■【解説】繁華街で「内水氾濫」記録的大雨で熊本の中心市街地に何が?(熊本県)
約100メートルにわたり浸水した下通アーケード。通り一面が水浸しになり足元をずぶぬれにしながら人が行き交っていました。
降り続いた雨は泥とともに地下の店舗などに流れ込みました。中には今も休業しているところもあります。当時、一帯で起きていたのが「内水氾濫」という現象でした。記録的大雨から1か月。熊本市の繁華街周辺で起きた浸水のメカニズムを検証します。
繁華街の地下にある飲食店。「36センチ、ここまできた」熊本市役所の裏通りで、30年あまり続くふぐ料理店です。
■和食工房もりもと・森本正治さん
「ここにフグが泳いでたんですよ。(店に)来たら漏電して完全に電気が止まっているものですから。魚自体も死んでしまっていた」
記録的大雨の後、資材は水に浸かり床は油と泥にまみれていました。妻と2人で少しずつ片付けを進めています。
■和食工房もりもと・森本正治さん
Q今までこんなことは?
「初めてです。あの重い冷蔵庫が水で浮くというのがやっぱり怖いです、水は」
熊本市の繁華街では営業を再開する店も増える一方、休業が続く店舗も…。記録的大雨から間もなく1か月。あの日、アーケード街には見たことがない景色が広がっていました。
8月、県内各地を襲った記録的大雨。線状降水帯も発生した熊本市では8月11日午前3時50分までの6時間に295.5ミリの雨が降りました。8月1か月の平均雨量の約1.5倍にあたります。
下通アーケードには屋根があり、道には排水溝が整備されています。それにも関わらず、街中の道路や階段は川のようになり水が溜まっていきました。なぜ、被害は起きたのでしょうか。
■東京大学大学院 情報学環総合防災情報研究センター・松尾一郎客員教授
「内水氾濫というんですけれどね。下水ではける雨の量以上の雨が降ったと。降った雨が地上に冠水したということで、川があふれなくても水たまりが街中にできる」
「内水氾濫」。大きな川から水があふれるのではなく、大量に降った雨に対する排水能力が追い付かず、側溝や用水路などから水があふれ、浸水する現象です。熊本市の繁華街でも排水溝などが能力を失い道路に水があふれだしました。加えて今回の大雨が降り続いたのは大潮の時期でした。潮位が上がり川の水が海に流れにくい状態になっていたと松尾客員教授はみています。
■松尾一郎客員教授
「中小河川に対して非常に厳しい雨だったということだと思います。川として飲み込める雨の量以上の雨が降ったということで、上流であふれたりしているわけですね/あふれた水というのが低いところにどんどん来ますからやっぱり低地の方に冠水してしまう」
排水能力をこえる雨が降った上水路の先にある川は水を受け入れられない…繁華街では、アーケード内の標高が低い場所や市役所付近に水がたまる結果となりました。なくならない大雨の災害。熊本市は被害想定の大きい地区を中心に対策をとってきました。
■熊本市都市建設局土木部河川課 雨水対策室・西章室長
「雨が収まってから放流するような調整池を整備したりバイパス管による(雨の)流出を効率的に行ったり、様々な対策をしているところです」
ただ市街地の雨水の排水については、市内の多くの地域で雨水と汚水の管が分かれているのに対し、中心市街地の城東地区は同じ管で処理しています。このため熊本市は「すぐに改善するのは難しい」としています。
一方、設備に頼らない対策として市は内水浸水の想定区域図を作っています。1時間に153ミリの猛烈な雨を想定したもので去年10月に公開しました。
周りと比べ、下り坂になっている下通アーケードや市役所の裏手などは浸水想定が最大1メートル以上のところもあります。この想定区域図の存在を知っていたか街で尋ねると…
■呉服店 店長
「内水浸水というワードを初めて聞いたようなところで、川が氾濫したら…というのは、前から私も伺ってましたけど、排水しきれない雨水が上がってくるというようなことは、ちょっと今回は驚きました」
店内が15センチほど浸水したという店の人も…
★Bonne Sante・高田美姫代表
「知りませんでした。(浸水想定図を)拝見して、ああ、やっぱり低いんだと思って。この辺も台風が来ても浸かったことはなかったので、今回はちょっと想定外でした」
店が35センチ以上浸水したふぐ料理店の森本さんも浸水の可能性があることは知っていましたが…
■和食工房もりもと・森本正治さん
「あれだけの降水量が一気に降って、やはり流れてくるということは今までなかったから、そこまでなるとは自分たちも思ってもみなかったからですね。今度から線状降水帯なんかが発生する前にやはりそういう何らかの形をとらんといけないなとは思います」
浸水想定図への市民の関心にばらつきを感じるという熊本市。周知を図りたいとしています。
■熊本市河川課雨水対策室・西章室長
「皆さんが必要になられた時に確認できるような形がとれればと思っていますので(想定図の)存在を皆さんが認知していただくということが大事かなと考えています」
大雨への対策は議会でも議題にあがりました。熊本市は内水氾濫が起きた後浸水が続く時間を入れた地図を年度内に新たに作るとともに、今後、避難の経路や場所を加えた「内水ハザードマップ」も」作成する方針です。
また建物へ水が入るのを防ぐ止水板の購入や設置への補助も検討しています。短時間で大きな被害をもたらすこともある近年の大雨。
■松尾一郎客員教授
「自然は変わってるんですよ。自然の変化に対して、私たちも対策を含めて変化していかなきゃいけない。災害というのは地域で起こるんですよ熊本県の役割、市町村の役割もあるそこに暮らす私たち住民の役割もある。それぞれが役割を全うすれば的確な防災行動をすれば命は守れるんです」
(09/08 19:31 熊本県民テレビ)
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