■事実上の一騎打ちとなった参院選秋田県選挙区 2人の候補者の対照的な選挙運動と舞台裏(秋田県)
参議院選挙の秋田県選挙区は、無所属で現職の寺田静氏が元職で自民党の中泉松司氏との事実上の一騎打ちを制し2度目の当選を果たしました。
両者が繰り広げた対照的な選挙戦、その舞台裏も交えてまとめました。
◇心の支えは家族
家事に勤しむ一人の女性として。
寺田静氏は物価の高騰を肌身で感じてきたといいます。
寺田氏
「普段だと時間があるときは安いものを買って献立を考えようってなるんですけど今、全部上がってるので考えようがない」
政治家としては消費者と生産者、双方の立場に立つ必要がありました。
寺田氏
「生産地選出の者としては悩ましいところで、ただ単にお米の価格を下げればいいというものではない」
物価高騰対策も争点のひとつになった選挙戦。心の支えは小学6年生の長男 しんぺいさんでした。
立憲民主党の衆議院議員で夫の学氏も育児などを一手に引き受けてサポートしました。
◇農業に携わる一人として
議席を争ったのは農家の長男に生まれた中泉松司氏。
6年前の参院選を次点で終えた後、集落営農組織の一員として農業に取り組んできました。
争点に据えたのは農業政策の在り方です。
農家
「多分今年から今年、ぎんさん(加工用米)最後だ」
中泉氏
「来年は?」
農家
「来年はほら主食(用米)やっぱり中心にして、まさかコメがこんな値段になると思わなかった」
中泉氏
「でもね、ちょと心ぱ…かじ取りしてちゃんとしないと逆にみんな主食につっこんだらやっぱり余る」
農業県秋田の声を国政に届けられるのは、現場を良く知る自分しかいない。
そう訴えた中泉氏に、農業の現場から厳しい声が浴びせられることもありました。
質問者
「彼(小泉農林水産大臣)は大規模化を進めると言ってね。まだ大規模化かと」
「うなずいておりますけれども(農業)やってる人が彼に言わないとだめだと思いますので」
中泉氏
「しっかりと小泉大臣に伝えられるようがんばります」
備蓄米の放出によるコメ価格の安定化などを推し進める小泉農林水産大臣と中泉氏は、20代のころからの盟友だといいます。
小泉農相
「コメ農家の皆さんの思いを背負って、私と激論をして最終的に言われたことは、思いはよくわかったからじゃあ秋田に来て直接農家さんにも伝えてくれと、それで私はきょう来ました」
中泉氏
「どんなに厳しい声でも結構です。皆さんの声を私に託してください。そして必ず目標を達成したのちに農政の現場で小泉大臣としっかり向き合って道筋をつける」
この日は、中泉氏から小泉大臣へ、生産者の立場からの強い批判の声はありませんでした。
◇あぜ道で農業談義
同じ日、寺田氏の姿は“農業の現場”にありました。
訪れたのは仙北市にある田んぼです。
寺田氏
「あれだけ赤字だ赤字だって農家の皆さんが言ってた時には何も、有効なことをしてくれなかったのに、価格が上がったからといって、じゃあその時だけなんかやるのかっていうのは、本当あんまりじゃないかと私も思ってて」
農家
「コメ多い多いって言って減反減反って言って、5年計画ね、減反させてでしょ、で、今コメつくれ?できるわけねえね、草ぼーぼーにした農地」
寺田氏
「それこそ小泉大臣が秋田に来てるんですけど、ちゃんとこういうとこに来てほしいなって。街中で演説して帰るんじゃなくてこういうところに来て話してほしいなって、話聞いてほしいなって」
農家
「我々のささやかな声届けてほしいんだやな」
◇政権トップとの意見交換
相対する中泉氏には、続々と中央から応援が駆けつけました。
しかし、ここでも農家から政権与党への逆風が吹いていました。
農家
「備蓄米の放出、店頭に2,000円のコメを並べるときに、なぜ生産者に緊急事態の対応であるから再生産可能なコメがつくれる環境を崩すわけではないんだとメッセージを発してくれなかったのか」
「今、農業者は特にコメ農家は、あすの未来あるコメ生産に向けて、本気で戦ってます。石破総理の言葉をあえて拝借するならば『なめられてたまるか』ということです。」
「政府だろうが大臣だろうが総理だろうが、やはり正々堂々と我々は自分の子どもや未来ある担い手に向けて誇れる農業をつくっていかなければいけません」
◇それぞれの選挙戦
選挙戦が進むにつれて、具体的な政策の訴えよりも、諦めない姿勢や国政への思いに特に熱がこもっていった中泉氏。
最終盤は中央からの“大物”議員などが再び秋田入りすることはありませんでした。
組織力の選挙戦を展開した中泉氏に対して、政党色を抑えた草の根運動に力を注いだ寺田氏。
地域の住民
「きれいになったね、おねえちゃん。がんばって、よかったよかった、こっち来るかなと思って待ってた、頼むよ!」
真夏のような17日間の選挙戦を終えました。
日増しに感じていたという支持の広がり。
選挙戦最終日には感極まる場面がありました。
視線の先には裏方に徹しながら見守り続けた夫の学氏の姿。
長男、しんぺいさんには翌朝、久しぶりに朝ごはんをつくることができたといいます。
寺田氏
「子どもを育てるにはもちろん経済的な余裕が必要です。そして、子どもの日々の成長の喜びを感じることができる時間の余裕も必要です。そして何より個人の選択を尊重する社会の在り方が必要です」
◇”山のように預かった課題”を改善につなげるために
誰もが安心して暮らせる社会の実現を目指して。
県内唯一の現職の女性国会議員としての立場も強調して2度目の当選を果たしました。
寺田氏は政党の方針に捉われなくて済む点を重視して無所属での活動を続ける考えです。
政党に入らずに自らが掲げる政策を実現するには。
寺田氏
「私の発言の内容、主張したことも盛り込まれて、それが政府に届けられて、それがそのまま政府の骨太の方針などに盛り込まれるというところもあって、それで法改正なども実現をしてきたというところも何度もありましたので。決して無力ではないと」
国政への考え方が近い議員同士でつくる“会派”への所属については「柔軟に検討していきたい」と述べた寺田氏。
県民の負託にどう応えていくのか、その手腕が引き続き問われます。
(07/22 18:09 秋田放送)
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