■燃える職人魂 「舞工房グループ」に若手職人集う【徳島】(徳島県)
現在、開催中の大阪・関西万博で世界の注目を集めている、徳島の藍。
その藍や木工など、様々な技術を掛け合わせて作品を作る職人集団がいます。
その名も「舞工房グループ」。
作品に込める職人魂を取材しました。
(舞工房グループ・多田正義 代表)
「やっぱりどれだけ丁寧な仕事をしているか、どれだけ心を込めて仕事をしているか、それが出てくるんですよ」
「ちゃんと梱包している姿を見て、手に触れただけで感じるんです」
「それで開けてみたらやっぱり、ひとつの物を時間をかけて、一生懸命心を込めてしているものはオーラがあるんです」
「そのオーラが出るような、作品作りをぜひやってもらいたい」
藍などを駆使する木工塗装職人、多田正義さんです。
■阿波藍と木の木目
自身の木工塗装だけでなく、様々な分野の職人たちが、身に着けた技術を掛け合わせて独自の作品を作ろうと、15年前、舞工房グループを立ち上げました。
■皿一枚にも5人の職人が
(舞工房グループ・多田正義 代表)
「(この大皿は)だいたい5人ぐらいの職人さんの手で作られています」
「山から切り出してくる人と、製材で引く人、ろくろでくり抜く人、藍染をする人、コーティングをする人」
「(完成まで)2か月ぐらいかかります」
「ほとんどの人が言いますよ、このコップだったら、ちょっとしたものでも1万円ぐらいは付く」
「なんで木なのにこんなに高いんだ、おげっただろ、そんなことをいうお客さんが結構います」
「そんなお客さんには、木のぬくもりとかを説明させてもらう」
「だいたいはわかってくれる、そしたら買うわ、と買ってくれるお客さんも」
■花模様の木目が美しい
(記者)
「こちらは花楠という木で作られた作品。花模様の木目がとっても美しいです」
「蓋を開けてみると、小物入れですね。この仕切りの中に指輪やアクセサリーを入れられそうです」
「この小物入れは2段で出来ていて、仕切りを取るとお弁当箱にもなります」
「2段目の入れ物も外すと…取っ手だけになりました。この取っ手、桜の花が彫られています」
「舞工房の彫刻家、森下さんが糸鋸で掘りました。すごい職人の技です」
長い年月をかけ、積み重なった年輪。
木の成長に時間がかかるように、一人の職人が育つにも時間がかかります。
■30人いた職人も10人に
設立当時、「舞工房グループ」には約30人の職人がいました。
しかし、廃業や引退などを理由に年々その数は減り、現在は10人ほどです。
そんな中、多田さんを慕う若手職人が、工房に集い始めています。
その一人、薄井秀明さんです。
愛知の自動車メーカーで車のデザインを粘土を使って立体化する、クレイモデラーとして35年間勤務していました。
■手作りにこだわる
(舞工房グループ 木工塗装職人・薄井秀明さん)
「最近モノづくり(自動車デザイン)の形態が、フィジカルからデジタルに移っていて」
「手作りっていうところがだいぶなくなってきたので、モヤモヤとしているときに、徳島帰りたいって思いがあって」
藍住町出身の薄井さんは、2年前に早期退職、徳島に帰ってきました。
帰郷後、以前から興味のあった木工の世界に飛び込んで、業界の現実を目の当たりにします。
最終工程である木工塗装は、限られた職人しかおらず、危機的状況だったのです。
薄井さんは、藍染め塗装やコーティング技術を学ぼうと、2025年7月、多田さんに弟子入り。
修行の日々を送っています。
(舞工房グループ 木工塗装職人・薄井秀明さん)
「日々失敗もあれば発見もあったり、その毎日が今すごく楽しくて」
「元いた自動車メーカーだと、日々流しながらという自分がどこかにいたんですけど」
「この歳でチャレンジできる、幸せというのを感じています」
「こういう風に目の模様とかも考えながら、色を付けていかないと」
「この子が活かされるような、色付けをしていかないといけないのが難しい」
御年、78歳の多田さん。
熱心に学ぼうとする薄井さんの姿に、かつての自分を見ています。
■器は目立ったてはいけない
(舞工房グループ・多田正義 代表)
「これもきれいに出てるよ、ものすごくいい色で出てるけれど、あんまり目立ってしまったらいかん」
「これは食べ物を置く器だって、これだけを見せるものではだめで、ちょっと控えめな方が」
もう一人、大阪府出身の藤本博久さんです。
藤本さんは、木の器やスプーンを作る木工職人です。
8年前に神山町に移住し、2024年、自分の工房を立ち上げました。
舞工房グループの展示会にも参加しています。
藤本さんにとって、木を知り尽くした多田さんのアドバイスは、ほかにはない重みがあります。
(木地師・藤本博久さん)
「これの場合、持ち手が枝の形のまんま使っているので」
「木工で加工しすぎると、機械でやっているように見えてしまうので」
「綺麗な部分と外すような、木のもともとの流線美を活かすような」
(舞工房グループ・多田正義 代表)
「この金属が見えるのが気にいらん、せっかく木のぬくもりで全部出来てる、これが邪魔してる」
「木で埋めるとか、接着剤で表面に出ないようにするとか」
「昔の自分の年代の職人だったら、これできるかできないかと言ったら、できないと絶対言わなかった」
「意地でも言わなかった。やったるわと思って」
「できるようになるまでいろいろ勉強して、いろいろ工夫を重ねて」
「できないものを出来るようにしてきた歴史がある、職人はそういう魂がなかったら」
■職人魂
「職人魂」と一言にいうけれど、この言葉を口にできるのは、真に努力を重ねてきた本物だけ。
そんな多田さんの背中を見て、次世代の舞工房グループが育っています。
(09/04 18:45 四国放送)
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