■20年ぶりに出陣した女性騎馬武者｢ずっと待っていた｣…相馬野馬追に新たな歴史刻む 福島(福島県)
今年の｢相馬野馬追｣は女性の参加条件を撤廃し､出陣した女性騎馬武者は過去最多となりました｡その中で20年ぶりに出陣を果たした一人の女性がいます｡この日をずっと待ち望んでいた女性の思いを取材しました｡
高く打ち上げられた旗を奪い合う｢神旗争奪戦｣｡旗指物をなびかせた騎馬武者が速さを競う｢甲冑競馬｣｡国の重要無形民俗文化財に指定されている相馬地方伝統の祭り｢相馬野馬追｣です｡去年は猛暑と熱中症を避けるため開催時期を5月に前倒し｡今年はこれまで｢未婚の20歳未満｣としてきた女性騎馬武者の参加条件を男女平等などの観点から撤廃することに｡今年の女性騎馬武者は記録が残るなかで最も多く､20歳以上の8人を含む40人です｡その中で20年ぶりの出陣を果たした一人の女性…細川美和さん（39歳）
■細川美和さん
｢20年ずっと待っていたので､やっと来たかという感じ｣
祭りまで3週間を切ったこの日｡実際に祭りが開かれる会場で馬の感覚を確かめるなど準備を進めます｡
■細川美和さん
｢怖くない､大丈夫､怖くない｣
細川さんは飯館村にある牧場の一人娘で生まれた時から馬と一緒に暮らしてきました｡
■細川美和さん
｢一人っ子なので､馬が兄弟みたいな感じで育った｣
この牧場では毎年､相馬野馬追に出陣する馬70頭近くを飼育し､貸し出しています｡
■細川美和さん
｢迫力があるし､ｻﾑﾗｲとしてみんな甲冑を着て馬に乗る､人馬一体｣｢すごいお祭りだなと思った｣
｢いつか私も祭りに出たい｣そう思うようになり､6歳の時に初陣｡そこから､毎年､出陣してきました｡
■細川美和さん
｢野馬追がなかったら1年終わるの嫌になる､人生そのもの｣
ただ…
■細川美和さん
｢本当に最後なんだと､悔しさでいっぱいだった｣
20歳になり､年齢制限で出陣ができなくなった細川さん｡それでも祭りに関わり続けたいと､出陣する騎馬武者たちをｻﾎﾟｰﾄしてきました｡さらには…
■細川美和さん
｢いつか女性も（年齢制限なしで）出られるようになる､でも未婚でないと出られない話があって､出たかったし､一か八か､籍を入れないで｣
一時期､年齢制限のみ撤廃が検討されたこともあり､｢何としても再び出陣したい｣と夫とは籍を入れずいつになるかもわからない“その日”を待ち続けました｡そして､今年｡
■夫 田村博之さん
｢一緒に出られるのは嬉しい｣｢2人で御神旗取れたらいいね｡2人で（羊腸の坂）上がって｣
制限が撤廃され､20年ぶりに再び出陣できることに｡祭り当日｡
細川さん｢あ､こんなだった｡｣女性｢そうだよ､20年ぶりだとさ､浦島太郎状態だべ｣
20年ぶりに甲冑を身にまとうと…これまでの思いがこみ上げます｡
■細川美和さん
｢待ってたという感じ｣｢着ると色々昔を思い出す､懐かしいというか｣
高まる気持ちを抑え､一人の侍として､およそ400騎の騎馬武者と共に祭りの会場となる｢雲雀ｹ原祭場地｣に向けて､出陣しました｡
会場で始まったのは…祭り最大の呼び物｢神旗争奪戦｣｡高く打ち上げられた｢御神旗｣を大勢の騎馬武者たちが奪い合います｡その中には､細川さんも｡鞭を振りかざし旗を奪い合う姿は､まさに“勇猛果敢”｡
■細川美和さん
｢もうとってやろうという気持ち｣
そして､見事｢御神旗｣をつかみ取り､羊腸の坂を駆け上がります｡20歳以上の女性騎馬武者として初めて｢御神旗｣を取り､新たな歴史を刻んだ細川さんに会場からは大きな拍手が送られました｡
♪会場のｱﾅｳﾝｽ｢今羊腸の坂を降りてきたのは中ﾉ郷細川武者､女性武者ですが､本年度女性の出場制限を撤廃したことで､出場されました女性武者です！（拍手）｣
女性騎馬武者の活躍もあり､会場の熱気は最高潮に｡
■訪れた人は
｢神旗争奪戦で女性がとるなんて､こんなことあるんだと思って､びっくりした すごいなと思った｣｢素晴らしい｡今後もどんどん女性に参加してもらって､もっと盛り上げてもらいたい｣
無事に凱旋した､細川さん｡
■細川美和さん
｢もう嬉しいの一言｣｢一人では出られない祭りで､かなりｻﾎﾟｰﾄ､周りの人のお手伝いとかあって､無事終わってありがとうと言いたい｡｣
衣装を仕立てるなど初陣の時から支えてくれた2年前に亡くなった母への思いも｡
■細川美和さん
｢御神旗をとった姿を見せたかった｡でも無事にけがなく（帰って）来れたのも天国の母が見守ってくれたからだと思う｣
時代とともに開催時期や出場条件が変化してきた相馬野馬追｡変わるものがある一方で､変わらない騎馬武者たちの思いがあります｡
■細川美和さん
｢年齢問わず､いろんな女性に出てもらって､相馬野馬追を盛り上げ欲しい｣｢おばあちゃんになるまで出たい｣
(05/29 19:00 福島中央ﾃﾚﾋﾞ)
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