■開催は38年ぶり 「ラリー王国」と呼ばれた岩手で公道を使った大規模な自動車レース(岩手県)
かつて「ラリー王国」と呼ばれた岩手で今月初め、公道を使った大規模な自動車レースが開かれました。開催は38年ぶりということです。レース復活に奔走した愛好家や出場した女性を密着取材しました。
エンジン音を響かせ、猛スピードでコーナーを駆け抜けるスポーツカー。
今月6日、盛岡市のサクラパーク姫神(ひめかみ)で、自動車レース「いわて姫神(ひめかみ)ヒルクライム2025」が開催されました。
工藤守さん、64歳。このレースを主催した愛好家団体の会長です。県内のレースファンにとって、今回の大会は特別なものだといいます。
工藤守さん
「公道でのこういった競技っていうのは(県内で)38年ぶりということで」
コースに適した山あいの道が多いことなどから、かつて多くのラリー大会が開催されてきた岩手県。
毎年開かれる「全日本ラリー選手権」の会場の一つでもありました。
しかし、工藤さんによりますと、レースや練習走行で事故が相次いだと言われていて、これが原因で県内で長らくレースが開催できなかったとみられています。
工藤守さん
「ラリーがなくなってからは(岩手のことが)自ずとメディアに出ることもなく、昔を知っている人だけになってきて(ラリー人気が)尻すぼみになってきたのかな。どうしても昔話になってしまって『楽しかったな』『面白かったな』はベースにありますけれども、今の若い人たちにもこの楽しさを味わってもらいたい」
工藤さんの思いに応えようと、ラリーの愛好家仲間は去年9月、大会の復活を決意。
県警や地元住民と交渉を重ね、コースのすべてのコーナーについて危険性を細かく解説した書類をくりかえし提出するなどして、ようやく開催にこぎつけました。
工藤守さん
「重大事故になったら、競技自体がもうなくなるし、今後のことも出てくるし、そういうことも考えないといけないのが我々主催者」
過去の失敗を繰り返さない。
工藤さんは強い決意を胸に、レースの開催に備えます。
自動車レース復活で盛り上がる一方、岩手のモータースポーツを盛り上げたいとレースに出場する若き女性がいます。石倉あすかさん、21歳です。
石倉さんが自動車レースに興味を持ったのは、父親の影響です。
石倉あすかさん
「0歳で生まれた産院から帰るところからずっとこの車なので」
石倉さんは今回、ドライバーの父を助手席からサポートする「コドライバー」としてレースに参加します。
石倉あすかさん
「応援部隊兼盛り上げ要員兼テンション上げ要員みたいね。自分が広告塔になって、岩手のモータースポーツやる人、興味持つ人が増えたらうれしいですね」
大会当日。会場には、全国各地からラリー好きの猛者がつどいました。
石倉さん親子も、最終調整を進めます。
スタート2時間前。石倉さん親子は、コースの下見に向かいます。
コドライバーは、「ペースノート」と呼ばれるノートに、勝負のカギとなると思うコースのポイントを、メモしていきます。レースでは、このメモをもとに、1秒でも早くコースを走れるよう、各チームが作戦を考えます。
石倉あすかさん
「200(メートル)とか150(メートル)とかのこの直線で、どんだけアクセルぬかないで怖がらず走れるかだと思ってて。横から(父に)『遅いよー』って、『もうちょっと頑張れー』って言っています」
話し合いの結果、石倉さんが示した直線では、アクセルをゆるめずに走りきることに決まりました。
待望の「いわて姫神ヒルクライム」が、いよいよ開幕しました。38年ぶりに、岩手の山あいにエンジン音が響き渡ります。
今回のコースは、全長4・3キロの上り(のぼり)坂。56組の車が1台ずつ2回コースを走り、タイムを競います。長年待ちわびたレースを一目みようと、古くからの自動車ファンや若者たちなど、大勢の観客が会場に押し寄せました。目を輝かせてレースを見守ります。
「さてやって参りましたのは、カーナンバー24番。石倉ひであき選手!そして娘さんが隣り!」
「上りがんばれ!」
石倉さん親子、事前に決めていた直線でアクセルを踏み続けましたが、車のパワーが足りず、スピードに乗りません。
想定よりも遅いペースで終盤を迎えます。レースを終えた石倉さん親子が帰ってきました。
参加した軽自動車のクラスで5組中4位でしたが、レースの楽しさは十分味わえました。
石倉あすかさん
「勝てなかったけど、最後まで走りきれたので満足しています。岩手の道は特にここは上から眺めがよく、走っていても乗っても綺麗で楽しかったです。岩手でまたこうやって一からまたみんなで準備して開催できたらと思っています」
今回のレース開催に手応えを感じた工藤さん。参加者たちの反応も上々です。
参加者
「ちょうどよくクネクネしていて、勾配もちょうどいい。景色も素晴らしく、たぶんみんな喜んでいる」
参加者
「日常でこんな走りできないからうれしい。継続して続けてもらえるならまた参加したい」
観戦者した子ども
「ギューンって行くから速すぎてウェーっとなってしまうからすごく速いと思った」
観戦した人
「懐かしく思って見ました。もっとアクセル踏めよこらと。ランサーもインプレッサも私たちには青春の車ですよ」
工藤守さん
「皆さんに喜んでいただけるのであれば幸いでした。次回も開催できればと思っています。ありがとうございました」
工藤守さん
「昔のようにってのは難しいかもしれないけど、何とか私たちの経験したことをつないで、次に伝えられれば」
かつてのラリー王国、岩手が再び、レース文化復活に向けて走り始めました。
(04/14 19:08 テレビ岩手)
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