■「暇だからおもしろいことねえかな、じゃあ(薬物)やるか」115年ぶりの法改正…再犯を防ぎ更生へとつなげるために 福島(福島県)
「懲役刑」と「禁錮刑」。裁判のニュースなどで聞いたことがあるかと思いますが、これらが来月から廃止され、「拘禁刑」に一本化されます。刑罰が変わるのは実に「115年ぶり」です。その背景にあるのが「再犯者率」です。2023年、全国で検挙された18万3269人のうち、再犯者は8万6099人。再犯者率は47パーセントと半数近くに上っているんです。再び罪を犯さないようどう更生へとつなげるのか福島刑務所を取材しました。
初犯の男性受刑者「やっぱり信頼、信用なくしたのが一番感じますね。(家族から)地元には戻ってきてほしくない、要は県外で立ち直ってくれって」
受刑者を収容する福島刑務所。
この日、刑務所内の一室で行われていたのは洋裁の刑務作業です。旅館や学校に納品される浴衣と割烹着を製作していきます。こうした平日7時間半ほどの刑務作業は「懲役刑」の受刑者に義務づけられたもので、文字通り「懲らしめ」の意味合いもあります。一方で刑務作業の時間を確保しなければならず「更生に向けた教育が十分にできない」と指摘されていました。この刑罰をめぐり6月、大きな変化が。
福島刑務所 増田康弘 矯正副長「令和7年6月1日から刑法が改正され、いままであった懲役刑と禁固刑が「拘禁刑」というものに変わります」
刑罰の種類が変わるのは115年ぶり。新たな「拘禁刑」では受刑者それぞれに合った作業と指導ができるようになり、より効果的に更生へとつなげるのが狙いです。福島刑務所に収容される多くは前科があり、再び罪を犯した“累犯者”です。
受刑者(50代/5回目の服役中)「3回目の服役を超えたくらいからですかね(刑務所の)中の生活は慣れちゃった部分がありまして、苦になってないというか」
今回で服役は5回目。いずれも覚せい剤に関する罪で服役する男性受刑者。刑務所に入ったのは合わせて13年間になるといいます。
受刑者(50代/5回目の服役中)「半分腐りかけてる自分もいるにはいるんですけど、(服役)5回も6回も一緒だよってやけになってる自分もいる」
累犯者が多い福島刑務所では、すでに、施設をあげての「更生支援」に力を注いでいます。
■受刑者たち(薬物指導様子)
A「悪いことしてるのは前提でやってる達成感というのはあった」
@「暇だからおもしろいことねえかな、じゃあ(薬物)やるか、気分をあげるためにって」
行われていたのは、「薬物依存離脱指導」です。受刑者らは違法薬物使用の引き金となる要因を共有し、二度と罪を犯さないために自分の考えを正直に話し合います。
■受刑者たち
B「やんないっていう感情ですか?」
@「そうやらないっていう」
B「結構いけますよ」
@「そこは大丈夫?」
B「いける いけるけどその次が困る」
@「あ〜」「1人になったらどうしよう、いらいらしたらどうしようとか」
教育専門官「ネガティブな感情があること自体が悪いことではない」「こういった(ネガティブな)ことが積み重なった時にご自身でどう対策を立てていくかというのを考えていかなきゃいけない」
「腐りかけてる自分もいる」。そう話していた受刑者も心境に少し変化があったようです。
受刑者(50代/5回目の服役中)「いままでにない気づきみたいなのを得てるような気がする」「まだ腐るにはもったいないかなっていう歯止めみたいな気持ちに変化は起こっている」
ほかには、こんなことも。
受刑者「本日はよろしくお願いします」
男性受刑者が向かい合うのは企業の採用担当者です。刑務所を出た後、スムーズな社会復帰ができるよう就労支援を行っています。
採用担当「何となく覚えてるよ(個人名)さんが熱意があった感じを」
社会との関わりを持ち、出所後の生活を安定させることで再犯防止につながればと考えています。
面接の様子「時間をいかに有効につかってもらうかが肝だと思ってるので」「うちで良ければ採用です」
新たな「拘禁刑」では受刑者の年齢や刑期の長さなど個々に応じて刑務作業を割り振ったり、職業訓練を充実させたりすることができるようになります。
福島刑務所 増田康弘 矯正副長「個々の受刑者に応じた指導や作業、社会復帰支援に力を入れていかなければいけない」
再び罪を犯さないように自らの過ちと向き合わせるだけでなく「更生支援」に力を入れる今回の法改正。「誰一人取り残さない」今後の社会の在り方が模索されています。
(05/30 18:41 福島中央テレビ)
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