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「亡き妹の詩を書にのせて」 約束の姉妹書展【徳島】(徳島県)



姉妹で県展の特別賞を受賞するなど、書道で切磋琢磨してきた2人による作品展が、5月30日から徳島市の県立文学書道館で始まりました。

病によって旅立った妹との約束の書展に込められた想いを取材しました。

日展会友の書家、森裕美子さんです。

森さんは、県出身の書家・故 勝瀬景流さんに師事し、「森光翔」の雅号で県展の特別賞や、県書道展の大賞を受賞しています。

そんな森さんが今回、書展を開いたのは、三年前に病気でこの世を旅立った妹の富士子さんとの約束があったからです。

2週間前、森さんは実家で今回展示する作品を選んでいました。

(書家・森裕美子さん)
「いっぱいある筒の中身を見ると、こういうものなんですけど」
「妹が書いたものが、ここやこの辺りも整理をして、ナンバリングもしてますけども」
「この中から何点か選んで、記念になるような作品を展示していきます」

富士子さんが書道を始めてから書き残してきた作品、100点以上の中から選んでいきます。

(書家・森裕美子さん)
「これが、小学校6年生の時の新聞で載った分ですね」
「それを置いてあったので、額に入れたりしました」
「若い時からずーっとみていくと、妹の人生というか、この時は忙しかったんだなとか」
「あるいは、集中して書いてるなとか、この線には思いが込められているなとか、そういうものを知ることができます」
「作品を目の前にして、妹と対話しているような、そんな気持ちになります」

富士子さんはコロナ禍で、自宅で闘病生活をしていた中でも、全国規模の書道展に作品を出そうとしていました。

しかし、体力の衰えから、最後まで書ききれない日々が続いていました。

(書家・森裕美子さん)
「ああ、やっぱりもう書けないな、なんて弱気を言ってましたけど」
「ある日、これが最初から最後まで、本当に一生懸命書いたんだと思います」
「姉ちゃん最後まで書けたって、すごい嬉しそうな声で、声を弾ましてたのが耳に残っています」
「3月に入って結果が来て、準大賞に入った」
「それを知って大喜びして、私の大傑作、全身全霊ここに打ち込んだ作品だって、言葉をノートに残しました」

その後、富士子さんは病状が悪化し、亡くなりました。

富士子さんは亡くなる直前に、鉛筆を持って書くことも不自由な中で、詩をノートに書き記していました。

森さんは、妹が残したこの詩を展覧会に向け、妹が使っていた硯と墨で色紙に書いていきます。

(書家・森裕美子さん)
「不自由な身体の周りに花が咲く、今日も咲いたよ幸せの花」

国語を教える高校教師だった富士子さんは、こんな歌も残しました。

(書家・森裕美子さん)
「卒業式、あの生徒もこの生徒も巣立っていく、幸多からんことをただ祈る」
「教員として自分が教えた生徒が、きょう3月1日に巣立っていく」
「それを病室から祈っている心が、本当にこの詩に込められているような気がします」

富士子さんが最後に残した詩は、富士子さんが亡くなった後、病室の整理をしているときに見つかりました。

その時、森さんは妹との約束を思い出しました。

「いつかふたりで姉妹書展をしよう」

(書家・森裕美子さん)
「妹が最後まで筆を持ち続けて作品を制作した、その魅力、書道の魅力を伝えたいなと思って開催を決意しました」

富士子さんが旅立ってから、2025年で3年。

生きていれば還暦の年に、約束の姉妹書展を開催しました。

書道の魅力に取りつかれたふたりの姉妹でつくる「姉妹書展〈約束〉」は、6月1日まで県立文学書道館で開かれています。

(05/30 18:16 四国放送)

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