■【内部に潜入】熊本地震で被災した熊本城宇土櫓 100年ぶりに解体して復旧作業(熊本県)
9年前の熊本地震で大きな被害を受けた熊本城のシンボル・熊本城。復旧が進み、4年前からは天守閣の一般公開が始まり、多くの人が訪れていますが、まだ復旧が道半ばの建造物も数多くあります。その一つが、国の重要文化財に指定されている宇土櫓です。地震から9年、復旧の最前線を取材しました。
大天守、小天守と並び熊本城の「第三の天守」と呼ばれる宇土櫓。約400年前の築城当時の姿を残していて、国の重要文化財に指定されています。しかし、9年前の2016年4月、熊本城は地震で大きな被害を受けました。宇土櫓は倒壊こそ免れたものの、内部の壁がはがれ落ち、櫓が傾くなど再建を余儀なくされました。
復旧に向け、今も解体が進む宇土櫓。月に1度ほどのペースで一般公開され、多くの人が少しずつ進む復興の歩みを目に焼き付けます。
■訪れた人
「内部の構造を見られるのは貴重な機会。当時の木造技術、近くで見てこそ分かる技術があってびっくりしました」
■訪れた人
「古いものをこうやって残すというのは、大変ですがすごいことだと思います」
宇土櫓は昭和のはじめ、1927年に老朽化などを理由に建て直されました。今回、約100年ぶりに解体して再建を目指します。
解体中の宇土櫓の内部を案内してもらいました。向かったのは、櫓の1階と2階の間の部分です。
■永島由菜キャスター
「木の枠組みしかない状態ですね」
■熊本城総合事務所 渡辺広樹さん
「上から順番に骨組みを解体していきながら、一階部分の骨組みの解体にきています」
復旧は文化財としての価値を残すため、解体前とできるだけ同じ部材を使って再建を進めます。部材の中には、築城当初の400年近く前のものもあるといいます。
部材には、一つひとつに小さな木の板がついています。この板は「番付札」。それぞれの部材が建物のどの部分のものかが記され、再建するときの道しるべになるものです。
さらに。
■永島由菜キャスター
「亀裂が長く入っていますね。地震でできたものですか?」
■熊本城総合事務所 渡辺広樹さん
「地震でできた亀裂です」
昭和の立て直しの時に張られたコンクリートの床にも亀裂が。解体したからこそ露わになる地震の爪あとです。
そして、一般には公開されない上の階にも特別に案内してもらいました。
■永島由菜キャスター
「木も瓦もたくさんありますね」
■熊本城総合事務所 渡辺広樹さん
「解体した部材はこちらに保管しています」
フロアに並ぶたくさんの板材。ここには、宇土櫓全体の約3万5000点の部材のうち3分の2ほどが保管されています。瓦だけでも約3万点。階段はそのまま保管してあります。
■永島由菜キャスター
「これはどの部分にあたるのですか?」
■熊本城総合事務所 渡辺広樹さん
「窓格子の部分をそのまま取り外した状態になっています」
窓の格子部分の部材です。解体前の様子と比べると姿がそのままなのが分かります。
そして、壁や柱とは思えない不思議な形の部材は、天守閣の最上階の屋根にもある懸魚(げぎょ)と呼ばれる装飾です。火除けのまじないの意味があるということです。
■熊本城総合事務所 渡辺広樹さん
「一つひとつの部材に歴史があり、その中でわかってくる事実もありますので、そういったものは後世へつないでいかないといけないです」
歴史をひも解く宇土櫓の解体作業。元の姿を取り戻すまで、一歩ずつ、一歩ずつ。
【中継】
(永島由菜キャスター)
宇土櫓の1階と2階の間の部分にいます。熊本城総合事務所の渡辺広樹さんとお伝えします。文化財の価値を維持する宇土櫓の復旧で難しい面はどんな点ですか?
(熊本城総合事務所 渡辺広樹さん)
解体後は各部材の状態を確認し、もう一度使えるかどうかを判断しないといけないところです。
(永島由菜キャスター)
今後も一般公開がありますが、来場者に見てほしいこと感じてほしいことは?
(熊本城総合事務所 渡辺広樹さん)
100年ぶりの解体ですので、ぜひ一般公開の際に来ていただいて、復旧の歩みを感じてほしいと思います。
(永島由菜キャスター)
現在の熊本城の復旧状況です。天守閣と長塀は復旧を終えましたが、宇土櫓は約7年後の2032年度に復旧作業が終わる予定です。他にもまだ多くの櫓などで復旧作業が続いています。熊本城全体の復旧完了は約30年後の2052年度の予定です。
(04/16 20:02 熊本県民テレビ)
・TOP
Copyright(C)NNN(Nippon News Network)