TEARS OF RAGE
THE WEIGHT
I SHALL BE RELEASED
ACROSS THE GREAT DIVIDE
RAG MAMA RAG
THE NIGHT THEY DROVE OLD DIXIE DOWN
UP ON CRIPPLE CREEK