■若手漁師が新たな漁業のあり方開拓 美波町の「由岐若衆」【徳島】(徳島県)
高齢化や担い手不足が深刻な漁業。
そんな中、若者たちによる新たな挑戦が始まっています。
その名も「由岐若衆」。
美波町由岐の若手漁師らでつくるグループが目指す、持続可能な漁業の未来とは。
■素潜りの若手漁師
(由岐の海士・森本孝司さん(33))
「昔から漁したかった。親がしてたから憧れがあった、漁師に」
美波町の沖合。
素潜り漁をおこなっているのは、由岐の若手漁師、森本孝司さん33歳です。
■狙うのは特産の「アワビ」
狙っているのは、6月に口開けした由岐の特産品「アワビ」。
アワビ漁は、獲り過ぎないよう漁期や時間に制限があり、午前10時から午後1時までの限られた時間の中で獲物を狙います。
(由岐の海士・森本孝司さん(33))
「獲れました、大きいですねコレ」
3時間、海に潜り続けます。
素潜りは、危険と背中合わせの漁。
脱サラし、漁師になって10年の森本さん。
最近、漁場の変化を感じています
■深刻な「磯焼け」
(由岐の海士・森本孝司さん(33))
「海藻がだいぶ減ってますね、最初に比べたら海藻いっぱい生えていたが」
「全然ないところもあるし、アワビの量も減ってきている」
美波町沿岸では、海藻が減少する「磯焼け」が深刻です。
温暖化による海水温の上昇で、アイゴなどの魚が活発になって、海藻がたくさん食べられたり枯れてしまい、結果、海藻を主食とするアワビなどが減少しています。
■「水産資源を未来へ残したい」
(由岐の海士・森本孝司さん(33))
「将来があるので、何年も漁師するので、残していきたいですね、資源を」
想いを同じくする、由岐の若者たちが立ち上がりました。
■若手漁師7人が「由岐若衆」設立
その名も「由岐若衆」。
2025年発足した、30代が中心、7人の漁業グループです。
伝統漁法を受け継ぎ、由岐の漁業を未来へつないでいくことを目的にしています。
(記者)
「普段どんな話していますか?」
(由岐若衆リーダー・湯浅真さん(33))
「海士は個人でするから、きょう獲ったんぐらい」
(由岐若衆・筋野栄作さん(34))
「あのアナウンサーかわいいな(とか)」
■未利用魚の活用や海の清掃
「由岐若衆」の活動は、海藻を食べて増えすぎている「未利用魚」の有効活用や、海を守るための清掃など多岐にわたります。
グループ化することで、これまで個人ではできなかった活動を積極的におこなっています。
さらに。
■独自の販売ルート
(由岐若衆リーダー・湯浅真さん(33))
「仲買に買ってもらうだけでなく、自分たちで売る」
水揚げした海産物をグループの強みを活かし、競りで買い上げもしています。
そして独自のルートで高く売り、漁師の収入増加につながる活動もしています。
(由岐若衆リーダー・湯浅真さん(33))
「僕らが獲る魚も資源なので、管理しながら獲り過ぎないように、ちょっと獲って高く売って儲ける」
(由岐漁協・兵庫賢美 組合長(64))
「後継者がこれだけおってありがたいこと、がんばってくれているのは、うれしく思っている」
■深刻な高齢化・担い手不足
県内の漁業は、高齢化や担い手不足が深刻です。
2023年11月時点の県内の漁業従事者は1636人で、2018年から2割も減少し、過去最少となっています。
さらに、65歳以上がその半数以上をしめています。
(由岐漁協・兵庫賢美 組合長(64))
「頼もしい、地域も過疎が進んで基幹産業を支えてくれる子がおったら、地域活性にもつながる」
「がんばってもらいたい」
■メンバー最年少の17歳
由岐若衆の最年少メンバーは、津田幸志朗さん、弱冠17歳。
親の影響で漁に関わりはじめ、2023年度にとくしま漁業アカデミーで学び、漁師を志しました。
(由岐若衆・津田幸志朗さん(17))
「(由岐若衆は)人数少ないので結構仲良い感じ、「あそこ居たよ」とか言ってくれる」
「結構みんなフレンドリーでやりやすい」
(由岐若衆・津田幸志朗さん(17))
「いっぱい獲れることが(漁師の)やりがい」
「きょうは結構いた方なので、気持ちも楽で良かった、獲れん時は帰りたくて仕方ない感じ」
天候や海の状況に収入が左右される漁師は、決して楽な仕事ではありません。
新しく漁業を始める人にとっても、「由岐若衆」というグループがあることは大きな支えとなっています。
(由岐若衆・津田幸志朗さん(17))
「みんなについていくので精一杯」
(記者)
「漁師は楽しい?」
(由岐若衆・津田幸志朗さん(17))
「めちゃくちゃ楽しい」
(由岐若衆リーダー・湯浅真さん(33))
「自分たちも下の若い人があんまりいないので」
「こういう活動を通し、県外でも町外でも漁師じゃない人でも『案外、漁師儲かってるんだ』とか『面白そうだ』とかで」
「やりたい人がいたら、やってみてもいいのでは」
アワビやイセエビが獲れる、豊かな漁場が広がる美波町由岐。
それを守り、つないでいこうと奮闘する由岐の若衆たち。
持続可能な未来へ向けた、県内漁業のモデルケースとなるか。
彼らの活動に今後も注目です。
(08/28 18:21 四国放送)
・TOP
Copyright(C)NNN(Nippon News Network)