■「一票の格差」「投票率低下」 参院選を前に「合区」を考える【徳島】(徳島県)
7月に予定されている、参議院選挙の「合区」について、あらためて考えます。
こちらをご覧ください。
参議院選挙で合区が採用されている選挙区
2025年の参院選も、2016年から続いている「合区」で行われます。
「合区」が採用されているのは、「徳島と高知」そして「鳥取と島根」の2つの選挙区です。
この合区が採用された背景には、いわゆる「一票の格差」の是正があります。
一票の格差
一票の格差とは、有権者の投じる「票の価値」に差が存在することを指します。
人口が少なく、議員1人当たりの有権者数の少ない選挙区では、1票あたりの価値が高くなり、逆に人口が多く有権者数の多い選挙区では、1票あたりの価値が低くなります。
この格差を是正するために、人口の少ない県同士が隣りあう「徳島・高知」「鳥取・島根」が合区となったわけです。
「一票の格差」は縮小したが…
その結果、導入前に比べ、確かに「一票の格差」はこのように縮小はしたものの、依然として3倍以上という状態が続いています。
こうした状況を有権者はどう見ているのでしょうか。
(県民は)
「ほらいかんな、やっぱり1人くらいは徳島の人がね(出ないと)」
「やっぱり地元が大切、生まれ故郷が大切」
「地元の人になるべく入れてあげたい」
「よくないんじゃないかなやっぱり、徳島は徳島の方が出て欲しいな」
「地元のことは、地元の人でないとダメだと思います」
「単に人口だけをもって、そう(合区に)せざるを得ないというのはわかりますけど」
「地元民からしたら、きっといろいろ思うところがある」
「誰かが出てもらわないと、地元の意見は反映はされないかなと思いますね」
2023年参院選の徳島県の投票率
こちらは、2年前の参院選補欠選挙の県内の投票率です。
徳島出身の候補者が不在だったこの選挙では、「23.92%」と、過去最低を更新しています。
県民の声にもありましたが「自分たちの意見が届かないのではないか」という不安が、投票率にも表れているように思えます。
こうした中、2025年4月、県内では新たな動きがありました。
(徳島弁護士会・志摩恭臣 弁護士)
「たまたま一番(人口が)下位4つの県が隣同士で」
「よく似た人口規模だったから、安易に合区に飛びついたけど」
「これを投票価値の平等の特効薬として使うのは、もう無理なんです」
徳島弁護士会では、合区の対象地域で投票率が低下したり、無効票が増加しているのは、有権者が「自分たちの代表を満足に選ばせてくれないと感じている」からだと指摘。
「公務員選定権」や「国民主権」の侵害にあたり、憲法違反の疑いがあるとして、国に合区解消を求める「意見書」を提出しました。
そして、「一票の格差」については…。
(徳島弁護士会・志摩恭臣 弁護士)
「投票価値の平等自体を、われわれも無下にするつもりはない」
「当然それが重要だということ自体、大前提としたうえで」
「都道府県単位で選挙区を維持する限りにおいては、投票価値の平等というのは、制約を受けざるを得ない」
国民が選挙権を行使しやすくするためには、ある程度の制約は仕方ないと主張しています。
徳島弁護士会の大西聡弁護士は、第1回の合区選挙に立候補し、合区選挙を経験した1人として、合区の解消を強く訴えています。
(合区選挙を経験した・大西聡 弁護士)
「本当の高知のことどれだけ知っているかって、これ知らないんですよ」
「向こうもこっちのこと分からないし、こっちも高知県のことがよく分からない」
「これではなかなか、そこの(地域の)問題点を吸い上げて国会に反映するのは制約があるなと」
1日200キロ以上の移動も経験した大西弁護士。
同じ四国とは言え、県民性や文化の違いを感じたといいます。
(合区選挙を経験した・大西聡 弁護士)
「広さとか距離があるだけの問題ではない。強い壁がありましたね」
「大きく四国はひとつだって考えもあるんですよ。しかし、具体的にそこに入っていくと、やはり違いますよね」
「特に徳島・高知・愛媛・香川って、全部山地とか山脈で隔てられてるんですよ」
「ひと昔前は、なかなか交流自体も少なかったと思うんですよね」
「そういう中で出来上がった文化なので、違って当然で」
自身の経験から、今回の意見書の作成にも大きく関わったという大西弁護士。
遅々として進まない合区解消に向け、議論を巻き起こしたいと話します。
(合区選挙を経験した・大西聡 弁護士)
「みなさんで議論を深めてもらう。そして今の合区制度、こういう問題点がある」
「憲法的にはこういう問題があるんじゃないか」
「そういった形で議論をして、投票価値の平等は大事なんですよ」
「大事なんですけど、それ一辺倒的に来ていたのを少し立ち止まって考えると」
「(意見書を)よりよい制度改革につなげてもらえたらという思いがあります」
2025年の参議院選挙に立候補を表明しているのは、現在のところ高知出身の候補者ばかりで、引き続き、県内の投票率低下が懸念されています。
徳島弁護士会によりますと、弁護士会が合区反対の意見書を提出するのは全国で初めてとのことです。
この意見書が、全国で「合区制度」の在り方を考えるきっかけになるのか、今後の展開が注目されます。
(06/06 19:16 四国放送)
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