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「植え付け1回・収穫2回」 コメ不足の今こそ「再生二期作」【徳島】(徳島県)



価格高騰による備蓄米の放出など、様々な動きを見せている米。

そんな米の収穫量を上げようと、新技術の「再生二期作」に取り組む、小松島市の農家を取材しました。

(森本真司アナウンサー)
「こちらがきょう取材に伺う、樫山ファームさんですが」
「このファームという言葉がないと、なんの会社なのか分からないぐらい、おしゃれな」
「一見、デザイン会社かなと思うようなところですね」
「お邪魔します、よろしくお願いします」

小松島市坂野町で農家を営む、樫山農園です。

従業員約50人が、県内様々な場所で米やトマト、小松菜の栽培を行っています。

案内してくれるのは、樫山農園で米を担当している堀江佑輔さんです。

(森本真司アナウンサー)
「え、パソコンが」

(樫山農園 米担当・堀江佑輔さん)
「デュアルモニターで」

この事務所では、会社全体の出荷業務や人事の管理をしています。

(森本真司アナウンサー)
「おしゃれですね」

(従業員)
「よくIT企業に来たみたいって言われます」

そんなおしゃれな事務所からすぐのところにある田んぼでは、米の田植え作業が行われています。

(森本真司アナウンサー)
「何をつけてる」

(樫山農園 米担当・堀江佑輔さん)
「トランシーバーです、オペレーターとこれで繋いで」

このトランシーバーは、田植えをする人と準備をする人が無線でやりとりし、効率化を図るためにつけています。

このような様々な最新技術を取り入れ、挑戦を続ける樫山農園が今力を入れて取り組んでいるのが、「再生二期作」です。

(森本真司アナウンサー)
「普通の米作りをしている?」

(樫山農園 米担当・堀江佑輔さん)
「そうです。コシヒカリなんですけど、再生二期作の準備を取り組んでいます」

(森本真司アナウンサー)
「再生二期作?」

「再生二期作」は、茨城県の農研機構が発表した技術で、温暖化を活かして2回収穫する技術です。

(森本真司アナウンサー)
「2期目って、何月から何月」

(樫山農園 米担当・堀江佑輔さん)
「2期目っていうのは、2回刈り取るっていう意味なんです」
「なので植え付けは1回、収穫は2回ということです」

(森本真司アナウンサー)
「まったく勘違いしてました」

(樫山農園 米担当・堀江佑輔さん)
「1回植えたものを、2回収穫する技術なんです」

収穫の時期が来たら、株本から40センチメートルの高い位置で、1期作目を刈り取ります。

すると、切り株に蓄積されたでんぷんや糖などで再生が促され、2期作目の稲が生えてきます。

しかし、数年前までは十分な成長が得られませんでした。

(樫山農園 米担当・堀江佑輔さん)
「お米っていうのは、穂ができてからだいたい1000度の積算温度がないと熟れてこない」
「9月に入ると秋雨前線が始まって、気温が寒くなって1000度に達さないので」
「出来たとしても、すごく小さい小粒のお米ができる」

しかし、近年は温暖化が進み、十分な温かさが確保できたことによって、再生二期作が可能になりました。

とは言っても、新しい試みには失敗がつきものです。

樫山農園では、2年前から再生二期作に挑戦していましたが、水不足や病気に悩まされ、順調には進みませんでした。

(樫山農園 米担当・堀江佑輔さん)
「徳島は8月以降は用水が止まりますから、基本的には収穫が終わってから用水路見ても水が入ってない」
「そこから秋雨前線が無ければ、天水もないから、干上り状態」
「水がなくなってしまって、病気になることもたくさんある」
「その中でも、水をこのタイミングで入れたらいいとか」
「肥料をこのタイミングで入れたらいいとか、失敗が多かったんですけど」
「成功もあったので、それをバージョンアップさせて、今年は成功させてやろう」

(森本真司アナウンサー)
「成功させるための秘訣は」

(樫山農園 米担当・堀江佑輔さん)
「まず温度。絶対必要です」
「雨、水、あとは特殊なコンバインなんですけど」

再生二期作では、高い位置で刈り取るため、収穫と同時に脱穀できるコンバインは使えず、汎用コンバインというものが必要となってきます。

(樫山農園 米担当・堀江佑輔さん)
「なぜ汎用コンバインじゃないといけないのかというと、普通にお米がこう立ってたときに」
「(従来のコンバインだと)ここから刈り取らないと収穫できないんです」
「ただ、僕が刈り取りたいのはここなんです」
「こんな高いところ」
「収穫物ここだけですから、ここお米ついてませんから」

高い位置で刈り取ることでより成長を促すことができるため、刈り取る位置を決められる汎用コンバインが必要なんです。

樫山農園では、麦の収穫などに元々使用していたため、再生二期作にもすぐに取り掛かれましたが、一般農家にとっては様々な費用がかかるため、新規参入は難しくなっています。

さらに、高齢化などにより農業から離れる人も増え続けています。

(樫山農園 米担当・堀江佑輔さん)
「樫山農園が管理している『ほ場』をアプリで共有していて」
「この黄色のピンがついているところ、新規「ほ場」になります」

(森本真司アナウンサー)
「これだけみなさんが『樫山さん頼みます』ってなった田んぼってことですか」

(樫山農園 米担当・堀江佑輔さん)
「これだけお米の値段が高いのにも関わらず」
「引退されてる農家さんが多いっていうのがすごく分かる」

米の現場で戦う堀江さんに、米を巡る動きについて聞きました。

(森本真司アナウンサー)
「米の価格について、どう思われますか」

(樫山農園 米担当・堀江佑輔さん)
「一番は凄く不安ですね」
「(適正価格は)流通コストも入れたら3000円以上では、4000円は高いと思う」
「備蓄米も確かに出ますし、2000円すごく安いと思いますし、リーズナブルなんですけど」
「あのお米は3年落ちの古古古米ですし、無制限とは言ってますけど制限はありますよね」
「上限があるので次備蓄米がなくなったときに、本来の市場原理によってまた値動きがあるので」
「そういったときに安く提供するために」
「僕たちにできることは、生産コストをどれだけ下げることができるかっていうところが重視される」
「あとはどれだけとれるか、増産っていうのは切っても切り離せない」
「できるだけ、国産で守っていきたいと思ってる」

(森本真司アナウンサー)
「年中あったかい日が多いというのを、逆手に取った再生二期作と同じように」
「今回の米不足というのを、われわれが考える大きなきっかけにしないと、すぐに直るというものではないですね」

(樫山農園 米担当・堀江佑輔さん)
「時間はかかると思いますけど、緊急度は相当高い」

気になるお米の味ですけども、糖度は少し落ちますが、普通に収穫したものと同じように、美味しく食べられるということでこれからに期待していきたいですね。

(06/04 18:42 四国放送)

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