■【特集】運転士不足が深刻化する中… 老舗バス会社に若手運転士が誕生! デビューまでの道のりに密着 秋田(秋田県)
いわゆる2024年問題による時間外労働の規制強化。
そして高齢化による退職者の増加などで、バス業界は、運転士が足りない状態がより深刻化しています。
こうした中、創業100年を超える横手市のバス会社では、先月若手の整備士が運転士としてデビューを果たしました。
人々の移動を支える路線バス。
若手運転士のデビューまでの道のりに密着しました。
県南支局橋勤記者のリポートです。
■老舗バス会社が抱える課題 10年間で100人余り退職も…入社は16人
通勤通学や買い物など、人々の移動を支える路線バス。
県の南部を中心にバス事業を展開する、横手市の羽後交通です
来年 創業110年を迎える老舗企業で、いま一番の課題となっているのが運転士の確保です。
羽後交通・人事担当 貝心斉部長
「退職者が非常に多いと。さらに若年者のドライバーがなかなか会社で募集をかけても人が集まらないと。これが一番懸念されているところでございます」「各ダイヤの改廃だとか減便だとか余儀なくされているという現状でございまして」
この10年で100人余りの運転士が退職した一方、入社は16人にとどまっています。
現在106人いる運転士の平均年齢は58歳。
定年などにより、今後10年で15人ほどが退職する見込みです。
■整備士が抱く幼いころからの夢
保有するバスのメンテナンスなどを行う羽後交通の整備工場です。
美郷町出身の高階恵さん23歳。
地元の高校を卒業後、6年前に羽後交通に入社し、整備士としてバスの点検や整備を担当してきました。
幼いころから抱いている夢があります。
羽後交通 高階恵さん
「将来の夢はですね、貸し切りバスを運転して、そのバスに家族全員を乗せて旅行に行くことです」
幼いころから乗り物が大好きだった高階さん。
中でも大きな車体を自在に操るバスの運転士に憧れていたといいます。
新年度を迎えた今年4月。
点検
「運行前点検をはじめます。前部外観異常なし、ワイパーブレード亀裂損傷なし」
幼い頃からの夢に一歩近づくため、会社の助成制度を利用して、路線バスの運転に必要な大型2種免許を取得していた高階さん。
この春、本格的に訓練を始めることにしました。
■徹底された教育を受け…新卒入社の社員として40年ぶりの運転士誕生
「安全・正確・快適」なバスの運行を経営方針に掲げている羽後交通。
デビュー前の運転士への社内教育を徹底しています。
指導員
「ちょっと狭い所の集落に入っていくから、そういう所はいままでの45キロではなく、少しはスピードを緩めて急な飛び出しとかそういうことの安全防衛運転に徹して運行するように」
指導するのは、40年以上の運転士経験を持つ高橋一郎さんです。
車両の点検から運行、接客まで運転士が担う業務は多岐にわたります。
接客指導
「乗るなだがら待ってるべども、改めて運転手から大曲行きですということを伝えること。あるいは朝とかおはようございます。ピンポーンって鳴らされたら、はい次止まりますって反応してお客さんに安心を与える。そういうことが大事なんだよ」
料金の確認や停留所の音声案内も一人でこなさなければなりません。
音声システム指導
「最初はまず右手。で、そちらの方にボタン、それが案内を流すボタンです。ポンと押してみてください。『ご乗車ありがとうございます。この車は六郷経由大曲バスターミナル行きです』」「こう勘でぱっといくように、目は絶対前、一瞬にして事故って起きるからな。そういうことを意識して右手を慣れましょう」
訓練開始から約2カ月。
辞令受け取り
「運行課運転士高階恵。大曲自動車営業所運転士を命ずる」
社内検定に無事、合格した高階さん。
新卒で羽後交通に入社した社員としては、実に40年ぶりの運転士誕生です。
羽後交通 井上俊二常務
「人命を預かる仕事に就くわけです。これからはお客さまが先生だと思って、自分を律して頑張ってください」
羽後交通 高階恵さん
「気を引き締めて頑張っていきますので、これからも引き続きよろしくお願いいたします」
■「乗客から愛される運転士に」夢への第一歩
運転士としてデビューしてから10日ほどが経った先月。
大仙市のバスターミナルに、父・幹雄さんと祖母のヒサ子さんの姿がありました。
父・幹雄さん
「本人の夢なので、夢かなって、あと、どれくらい上手くバス運転できるのかなというのがちょっと楽しみですかね」
祖母・ヒサ子さん
「何か心配半分、うれしいところ半分っていう感じ」
自分が運転するバスに家族を乗せるという長年の夢。
家族を乗せて走ったのは、大仙市の中心部から郊外のショッピングモールまで、往復13キロほど。
30分余りの道のりでした。
父・幹雄さん
「交差点曲がるときの内側の内輪差とかって意外と気を付けて見てたんだけど、あまり褒めたくはないけどうまかったですね」「乗客のみなさんから愛される運転手になってほしいですね」
祖母・ヒサ子さん
「良くこんだけ大きくなってくれたなっていう感じする」「自分で好きで就いた仕事だし、体調崩さないで頑張ってもらいたいなと思います」
羽後交通・高階恵さん
「貸し切りバスに乗せるっていうのが本来の夢なんですけども、定期路線バスで家族のみんなを乗せることができてまた一つ夢がかなったのかなっていうのは実感しています」「どんなお客さまにも丁寧な対応を心がけて、地域のみなさまから愛される運転士になりたいと思っています」
地域交通を支える路線バス。
高階さんの運転士としての歩みはまだ始まったばかりです。
(07/25 17:54 秋田放送)
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