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AIで熊被害防げ 会津大学が熊の出没をAIで感知・知らせる警報装置開発 利点と課題 福島(福島県)



県内では熊の目撃件数が過去最多のペースとなっていて、人が襲われるケースもあります。こうした人が熊に襲われる被害を防ぐため、AI(人工知能)の力を使った警報装置の開発が進んでいます。

畑の中を歩く黒い動物。6月に会津若松市で撮影されたツキノワグマです。ことしに入ってから、人が暮らす場所に熊が出没するケースが増えています。
会津若松市の会津大学では、いまAIを使って、熊が出没すると警報を出す装置の開発が進んでいます。
コンピュータ理工学部の教授、齋藤寛さんは、AIに会津地域のツキノワグマの特徴を学習させて、熊の出没を判定するシステムを開発しました。

■装置を説明する齋藤寛教授
「これ、我々は野生動物警報装置という風に名付けています。マイコン基盤がありまして、そこのところでAI処理をします」

センサーで何か動きを感知するとカメラで撮影し、その画像をAIが分析して、熊なのか他の動物なのかすぐに見分けるシステムです。
まずはAIに形や色、大きさなどの特徴を学習させて、熊かどうかを判定します。AIの力で、熊の判定精度はおよそ9割まで上がりました。

■会津大学コンピュータ理工学部 齋藤 寛 教授
「数秒で熊がいますと言えますので、近くにいる人に今はちょっとここは危ないですよと知らせることができれば、(熊と出遭う)事故を減らせることにつながるかなと」

齋藤さんはこのAIのシステムを使って、熊の出没を知らせる警報装置の開発も進めました。熊が出没する会津若松市の長原地区に7台のカメラを設置し、AIの力で熊と判定すると、光や音、メールで警報を出します。地元の協力を得ながら、この警報装置の事業化に向けて検証を重ねています。
こちらは先月、朝の6時55分に撮影し、熊と判定された画像。86%の確率で熊であるとAIが判定しました。熊と判定されれば、確率の数字を記した画像とともに地元の人たちに警報メールが送られます。

■会津若松市 長原町内会区長 丸山 勝代さん
「通学時間帯に入るので、その連絡を(学校や関係者に)先に出来たというとこがよかったと思っています」

このとき熊が出没したのは通学路のすぐそばで、ちょうど小学生の登校前でした。警報装置のおかげで、危険を避けられたのです。

■会津若松市 長原町内会区長 丸山 勝代さん
「音が出ると多少離れていても聞こえるので、あの辺で(熊が)出たなというのがわかるので、そこは安心材料になっていると思われます」

ことしの秋は、例年以上に熊に警戒が必要な年になると見られています。
熊の大好物、ブナの実のなる木は山奥に生えていますが、県の調査でことしはブナの実が大きく不作になる見通しです。かわりに食べるミズナラやコナラの木の実は人里の近くに生えているため、熊がさらに食べ物を求め、人の暮らす場所近くに下りてくる可能性が高まっています。

■会津大学コンピュータ理工学部 齋藤寛教授
「(警報装置は)みなさんに危険を知らせることはできるのですけど、熊を追い払うというところに関しては、なかなか簡単ではないんですね。動物が来づらい(近づきにくい)環境をつくっていくことが必要かなと思います」

私たちも熊に出遭わないよう注意するだけでなく、人の暮らす場所近くに熊を引き寄せないためにも、生ゴミの管理や食べない庭の柿の実を取り除くなどの備えも必要です。

(08/28 18:37 福島中央テレビ)

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