■「成長した娘の姿が見たい」 小児がんと向き合う家族が下した決断とは?【徳島】(徳島県)
2歳で小児がんを患い、奇跡的に回復した女の子がいます。
半数以上が5年以内に再発するという不安がつきまとう中、家族が下した決断を取材しました。
元気いっぱいに踊るこちらの女の子、吉崎うたちゃん・5歳です。
2歳10か月の時に小児がんと診断され、長い闘病生活を送っていました。
(記者)
「がんと聞いてどう思った?」
(吉崎志穂さん)
「信じられないという思いが、一番大きいですかね」
(吉崎輝昭さん)
「家族をもしかしたら失うかもしれないという、恐怖とか不安に駆られました」
うたちゃんの両親、吉崎輝昭さんと、志穂さんです。
(吉崎輝昭さん)
「いつもニコニコして、太陽みたいな家族の中では存在です」
そんなうたちゃんでしたが、ある時からあまり歩こうとしなくなり、おなかの痛みを度々訴えるようになりました。
(吉崎志穂さん)
「小児科にかかって、そこでした血液検査で異常な値が出て、即入院になるっていうので、長い入院生活がスタートした」
診断されたのは、『神経芽腫』という小児がんの一種でした。
腫瘍が発見された時にはすでに、全身の骨や骨髄に転移した状態で、高リスク群のステージ4と診断されました。
(吉崎輝昭さん)
「なにも考えられなかったです」
「絶望に近い感じ」
(吉崎志穂さん)
「まるでドラマみたいやなって」
「他人事みたいな気持ちになった」
高リスクの神経芽腫は、手術や抗がん剤治療、放射線治療などの強い治療を組み合わせた標準治療を受けて寛解できたとしても、半数以上が5年以内に再発し、再発した場合の生存率は1割未満と言われています。
再発した場合の治療方法は定まっておらず、現代の医学では治すことが困難とされています。
(吉崎志穂さん)
「通常は化学療法から始まるところを、(腫瘍が)神経を圧迫しているので、その圧迫をすぐにでも止めたいというので、放射線治療を少しだけして、化学療法もしてっていうのがすぐに始まった」
この頃のうたちゃんは、腫瘍が神経を圧迫し麻痺が出始め、排泄機能に支障が出ていました。
また、麻痺で歩けなくなる可能性も高まっていました。
(吉崎志穂さん)
「検査が進むにつれて、よくない方向にばかり話が進んで行って」
「そうこうしているうちに、足の麻痺が出て立てなくなって」
「膀胱直腸障害も出てきて、今度は排泄機能の方にも影響が出始める」
「治療を急がなければならない」
手術後数日で麻痺が治らなければ一生残る、と言われた足の麻痺は、1か月経っても治りませんでした。
それでも2度の外科手術を受け、ほとんどの腫瘍を摘出し、放射線治療や免疫治療を受け、徐々に痛みからは解放されていきました。
そんな時、足の麻痺にも変化が訪れます。
(吉崎志穂さん)
「2カ月くらいはベッドから降りたことなかったんですけど」
「私が部屋を出るタイミングで、うたも行くと言い出した時があって」
「靴はかせて歩かせてみたら、ゆっくりですけど1歩踏み出せて」
「先生も驚くくらい、奇跡的だって言ってもらえるくらいの回復をしたので」
「本当に何が良かったのか分からないけど、うたの場合は非常に幸運だったなと思います」
退院が見えてきたころには、排泄機能にも回復の兆しが見えてきました。
腫瘍が発見されてから約1年半が経過しての、奇跡の回復でした。
(吉崎志穂さん)
「治ると思うようにしてたんです」
「いつかは歩けると思っていて、やっとこの日が来たという感じで」
「嬉しかったのを覚えています」
(吉崎輝昭さん)
「まさか寝たきりになってしまうんじゃないかという、不安に駆られていたので」
「改善の兆しが見えたときは、本当に嬉しかったです」
劇的な回復をしたものの、時折襲う神経痛、そして排泄機能も完治には及びません。
それでも1年7か月に及ぶ辛く長い治療を終え、4歳になったうたちゃんは無事退院し、両親と入院中に生まれた弟の待つ家に帰りました。
失った家族の時間を取り戻すように、大好きな公園や動物園など、様々な場所へ出かけ、少しずつ日常を取り戻していきました。
しかし、日常を取り戻しても常に再発への不安はつきまとう日々。
そんな中、再発リスクを抑える薬があることを知ります。
(吉崎志穂さん)
「まず薬のことを知った時点で主治医には相談して」
「うたにも使える薬かどうか、有効性はあるのかどうか、信頼できる薬なのかは確認しましたし」
「私自身の方でも勉強して、これはやっぱり飲んだ方がいい薬だと思って」
その薬は「エフロルニチン」という2023年にアメリカで認証されたもので、再発リスク、死亡リスクを大幅に減少させる効果が報告されています。
しかし、この薬を日本で使うには、大きなハードルがありました。
(吉崎志穂さん)
「国内では未承認の薬なので、アメリカにしかない」
「それを手に入れるには、個人輸入しかない」
「その場合は、公的な保険のサポートは受けられないので全額自費になって」
「また為替の影響もうけるので、2025年2月の時点での為替レートで」
「うたに必要な薬の総額は、約6000万円」
はじめはなんとか自分たちで用意しようと模索していましたが、一般家庭の吉崎さんたちには到底用意できる金額ではありませんでした。
それでもどうしても諦めきれず、クラウドファンディングなどで資金を集めることを決意しました。
(吉崎輝昭さん)
「私たちがしなければいけないことなんですけど」
「多くの方に迷惑をかけて、集めないといけないということで」
「正直情けないという部分が強かったです」
「でも、その時になにもしないわけにはいかないなと思って」
(吉崎志穂さん)
「2年間飲む薬なんですけど2年分購入することができない」
「諦めることができなくて」
「凄い葛藤があって、皆さんにお願いするのは違うんじゃないか、という思いもありましたし」
「ただ、どうしても諦めることができなくて、皆さんにこうして支援をお願いする形になった」
10年後、20年後も成長した娘の姿が見たい。
何てことない日常を、ずっと一緒に過ごせたら。
そんな想いが吉崎さん家族を、この決断に導きました。
(記者)
「吉崎うたちゃん、何が好き?」
(うたちゃん)
「踊るのと歌うのが好き」
(記者)
「将来の夢は?」
(うたちゃん)
「アイドルプリキュア」
(吉崎輝昭さん)
「元々明るいので、よくしゃべるので」
「このまま元気にいってくれればなと思います」
「それだけです」
(吉崎志穂さん)
「体に負担のかかる治療をしているので」
「皆と同じような生活とはいかないとは思うんですけど」
「普通に大きくなっていってくれたらなと思います」
クラウドファンディングによる募集期間は、2025年4月12日から6月8日までです。
詳しくは知りたい方は、インターネットで「うたちゃんを救う会」で検索してください。
(04/15 18:45 四国放送)
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