■世界レベルの「熊本の渋滞」1年前と比べると? 同じ時刻・道で検証してみた(熊本県)
(緒方太郎キャスター)
シリーズ「抜け出せ!渋滞都市」、花木記者とお伝えします。
(花木瞳記者)
KKTでは、熊本の渋滞について1年前からシリーズでお伝えしてきました。この1年でどう変わったのか検証します。熊本市は、政令指定都市の中で「主要渋滞か所」の数がワースト1位です。
(緒方キャスター)
車の平均速度に基づく「渋滞ランキング」でもワースト1位と、不名誉な結果となっていますね。
(花木記者)
KKTの放送後、木村知事と熊本市の大西市長が会談し「車1割減、渋滞半減、公共交通2倍」というテーマを掲げました。
【VTR】
去年4月には、熊本市の西回りバイパスにつながる「花園上熊本線」が開通。菊陽町など交差点への右左折レーンも新設しました。さらに、県や熊本市、菊陽町などは、渋滞のピークを分散させようと時差出勤を導入しました。対策の効果は出ているのか?街の人に聞いてみました。
■タクシー運転手
「菊陽に行くと、左に曲がる車線が1車線分あるっていうのが。昔はバイパスずっと渋滞。それがちょっと解消できたかな」
こうした声がある一方で…
■街の人
「あんまり変わってないかな」
「渋滞はそんなに変わらないです」
行政は渋滞を減らすために公共交通への転換を促しましたが、バスや熊本市電は運転士不足による減便が相次ぎ、乗客があふれる状況も見られました。
■街の人
「便が減ったとかあるので、やっぱり通勤・通学に使われている方は、また違う悩みがあったりするのかな」
【スタジオ】
(花木記者)
“日本一”の渋滞都市を脱却したい熊本ですが、ことし1月、交通渋滞について衝撃的なデータが発表されました。
オランダのトムトム社が62か国、500都市を対象に行った交通調査です。渋滞時に中心部を毎日10キロ走行したときの「年間損失時間」で、熊本市が「世界5位」にランクインしたのです。渋滞により1年で149時間ロスした計算です。
■トムトム・セールス・ビーブイ 西 弘二さん
「混雑度が世界4位になってました。(熊本市中心部は)日本ではもちろんトップです」
熊本市中心部では渋滞時の運転時間が平常時の1.49倍だったとして、メキシコシティやタイのバンコク、フィリピンのダバオに次いで「世界4位」となりました。
世界から注目されるほどの熊本の渋滞事情。実際この1年で変化はあったのか?KKTでは一年前、朝の通勤ラッシュ時に国道3号の混雑状況を調査しました。スタート地点は、熊本市北区山室の国道3号と通称「飛田バイパス」との交差点。国道3号を通って熊本市役所を目指す約5.7キロのルートを走ります。去年かかった時間は29分10秒。果たして今回は?同じルートで検証します。
■花木瞳記者
「午前8時です。それでは出発します!」
前回同様、序盤はスムーズに進んだものの、北熊本駅前付近から徐々に動かなくなってきました。
■花木瞳記者
Q.前と比べて朝の渋滞どうですか?
■ドライバー
「あんまり変わってないんじゃないかな」
中盤の通過タイムは、今回の方がリード!渋滞は大きく緩和されたのか?一方で、窓の外に目をやると…?
■花木瞳記者
「自転車にどんどん抜かれていく」
すいすい進む自転車を横目に赤信号で何度も足止めされます。そして…。
■花木瞳記者
「到着しました!かかった時間は27分50秒です。前回より少しだけ早く着きました」
【スタジオ】
(緒方太郎キャスター)
1分20秒の短縮…渋滞対策の効果でしょうか?
(花木記者)
残念ながら、そうでもないんです。
5.7キロを走るのにかかった時間は、去年が29分10秒で、今年が27分50秒。これを車の平均速度に換算すると、去年が時速11.7キロに対し、今年は時速12.7キロ。時速1キロしか違わないんです。体感でもわからないくらいの違いを裏付けるのが、こちらです。
「主要渋滞か所」です。この地図は熊本市周辺を拡大したものですが、県内で283か所の交差点が選定されていました。これが、この1年でどう変わったのかというと…熊本市北区四方寄町と合志市須屋の2か所が解消しました。どちらも、VTRで通ったルートの外側なので、検証への影響は少なかったようです。
このほか、天草市の7か所と宇城市のあわせて10か所が解消したのですが、新たに合志市と大津町、菊陽町で12か所追加され、合計285か所になりました。この1年の渋滞対策をどう評価するのか?交通の専門家に話を聞きました。
【VTR】
地域交通計画や交通まちづくりに詳しい熊本学園大学の溝上章志教授です。
■熊本学園大学経済学部・溝上章志教授
「1年間で車を減らす施策、あるいは公共交通を増やす施策というのがあまり進んでないので、面的に改善されているという状態になっていない」
県と熊本市が掲げる「車1割減、渋滞半減、公共交通2倍」の中でも、「公共交通2倍」を促す政策が不十分だと指摘します。
■熊本学園大学経済学部・溝上章志教授
「(車を)減らしたいのであれば、当然公共交通機関が便利じゃないとだめですよね。そのためにはやっぱりバスとか公共交通機関を優先的に通すためのレーンっていうかな、そういうのをちゃんと整備してやらないと、今言ったようなことというのは実現できないわけです」
【スタジオ】
(緒方キャスター)
前半でもお伝えしましたが、去年、熊本市電やバスは減便の影響もあり「利用者2倍」を目指すことは難しい状況でしたね。
(花木記者)
渋滞解消のためには「車の流れを良くする」ための道路整備と「車を減らす」ための公共交通への転換と、両方が必要となります。溝上教授が指摘するように公共交通の利用促進にさらに力を注ぐ必要があると感じました。
(04/11 20:43 熊本県民テレビ)
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