■災害時でも“移動式水洗トイレ” きっかけは震災…研究者の思い 福島(福島県)
災害などで停電や断水が起きても使える「水洗トイレ」が福島県で開発されお披露目されました。
震災・原発事故から14年、この開発に賭けた研究者の思いに迫ります。
郡山市の日本大学工学部。
今月11日、学内で、あるトラックがお披露目されました。
屋根に太陽光発電パネルが置かれた以外は普通のトラックですが…実は!
*野尻英恵キャスター「こちらのトラック、搭載されているのは水洗トイレです。しかも太陽光発電を使って水を繰り返し浄化、再利用することができます。そして仮設トイレというイメージではなくて、なんと温水洗浄もついていて快適につかうことができるんです。」
お披露目されたのは、災害などで停電や断水が起きても使えるという移動式の水洗トイレです。
日本大学工学部発のベンチャー企業「e6s」が開発したもので、その仕組みは…
*日本大学工学部 中野和典教授「ここにある便器は普通の水洗トイレです。ここで用を足したとします。流したものが固液分離ユニットに来て、この白い箱の中で濾過が行われる。白いロールが不織布といわれるもので不織布を水だけが通ります。固形物はこの上に残って、これはこちらでロールにまかれる形で汚物は回収される。ここで濾過したお水はまたこちらに戻りまして、実は3つの引き出しの中には活性炭が入っていまして、トイレに流した水の色とにおいを3つの活性炭処理でとってしまう。そうやって色とにおいがとれた水がこの再生水タンクに入ってくるのですが、このタンクの中に塩素剤が入っていてここで消毒が行われると。」
一度に大量の水を使用する水洗トイレ。
その水を浄化し循環させて、再利用できる技術を確立するまでには10年以上を要しましたが、そこには研究者・中野和典教授の強い思いがありました。
*野尻キャスター「開発のきっかけには先生自身の苦しい経験があったんですよね…」
*中野和典教授「そうですね、東日本大震災を私自身、仙台で経験したことがこういうシステムの開発のきっかけになっていますね。断水が続いたので自宅の水洗トイレが使えない。それでトイレが用意されている仮設トイレに行くと行列している、ゆっくりおちついてトイレができないだけでもストレス。トイレに行かないためには飲まないほうが良いのでは、食べないほうが良いのではとなってしまう。」
自然の浄化機能も研究してきた中野教授。それを活かし、花壇の植物を使ってトイレの水を浄化するなど実証を重ねてきました。
そして、震災から14年、中野教授のあの日の思いがこうして形になったのです。
ただ、複雑な思いもあります。
*中野和典教授「ずいぶん時間がたってしまって、14年もたったので、ちょっと遅すぎた。ついにという気持ちはもちろんある。能登半島の地震とかに間に合えばよかったなという思いのほうが今強い。」
研究を続ける中でも全国で相次ぐ災害。中野教授は一日も早くこの技術を世に送り出したいと考えていました。
*中野和典教授「トイレの問題というのが、特に能登半島(地震)は水道の復旧が遅れてトイレの問題が注目された。このマイナスの経験をぜひプラスに変えてほしいですよね。災害はできれば起きてほしくないがこの車が活躍するシーンは目に浮かびますか?実はいろいろなイベントに持って行って使っていただいて、こんなトイレカーができたというのもやっている。災害はいつか起きてしまうが、非常時ではなく平常時も活躍できるのが大きいかなと思っている。まずは皆さんにこういうものがあるということを知ってもらえると良いですよね。」
被災地・福島の教訓と技術が生んだこの移動式の水洗トイレ。
開発したベンチャー企業「e6s」では今後、自治体や企業はもちろんイベント向けなどにも販売していくということです。
(09/24 18:55 福島中央テレビ)
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