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【戦後80年】戦争の記憶を先人たちはどう伝えてきたのか?土崎空襲を描いた本を紹介する書籍を出版 歴史を埋もれさせず後世へ 秋田(秋田県)



戦後80年を迎えた今年は、テレビやラジオ、新聞などで過去の戦争を見つめ直すさまざまな機会があった人も多いと思います。

先月出版されたばかり、80年前の秋田市での土崎空襲に関連する書籍。

ただ、直接戦争の恐ろしさや悲惨さを描いた本ではありません。

戦争の記憶がどう伝えられてきたのかを改めて考える内容になっています。取材しました。

JR秋田駅のほど近く、中通地区に小さな図書館があります。

ここは県内では珍しい会員制の図書館「本庫HonCo」。

会員は約20人。本が好きで、文化振興を願うメンバーで運営されています。

開館10周年を迎えた今年、代表の天雲成津子さんが中心となって1冊の本が出版されました。

それが、「本でつなぐ過去と未来ー土崎空襲の記憶ー」です。

戦後80年となった節目の年に合わせて先月出版されたばかりです。

しかし、土崎空襲が「どれだけ悲惨な出来事だったのか」を伝える本ではありません。

土崎空襲について書かれた昔の本を見直して、「改めて紹介する書籍」という位置づけです。

天雲成津子代表
「今その本が手に入らないです。絶版になってますので、みなさんが読もう知ろうって思った時に、手に入るのが図書館に行くしかない。それすらも危ない場合もございますので、それをつなげる役割として本を、ということで刊行しました」

先人たちが土崎空襲をどんな風に伝えてきたのかを知るための本。

例えば、いまも多くの子ども達に、土崎空襲の絵本として読まれている『新はまなすはみた』。

実は、2002年に「新」としてリニューアルされていました。

元の、1981年発行、書店では手に入らない初版の『はまなすはみた』とは、少し内容が違います。

天雲成津子代表
「こちらの『はまなすはみた』を平成令和を経てからいまこちらに手に取ってみた時に、土崎空襲の8月14日の悲惨な様子を伝えるというだけではなく、復興を果たした土崎の平和を祈っているというところまでの歴史絵物語」

天雲さんが『はまなすはみた』を読み返した時、千年以上前の土崎や、平和な土崎が描かれていたこと、そして、空襲を乗り越えて立ち直るまでを描いていたことに初めて気が付いたそうです。

さらに『はまなすはみた』の後半には、土崎空襲にまつわる記録写真や空襲の標的となった日本石油秋田製油所に残った爆弾の痕の資料。

巻末には…

『はまなすをみた』を作成した、土崎港被爆市民会議の、初期の活動記録「月報」が閉じられていました。

天雲成津子代表
「太平洋戦争で100機以上の空襲を受けた被災都市一覧ということで、『土崎だけではない』という目線もこちらの中には含まれています」

『はまなすをみた』は、実は子ども向けの絵本に留まらない、「土崎」の歴史資料として貴重な書籍だったことがわかります。

ほかにも、今では図書館でしか手に入らない書籍を取り上げました。

天雲さんは「昔の書籍を読み直すと、今だから気づくことも多い。戦後80年経ったいまだからこそ、歴史を埋もれさせずに後世に伝えたい」と考えています。

天雲成津子代表
「私たちの前の人たち、先人の方たちが、それから立ち直って、前向きに生きてきたんだっていうところを歴史っていうのを知っていただければと思ったので。そうです、今これから未来の方に見ていただきたい」

「本でつなぐ過去と未来ー土崎空襲の記憶ー」は県内の書店で販売(税込み1,980円)されています。

(09/09 17:55 秋田放送)

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