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「贋作」一般公開を終えて 担当者が苦悩と今後を語る【徳島】(徳島県)



県立近代美術館が6700万円あまりで購入し所蔵していた絵画が贋作と判断された問題で、一連の経緯を説明するためとして、この絵画の一般公開が5月から行われました。

一般公開の終了を受けて、近代美術館の担当者に、県民の反応や絵画を今後どうするのか、聞きました。

■1999年に6720万円で購入

こちらの絵画は、県立近代美術館が、ジャン・メッツァンジェの作品「自転車乗り」として、1999年に6720万円で購入しました。

■ベルトラッキによる「贋作」と判断

2024年夏に贋作疑惑が浮上し、県立近代美術館では2025年3月調査の結果、ドイツ人画家・ヴォルフガング・ベルトラッキ氏による「贋作」、偽物と判断したと発表しました。

■「贋作」を無料公開 展示解説も

県立近代美術館では、5月11日から6月15日まで問題の絵画を展示し、14回にわたり展示解説を行いました。

解説を担当したのは、竹内利夫上席学芸員です。

■「苦悩以外の何ものでもない」

(森本アナウンサー)
「今回の解説、非常に苦悩があったんだろうなと思ったのですが」

(県立近代美術館・竹内利夫 上席学芸員)
「もちろん苦悩以外の何ものでもない、たくさんの人に聞いてもらいたくて説明したくて実施した」
「合計のべ1000人ぐらいの人が聞きに来てくれて、関心が高い」
「税金で間違ってしまってという怒りや、どうするつもりだっていう気持ちは、全員にあると思います」
「その前提の上で、説明させていただけるっていうこと自体、ありがたいというのは変ですが、感謝しています」

ドイツ・ベルリン州警察の捜査結果や、ベルトラッキ氏自身の証言などから、贋作と判断されたこの作品。

作品を購入した26年前は、ジャン・メッツァンジェの作品をまとめた総目録が編纂されていた時期でした。

(県立近代美術館・竹内利夫 上席学芸員)
「この絵を総目録に載せますと、その編集している人が証明書を書いてくれていた」
「いわゆる鑑定書としていたメッツァンジェについて、一番たくさんの絵の情報が集まって」
「鑑定しているところからのお墨付きをもらっていた。鑑定の人も騙されていた」

■「本物はないんです」

贋作問題に対する県民の関心は高く、展示解説の際には様々な質問が投げかけられました。

(県立近代美術館・竹内利夫 上席学芸員)
「本物はどこにあるんですか?という質問もある」
「本物はないんです」
「これはどこにもない、贋作者が空想で描いた絵」
「元々本物もない絵ですし、贋作者が空想して作ることに腕が長けていた」
「でも、非常に悔しいし、皆様にも申し訳ない思い。この絵画はそういう代物」

(森本アナウンサー)
「メッツァンジェの作品の中で、こういう作品もあるだろうなっていうことで、ベルトラッキがゼロから作り上げた?」

(県立近代美術館・竹内利夫 上席学芸員)
「ゼロからというか、例えば自転車乗りでも3点4点と、似た構図で競輪選手を描いている」

(森本アナウンサー)
「メッツァンジェが?」

■専門家をだます巧みな手法?

(県立近代美術館・竹内利夫 上席学芸員)
「元の絵描き師自身がいろいろと工夫しながら、同じ題材で何点か描いている」
「贋作者はそれを参考にして、良いところどりというか」
「何点か描いていったのなら、次にこんな絵を描いたかもしれないな、ということででっち上げていく」
「逆に作家とかモダンアートのことを知っている人ほど、そういうのも描くかもなと思わせるようなものをでっちあげるのが上手い」
「全く見たこともないようなものを描いても、誰もメッツァンジェの絵と思ってくれる人がいないので」
「ゼロから生み出したのではない」

(森本アナウンサー)
「私たちのような素人ではなくて、ある意味、専門家をだますための手法のような気がする」

(県立近代美術館・竹内利夫 上席学芸員)
「素人・玄人関係なくみんな騙される。人の気持ちをもて遊ぶ」

■「科学調査も」贋作との向き合い続く

(森本アナウンサー)
「どんな質問が多かった?」

(県立近代美術館・竹内利夫 上席学芸員)
「いろいろたくさんある」
「『贋作といってもやっぱり上手やけど…』というあたり」
「絵としてどう見たらいいのか、こういう質問があった」
「どういう経路で、こういう手口でしたと言っても、それでもどうして見抜けなかったのか」
「どういう手順で購入に至ったのかを知りたいという話」

これからの対応については…。

(県立近代美術館・竹内利夫 上席学芸員)
「正直決まっていないことばかり」
「贋作の疑いという時点で、公立美術館なので、活用は取り下げるということは決めており、それは変わらない」

贋作問題への対応について県立近代美術館では、引き続き科学調査を行う一方、弁護士と相談するなどして、慎重に検討していきたいとしています。

(06/25 18:23 四国放送)

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