KRY山口放送のアナウンサー
「高橋 裕」のブログです。

ロケットダッシュ男

第43回防府読売マラソン翌朝のラジオ。
リスナーとの電話つなぎコーナーでこんな声が。

「スタートで白い帽子をかぶって猛スピードで
 飛び出す選手がいますよね、私、あの人が飛び出すのを
 毎年楽しみにしているんです!!」

もしかしてロケットダッシュ男のことでは?

「母親と今年もおったっ~!!と言って喜びました」
「毎年、出ました、出ました!!と言って喜ぶのが楽しみなんです」

そのロケットダッシュ男とは、ナンバーカード190番・
大阪市役所から参加の長島潮(うしお)47才。
体調を崩した1回を除き1996年からずっとロケットダッシュに
チャレンジし、今年も成功。

コース外側から一気に飛び出しダントツで走る。

僕は、9年前、彼を取材したのをきっかけに、
ちょくちょく連絡を取り合う仲になった。
そして今年はラジオ中継でその様を実況した。

で、良く視聴者やスタッフから
「どうせ彼は最初だけで途中棄権するんでしょ!?」
という質問を多く受ける。
確かに、1.3キロ地点を見ると、顔も左右に振り息が完全に上がって、
フラフラ状態で先頭集団から一気にこぼれていく姿が今年もあった。

でも、違うです!!
彼は完走するんです!!

長島さんはフルマラソンを2時間40分台で走るランナー。
今大会も2時間48分27秒で177位。
市民ランナーのあこがれである3時間を切る「サブスリー」どころか
2時間40分台というのは相当な走力。
2週間前の福岡国際も2時間45分台で完走している。
実は、彼にとってあのロケットダッシュは、
レース前のウォーミングアップ代わり。
なのでレース前はほとんどアップをしない。
そしてロケットダッシュした後、苦しくなった所で一旦ジョグに戻し、
ようやく彼にとってのフルマラソンがスタート……
ということらしい。

かつて靴を踏まれてロケットダッシュに失敗したレースは調子が上がらず、
その時は途中棄権してしまったらしい。

では、「なぜそんなダッシュをするのか」。
「最初はテレビに映るため」と言う「やっぱり」というきっかけ。
当時、制限時間が2時間50分のエリート大会だった防府読売マラソンに、
出場が出来る記録が出せるようになった1996年、
周囲の人にテレビ中継がある大会に出るよと話すと、
「一回くらいはテレビに映ってね」と言われ、
考えに考えた秘策がロケットダッシュだった。

ただ、
「競技人生をかけて挑む実業団ランナーの皆さんには、
 迷惑という気持ちがあるんで、
 あれをやる以上は必ず完走するんです」
とも話す。
取材で話をする長島さんは、非常に控え目な語り口。
あのロケットダッシュのグイグイいく姿とは対照的。

「必ず完走する」。
これは、1996年に防府でのロケットダッシュを始めてから
貫いてきたポリシーである。

ランナーは走ることで自分を表現すると聞くが、
その表現の仕方はさまざまなのだと思う。

大阪で暮らす彼は、今回の放送は聴けていないが、
このブログでお伝えしよう。
「長島さん!!山口にロケットダッシュの熱烈なファンがいますよ!!」