■「ALSの患者の役に立ちたい」自らALSと闘いながら、自分らしく生きる医師 福島(福島県)
あすから、日本テレビ系列では24時間テレビが放送されます。ことしのテーマは、「あなたのことを教えて」です。全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病、ALSと闘いながら、自分らしさを失わず生きる一人の医師を取材しました。
■木村守和さん
「これまでの人生の中で最も厳しい試練ですが、突然死よりはましと考えようと自分に言い聞かせました」
いわき市の木村守和さん(65歳)。おととし11月、ALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断されました。今年3月に気管の手術をし、もう声を出すことはできませんが、手術前に録音した自分の声を使う人工音声で会話をしています。
■木村守和さん
「64歳の頃にALSを発症しましたが息子は大学生、自立するのを見届けたい。娘たちの今後と孫の成長を見たいと思い、妻の支えもあり、気管切開を含む医療行為を受けることにしました」
ALSは運動神経が破壊され、全身の筋肉が萎縮する難病です。根本的な治療法はなく国内には1万人、県内には170人ほどの患者がいると言われています。
■木村守和さん
「私は地域医療と医師会活動に強い思いで取り組んできましたので、ALSに罹患したときに何らかの活動を継続したいと思いました」
木村さんの職業は“医師”。長年いわき市の診療所で、地域医療に取り組んできました。
■2021年8月コロナ禍で会見する、いわき市医師会 木村守和会長(当時)
「いわきの住民の健康が守れるか、いわきの医療を守れるか、その分岐点に来ている」
コロナ禍では最前線で感染対策に取り組み、医師としてALSの患者を診たこともあります。
■木村守和さん
「私は医師としてALSについて知識があり、自分の病状について理解は早いのだと思います。その立場から、今後ALSになる方のために役に立つことをしたいと思っています」
先月、ケアマネージャーや保健師などおよそ100人が集まった研修会。
■講演会で自動音声で話す 木村守和さん
「病気を疑った症状は、8月にギターの弦を左手の指で押さえられないことでした」
木村さんが登壇し、これまでの病状やALSの患者として感じていることを伝えました。
■講演会で自動音声で話す 木村守和さん
「僕が無表情になっても、感じている考えている、話し合いたい、心を通わせたい、会うことをためらわないで話しかけて欲しい」
会場には、医療従事者の卵も。
■福島県立医科大学で理学療法士を目指す学生は…
「医師としての立場と当事者としての立場、両方の立場からALSを見ていたので、医療従事者の知識だけでは取り入れられない知識なども学ぶことができたので非常に有意義な機会になりました」
「これから理学療法士として働く上で、とても貴重な経験になったと考えています」
木村さんは、ほかの患者との交流会にも足を運んでいます。交流会を主催した長谷川さんは、患者でもある木村さんだからこそ伝わる言葉があると話します。
■日本ALS協会福島県支部 長谷川秀雄事務局長
「木村先生はALSの方の往診もしていたので、往診をしていた方がALSを発症するというのは全国的にも聞いたことがなかった。患者家族交流会にも去年と今年2回参加してもらって、患者さんからすると『ええ、医者の先生なの?』とびっくりされて、すごく発言に重みがありますよね。(ALS患者は)本当に絶望感にとらわれる方が多くて、心の葛藤を訴えてくる方が多いですね」
■木村守和さん
「趣味はクラシックやジャズの音楽鑑賞で、テレビの将棋番組を眺めています」
ALSは発症しても、体の感覚、視力や聴力、内臓機能などは保たれます。木村さんにとってクラシック音楽と時折の晩酌が、変わらない生活の楽しみです。
■妻・啓子さん
「自分の生き方ですね、めげることなく前を向いて進んでいくという姿は、今までとあまり変わらない。なったらしょうがないという感じで、前を向いてしっかり自分で考えて前へ進んでいくというのは、すごいなと思ってます」
たとえ難病に侵されても、変わらないものがあります。木村さんは、これからも医師として自らの病と向き合い、自らの言葉で伝えていきます。
■木村守和さん
「病気や障害はいつ誰に降りかかるかわかりません。そうなる前に自分の最終盤の医療やケアについて考えてもらえるように、講演や文章でお伝えすることが大事だと感じています」
(08/29 18:38 福島中央テレビ)
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