初霜の取材

2009年11月6日

今週、私は気象予報士の名にかけて

ある勝負を行っていました。



それは11月4日、山口での初霜観測の瞬間を取材する、

というものです。

この日のために、事前に山口測候所に取材の申し込みを行い、

当日は早朝5時に取材開始。

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気象条件的には、強い寒波のあとの放射冷却で

4日の朝は霜が降りるには十分な冷え込みを予想していました。

しかし、例年に比べると半月ほども早く、

また、空気中の水蒸気や地面の状況などによって

十分冷え込んでも、霜が降りるとは限らないため、

「せっかく早起きしたのに、霜が降りなかったら...」と

不安を抱えながらの取材でした。



結果は...



4日の「リアルタイムやまぐち」でご覧頂いた通り、予想的中!

山口測候所での初霜観測の瞬間を撮影することができました。

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私が、なぜ、ここまで初霜の取材にこだわったかというと

2つの理由があります。



1つ目は、霜の観測方法を知ってもらうこと。

今では気温、雨、風など

気象観測の大部分は機械化が進んでいますが、

霜や氷、雪などの観測は、人間が目で見て行います。

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この「目視」の観測が、測候所の大事な仕事。

一見、非常にアナログな方法ですが、

その観測を積み重ねていくことにより、

長い目で見た気候変動を把握するデータになってきます。

山口測候所では43年前から観測が休むことなく続けられていて、

43年前の初霜を観測した日の記録も、しっかり残っていました。

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2つ目は、そんな測候所に、ある時代の波が押し寄せていること。

実は、かつて、測候所は全国に96ヶ所ありましたが、

気象台業務の合理化などの理由で、

近年、測候所が次々に無人化されています。

今では山口測候所を含めて、全国にたった8ヶ所。

しかも、気象庁では来年度中に

全ての測候所を無人化する方針なんです。

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無人化されれば、「目視」の観測はできなくなります。

もしかしたら、あのとき取材した初霜の観測が、

山口測候所の歴史の中で最後になるかもしれません。



現代は、気象観測の大部分は機械で行われ、

コンピュータがほとんどの気象予測を行うことが出来る時代です。

機械の観測のみでも、気象台が発表する防災情報には特に問題はなく、

また直接、防災情報には結びつかない、霜や氷などの観測は

行われなくなるのが時代の流れなのかもしれません。

ただ、これまで多くの測候所職員が

積み重ねてきたデータが途絶えること、

そして、私たちが季節の移ろいを感じる情報が

消えてしまう可能性があることに、少し寂しさを感じます。



ただ、一方で、私にとっては明るい話題もあります。

測候所と同じように、皆さんからも霜や霜柱、山の雪化粧、

そして時雨虹(しぐれにじ)に至るまで

多くの方からリポートを頂いたことです。

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...11/3「リアルタイムやまぐち」で紹介





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...11/4「リアルタイムやまぐち」で紹介





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...11/6「さわやかモーニング」で紹介

気象観測は機械化の時代でも、気象を感じるのは、私たち人間。

皆さんの季節感タップリのリポートも交えながら、

気象の不思議、美しさ、面白さなどを

心で感じることのできる天気予報を目指して

今後も頑張っていきたいと思います。

皆さんひとりひとりが、測候所職員の気分で

季節や天気のリポートをtenki@kry.co.jpまでお寄せ下さい。

お待ちしています!




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