■【特集】記録的な大雨から1年…続く生活再建の歩み 大雨に家とコメ作りを奪われた男性の思い 防災といまの暮らしをどう両立させるのか 秋田(秋田県)
去年の記録的な大雨で大きな被害が出た由利本荘市の久保田地区。
現状を進藤拓実記者が取材しました。
(進藤記者)
家が浸水被害に遭った地区の農家の男性は、いまも市営住宅に身を寄せています。
長く暮らした家の解体を自らの手で進めるなか、代々続いてきたコメ作りも再開できずにいます。
1年が経っても生活再建の歩みが続いていました。
■長年住み続けた家 自らの手で解体を決意も…
30世帯余りが暮らす由利本荘市久保田地区。
1年前、半数ほどの世帯が記録的な大雨で浸水被害に遭い、一部にはまだそのつめあとが残ったままです。
なかには水害をきっかけに集落を離れた人もいます。
去年の大雨で地区を流れる久保田川が氾濫。
濁流が集落へと流れ込みました。
浸水被害に遭った木村賢一さん53歳です。
家の解体をいまも手作業で進めています。
木村賢一さん
「3年かけて、知り合いに頼んだりして、ほごすはほごしていこうかなと思ってますね」
祖父の代から住み続け、増築を重ねてきた家。
解体を決めたものの、かかる費用が大きな悩みになっています。
近くにある市営住宅に身を寄せながら娘2人の学校生活を支えています。
木村さん
「出たいです、やっぱり。制約が大きくて市の、できればもう自由に暮らしたいのが現実ですね。まぁ1年間借りられたのは本当に助かってますね」
■水害に遭った田んぼ いまも復旧には手届かず
木村さんは代々農業を営んでいます。
水害に遭った田んぼの復旧にはまだ手が届いていません。
この1年は、転作の助成金を頼りにソバを育てるなどして生計を立ててきました。
木村さん
「稲作ってなるとまず毎日の管理大変じゃないですか。水回り草刈りいろんな作業、みんなしてるのがわかってるので。それをやりながら、あっち解体とか片付けとかするとやっぱり俺自分どうなっちゃうかわかんなくなっちゃったので。まぁスパッと切り替えて生活できる分あればいいのかなって」「父親、祖母とか頑張ってきたのは見てきたので、できればって気持ちはあるんですけどね」
初めて経験した水害。
コメづくりも、家の解体も、手探り状態のまま1年が経過しました。
より一層の助けになる支援はほかにあるのか。
模索し続ける日々が続いています。
木村賢一さん
「いろんな情報はもらったんですけど、肝心のところはなかなかっていう。最初のうちはボランティアの方とかも来てくれて大変助かってたんですけど、過ぎちゃえばね、災害に遭った人しかわからない現状がいっぱいありますよね」
生まれ育った家と営み続けてきたコメ作りを大雨に奪われた木村さん。
生活再建の歩みが1年が経ったいまも続いています。
■続く復旧工事 求められる次の水害への対策
(進藤記者)
去年の大雨は、農林水産関係への被害額が過去最大になりました。
上小阿仁村の五反沢地区では、1年前、地区を流れる川の水があふれて、田んぼ一帯が湖のようになりました。
先月訪れたところ、まだ復旧工事が続いていました。
公的な支援が受けられても、元のように戻るまでには相当な時間がかかることは避けられないことを実感しました。
一方、県は次の水害を防ぐための対応を進めています。
先ほどの由利本荘市の久保田地区では、氾濫した川の整備計画を示す住民説明会が開かれました。
防災といまの暮らしをどう両立させるのか、新たな課題も浮き彫りになっています
■いまの暮らしを崩さずに防災は進められるのか…いつ降るかわからない大雨
住民20人が参加した住民説明会。
久保田川を管理する県のほか由利本荘市も参加して、防災・減災の計画案が示されました。
被害の検証を重ねて県が提案したのは、川岸に沿って堤防を増築する「輪中堤」です。
県職員
「川がありまして、これが高原鉄道に行く道だとすれば」
住民
「だとすれば、具体的に言うと、家に帰れなくなる」
「これは決まれば移転になる」
住民
「駅前に通じる道路なんですね、その道路の2.5メートルを盛る策はだめなんですか。ここうちあるもんですからね、ここに道路を利用した堤防をかさ上げっていうのはまずいんですかね」
県職員
「それはこれから検討になります、いまのところ単純に外側に計画してるんですけど」
住民は、工事にかかる期間とコストを踏まえ示された案に一定の理解を示したものの、いまの暮らしを崩さずに進められるかどうかが課題として浮き彫りになりました。
熊谷甚悦自治会長
「正直やっぱりうち建てたばっかりの人もいて、それが移転対象になるのはいかがなもんかという気持ちもあるし、実際は測量しなきゃわからないんでしょうけども」
示された案の実現までには少なくとも3年はかかります。
また降るかもしれない大雨。
住民
「すぐにでも早くやってもらいたい感じですね。でも今回実際家流されていくから、まぁ早くそうなんないようにしてくれればって感じですけど」
熊谷甚悦自治会長
「いつ降るかわからない状況の中では、やっぱりかさ上げくらいはできないのかなとかっていう話もやっぱ出てますから。ただやっぱり権利関係と実際の圧に対する力、抵抗力とかどうなるかがわからないですから、素人考えでは通らないでしょうね」
県由利地域振興局企画・建設課 吉田和重課長
「しっかり予算を確保しながらスピード感をもって、設計なり調査を進めていくというのが大事だと思いますので、そこは住民の方の声をしっかり受け止めてですね、今後進めていくと」
??????????
(進藤記者)
堤防などのハード面での防災と並行しながら、被害にあった人たちをどう支えていくかも長い目で見ていかないといけないと取材を通して感じました。
いまある支援制度の周知、そして、さらなる拡充も求められています
(07/24 18:16 秋田放送)
・TOP
Copyright(C)NNN(Nippon News Network)