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「葉っぱ」と歩んだ生涯 横石知二さん逝く【徳島】(徳島県)



料理に彩りを添える「つまもの」。

このつまものを地域とつなげることで大きなビジネスに成長させ、上勝町の名を全国に広めた男性が8月、亡くなりました。

その男性は横石知二さん。

まさに「葉っぱ」と歩んだ生涯でした。

(いろどり農家・針木繁美さん(78))
「長い間お世話になりました。それだけ、もう言葉は出ません」

■すい臓がん 66歳で逝く

横石知二さん。

8月8日、すい臓がんのため66歳で亡くなりました。

■4人の農家と「葉っぱビジネス」スタート

1958年に徳島市で生まれた横石さんは、県農業大学校を卒業後、当時の上勝町農協に就職。

職員時代の1986年、町内で採れる葉っぱを日本料理の季節感に欠かせない「つまもの」として出荷する「葉っぱビジネス」を、4人の地元農家とスタートさせました。

■きっかけは大阪の料理屋で…

(横石知二さん(当時32歳))
「大阪の料理屋さんで隣に座っていた若い女の子が、料理そのものの素材より、飾られていた彩りで非常に話がたくさん出ていた」
「今の時代若い子は(彩りに)関心があるんだなと」
「これを商品として開発すれば、非常にヒットするんじゃないか」

■上勝町の名を全国に広める「いろどり」

「株式会社いろどり」が1999年に上勝町の第三セクターとして設立され、横石さんは2009年に社長に就任。

初年度100万円だった売上げを、2016年には2億6000万円にまで成長させ、上勝町の名を全国に広めました。

■いろどり農家が振り返る

(いろどり農家・針木繁美さん(78))
「最初は男の人も反対してた、葉っぱ(ビジネス)はおかしいように言われた」
「だいぶ儲けるようになって、男の人も(いろどり農家を)してくれるようになった」

そう語るのは、いろどり農家の針木繁美さん 78歳。

義理の母親、ツネコさんもいろどり農家で、親子ともに横石さんとは長い付き合いでした。

(いろどり農家・針木繁美さん(78))
「(横石さんは)気さくな方で、うちとは親戚みたいな感じで付き合っていた」
「おばあちゃん(ツネコさん)は(横石さんを)孫のように思っていた」
「最初から病気というのは聞いていましたけど、やっぱり悲しい」

■命日は8月8日「葉っぱの日」

横石さんが亡くなった8月8日は「葉っぱの日」。

横石さんから14年間指導を受けて、社長の座を受け継いだ、いろどりの粟飯原啓吾社長は…。

((株)いろどり・粟飯原啓吾 社長(36))
「本当に横石さんらしいというか、葉っぱの人生だったと思う」
「8月8日に亡くなられたというのも、何か運命のようなものを感じる」
「一言でいうと大らか、仕事が大好きで、365日ほとんど休むことなく仕事をしていた」

■世界も認めたビジネスモデル

横石さんは、2007年に発行されたアメリカの雑誌『ニューズウィーク』日本版の、「社会貢献をしながらも利益を上げている世界を変える社会起業家100人」に選ばれました。

葉っぱビジネスに着眼し、過疎の進む地域の活性化に貢献した点が評価されました。

■映画化、サミットでも

2012年には、横石さんと葉っぱビジネスをモデルにした映画「人生、いろどり」が制作されました、上勝町で開かれた試写会では横石さんが、感極まる様子も。

(横石知二さん(当時54歳))
「前にお世話になった方々が、並んでくれています」
「本当に感慨深いというか、いろんな方に世話になってこの映画ができて」
「みなさんが元気になってきたということで」

また、北海道で行われたサミットのプレイベントに、いろどりがつくる緑の葉っぱが使われたり、世界各国からいろどりの生産農家への視察が相次ぐなど、横石さんが生み出した「葉っぱビジネス」は日本全国、そして世界へと、徳島の魅力を発信しました。



■横石さんが残してくれた「財産」

しかし、いろどり農家の減少や高齢化など、葉っぱビジネスを取り巻く課題は少なくありません。

それでも、みんなで一丸となって、これからもいろどり事業に取り組みます。

すべては、横石さんが残してくれた「いろどり」を引き継いで行くため、さらに成長させるため…。

((株)いろどり・粟飯原啓吾 社長(36))
「葉っぱビジネスを続けていくこと、いろどり事業を続けていくことが」
「この町にとっても、すごく大事なことだと思っているので」
「横石さんが残したものを引き継いで、私もしっかりやっていきたい」

(いろどり農家・針木繁美さん(78))
「(いろどり農家は)ありがたい仕事、上勝町全体を変えてくれたような気がする」
「横石さんが言ってたことを、たまに思い出しながら(いろどり農家を)していきたい」
「横石さんが残してくれた財産だから。」

「ありがとう横石さん」

(08/27 18:17 四国放送)

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