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”平成の大合併”から20年 市営温泉が存続の岐路に 厳しい経営に新型コロナが拍車…苦渋の決断と住民の思い(秋田県)



秋田県内の多くの市や町が、今年、いわゆる平成の大合併から20年の節目を迎えています。

合併当時、10の温泉施設を抱えていた横手市は、利用者の減少などで、経営が厳しさを増しています。

民間への譲渡や指定管理者制度への移行も思うように進まず、いま、市営温泉が存続の岐路に立たされています。

地域住民の憩いの場ともなっている温泉を今後どのように運営していくのか。

対応に揺れる現場を取材しました。

■厳しい経営に新型コロナ…市営温泉の厳しい現状

新年度予算案などを審議する横手市議会の定例会の初日。

橋大市長は、市営温泉について方針を示しました。

横手市 橋大 市長
「鶴ヶ池荘につきましては、現在の施設を全面改修し、再開を目指したい旨、市民のみなさま、議員のみなさまに説明しておりました。しかしながら、資材や機械設備類などの価格高騰は今後も継続することが想定され、多額の改修コストを投じての全面改修は断念せざるを得ないとの結論に至ったところであります」

横手市山内地区にある宿泊温泉施設「鶴ヶ池荘」。

民間事業者に譲渡され、運営されていましたが、新型コロナウイルスによる休館を経て、2021年の春から営業を休止しています。

指定管理者制度での再開を目指していましたが、休止中に建物や設備の老朽化が進行。

改修には約19億円の費用が見込まれることから、将来的な財政負担なども考慮し、存続を断念。

解体して規模を縮小した日帰り温泉施設を新設する方針が示されました。

いわゆる平成の大合併で、2005年に8つの市町村が合併し誕生した、横手市。

合併当時、営業していた10の温泉施設を、市営温泉として引き継ぎ、運営してきました。

その後、直営や民間事業者への譲渡、それに、指定管理者制度で運営を行ってきましたが、利用者の減少などで多くの施設が赤字になりました。

厳しさを増す経営に新型コロナが追い打ちをかけ、休止や市に返還される温泉が相次ぎました。

合併から20年を迎えようとしているいま、営業を継続している温泉は、半数以下の4つに減っています。

■待ち望んだ再開計画の相次ぐ中止…住民は

市は、昨年度、市営温泉の今後の運営方針を伝える住民説明会を、市内9か所で開きました。

横手市 商工労働課 赤川博幸 課長
「さわらび復旧のめどがまったく立たない状況となったこと、また、渇水状況となっております源泉井戸や新たな水源の確保に多額の費用を要することなどを考慮いたしまして、誠に苦渋の決断ではございますが、上畑温泉の再建につきましては、断念せざるを得ないと判断させていただいたところでございます」

合併当時「ゆ〜らく」と「さわらび温泉」の2つの施設が営業していた横手市南東部の山あいに位置する増田町狙半内地区の上畑温泉。

市は、老朽化で解体した「ゆ〜らく」の跡地に、南部のエリアをカバーする日帰り温泉施設を建設する方針でしたが、おととしの夏に、源泉がくみ上がらなくなる不具合が発生し、計画を断念しました。

さらに、ゆ〜らくに隣接し、同じ源泉を引き込む、休止中のさわらび温泉は、配管からの漏水が複数箇所で確認され、再開が困難な状況になりました。

待ち望んでいた温泉再開計画の相次ぐ中止に、説明会に参加した地域住民からは不満の声が上がりました。

住民
「過疎化に拍車がかかっちゃうよ。若い人はもう全然、狙半内にいなくなる。まず見てれば分かる。そういうのを食い止めてくれているのがやっぱり行政でね。せめてゆ〜らくだけでも残してくれればまだいいなと思ったけど、それも全部潰すなんてあまりひどすぎる。みんな思ってるよ」

自治会長
「ゆ〜らくの話がまた消えてしまったということで、何かこの4年間、行政に振り回された。みなさんがっかりして、不信感を持っています。結果的には多分これ4年間、暖房もつけないでやったおかげで、多分凍って破裂とかいろんな形になったと思いますよ。これ多分横手市の管理がしっかりしていないためかなと思っています」

地下深くの地層からくみ上げる温泉には、硫黄などの成分が含まれているため、長時間配管にとどめると、設備が腐食し、破損につながる恐れがあるとされています。

そのため、休止中の「鶴ケ池荘」では、存続を断念し、解体する方針が示されるまでの約4年間、無人の浴槽に温泉をくみ上げる作業が毎週行われていました。

「鶴ケ池荘」の昨年度1年間の維持費は、温泉のポンプなどの電気代や人件費など1300万円あまりが計上されています。

温泉は休止中でも、多額の維持費が必要となるため、決断を先伸ばすことは、財政の圧迫につながりかねません。

こうした状況の中、市議会の定例会では、いまも市が直接運営している2つの温泉について、「指定管理者制度による運営を可能にする」ことを盛り込んだ条例の改正案が、賛成少数で否決されるなどしました。

市の温泉運営の行方に結論は出ていません。

今年の秋にいわゆる平成の大合併から20年の節目を迎える横手市。

市営温泉の赤字の補填や施設の修繕などの維持費として、横手市が合併以降の18年間で計上した費用は、46億円を超えています。

少子高齢化で税収の先細りが懸念される中、限られた財源で地域住民の憩いの場ともなっている市営温泉を今後どのように運営していくのか。

財政と住民サービスのはざまで、行政運営は難しいかじ取りを迫られています。

(04/16 17:59 秋田放送)

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