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【#グップラ】「西わらび」 持続可能な農業と地域活性化(岩手県)



 続いて日本テレビ系列の「グップラ」、地球にいいこと人にいいことを考える「グッド・フォー・ザ・プラネットウィーク」です。

 テレビ岩手でも2日と3日、2回のシリーズでお伝えします。

 1回目は今、最盛期を迎えている岩手県西和賀町のブランド山菜「西わらび」を通して、持続可能な農業と地域活性化を考えます。

(収穫音)

西和賀町に春を告げる収穫の音。

 収穫の常連客
「(パキンパキン)いい心地…」

 トロっとした粘りが特徴の西わらびは、今でこそ県内外で高い評価を受けていますが、20年ほど前は…

 生産・販売ネット 湯澤正 会長
「よくワラビなんかで熱くなれるねと子馬鹿にされる。 そういうところからスタート」

 町の外には出さない苗は、わらびの中でもエリート中のエリート!

 やまに農産 高橋医久子 会長
「西和賀の宝になるものじゃないですかね」

 地域ならではの天然資源を大切に育み、たゆまぬ努力で持続可能な農業へと発展させてきました。

 奥羽山脈の東に位置する豪雪地帯「西和賀町」。

 雪解け水がしみ込んだ肥沃な土壌で育つ山菜は古くから地域にとって欠かせないものでした。

 町の資料館にはその歴史を伝える道具があります。

 こちらの「根舟」は、わらびの根からでんぷんを抽出するための道具で、その「でんぷん」を乾燥させて作るのが「わらび粉」です。

 町の歴史資料によりますと、わらび粉は江戸末期に有名な換金食品として生活を支えたほか、地域を襲った飢饉(ききん)の際にも人々の命をつなぎました。

 また、わらびを塩蔵し、冬の保存食にする食文化も根付き、採りすぎて翌年の生育に影響が出ないよう大切にされてきました。

 一方、ブランドとしての「西わらび」は、この20年ほどで人の手によって作り上げられました。

 地域を支えてきた「わらび」に着目し栽培をはじめたのは2000年ごろ。

 中心になって取り組みを進めた湯澤正さんは簡単にブランド化できたわけではないと振り返ります。

 湯澤正さん
「なんだと。山の山菜を田んぼに植えるとは何事かいくら減反で米余っているから(米作り)やめろという時代でも田んぼに山菜わらびはなかろうという空気だった」

(Q、ワラビに適しているから水田に?)

 湯澤正さん
「そうそう、湿気は十分何よりPh(酸性土壌)が1番わらびの好む性質で水田は合っている。そこは自信がありました」

 いいものができる自信はあったものの、当時の有志は20人弱。

 山に自生するわらびの根を掘り起こして、水田に植えて試験的に栽培を始めました。

 徐々に軌道に乗り、8年後には、湯澤さんらが発起人となり生産者、加工販売業者、それに町などを加えた官民連携の組織を立ち上げ、地域一体となってブランド化に取り組むようになったのです。

 カギになったのは、ブランド化に欠かせない「宝」の苗に目をつけたことでした。

 やまに農産 高橋医久子 会長
「最初は西和賀で生えているワラビであればなんでもおいしいのかなと思っていたところ、太くて自然に長くなってとろみもある。食味が上々だというものが見つかりそれがここにある黒系」

 町内に自生するわらびには10以上の系統があり、県の協力による試験栽培の結果、現在の西わらびの特性が最も強い「黒系」を選抜。

 町の外への持ち出しが禁止されている「宝」の苗により高品質な「西わらび」の安定生産が実現しました。

 第三セクター西和賀産業公社によりますと、西わらびの集荷量は初めて集荷した2006年はおよそ630キロでしたが、近年はその30倍・20トンを超える年もあります。

 さらに出荷する生産者の数も初めは14人でしたが、最近は150人を超える年もあり、数字を見ても単なる山菜ではなく、持続可能な農業として発展させてきたことが分かります。

 湯澤さん
「いまは『西和賀町って知っているか』というと『知っているよ。西わらびの西和賀でしょ』というふうになってきている。知名度アップに少しは貢献しているのかなと」

 ブランドが定着した「西わらび」はピクルスなどの加工品のほか…

 地元の道の駅や菓子店などでは希少な西わらび粉を使った「わらび餅」も特産品として販売。

 収穫体験ができる「わらび園」は観光資源にもなっています。

 去年はブランド化を推進してきたことなどが評価され、国が地域ブランドとして保護する制度に、山菜では初めて登録されました。

 「西わらび」の集荷と販売を担ってきた西和賀産業公社の廣瀬稔さんは、現状に満足することなく未来を見据えています。

 西和賀産業公社 廣瀬稔さん
「生産者が高齢者が多くなってきている。仙台圏や首都圏にも販路を拡大して西わらびの美味しさを伝えていって、次の世代につなげていければ」

 特色ある天然資源を大切に育み、持続的な農業に繋げた西和賀町。

 町を挙げた努力が産業と地域の活性化を進めています。


(06/02 18:54 テレビ岩手)

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