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弁論部門で最優秀賞「未来の先駆者」河野桃子の提案(熊本県)



8月30日と31日に放送される24時間テレビ。ことしのテーマは「あなたのことを教えて」。車いすで生活をする熊本市の女子高校生が、弁論で全国の最優秀賞を受賞しました。

7月の第49回全国高等学校総合文化祭。弁論部門で最優秀賞に輝いたのは、県立東稜高校・河野桃子さん(2年)です。足が不自由で中学1年から車いす生活を送っていて、社会に訴えたい思いを7分間にまとめました。



■東稜高校・河野桃子さん(2年)
2024年パリオリンピック、 パラリンピック。様々なルーツを持つ日本人がそれぞれの力を発揮して大活躍しました

オリンピックのメダルは過去最高の45個!「ダイバーシティ」バンザイ。 なんと素晴らしい世界ではありませんか。しかしちょっと待ってください。 なにか違和感はありませんか」

私の姿を見てお分かりのように、私は身体障がい者です。筋肉の発達が健常者より遅く、 今は自立歩行をする事ができません。

今年3月、家族旅行でのことです。駅前の優先タクシー乗り場に並んでいましたが、一台も来ません。一般タクシーと表示されているところは人を次々と乗せていたので、私達はそこに並び直しました。順番が回ってきた時に「車いすは優先タクシーへ行け」 と手で振り払われました。その後も1時間ほど『この車いすは分解ができるから、 トランクに乗せられます』と何度も説明しました。



しかし結局誰一人私達を乗せてくれませんでした。 面倒だったのだと思います。とてもショックでした。今まで感じてきた差別よりも強い障がい者差別を感じました。

オリンピックなどの表舞台では、 差別のない理想的な世界をアピールしていますが、現実ではこんなものです。理想と現実の乖離。これが私が抱えている違和感です。周囲にあふれる差別意識。やはり差別はなくならないのでしょうか。

私の姿を見て『障がいがあってかわいそう』と声を掛けてくる人がいます。 私はこの言葉にいつも傷つきます。『私の何を知っているの!』と。私には他の人が体験できない幸せがたくさんあるのです。だから『かわいそう』ではないのです。これって障がい者はかわいそう という偏見ですよね。

私はというと、偏見を持ったことはないと思います。

これは祖母の影響です。私の祖母は、仕事で忙しい両親の代わりに私を育ててくれました。いつも私の味方でいてくれる祖母のことを私は「ママ」と呼んでいます。祖母は私にとって先生のような存在です。祖母ははっきりと言い切ります。偏見を持ったことはない、と。 そんな祖母に尋ねたことがあります。『どうして差別はなくならないと思う?』

すると祖母は少し考えてこう答えました。『自分には関係ないことだと思ってるからじゃない?自分のことだと考えれば、差別なんてせんよ』」

「自分には関係ないことだと思っている」だから、差別はなくならないのか。なんだかストンと心の中に落ちた気がしました。とすると、自分のこととして考えることができれば、差別はなくなるのかも。自分のこととして考える。か」

私は身体障がい者の視点から考えてみることにしました。日本は超高齢社会を迎え、2060年には65歳以上の人口が約40%になると考えられています。

年をとると身体機能の低下により車いすで生活することになるかもしれません。『今は』関係ないかもしれませんが、老いは皆さんにも必ずやってきます。

想像してください。年老いて車いす生活のあなたの前にそびえ立つ階段。 あなたは当然、エレベーターを探します。ところが現在の日本ではエレベーターはたいてい離れたところにあるのです。遠回りをしてエレベーターを探さないといけない。そんなとき誰かがあなたに声を掛けます。『かわいそう』」

それを聞いてあなたは、車いすでも快適に移動できたらなあと思うはずです。

「ね、自分に関係ないことではないでしょう?『障がい者は高齢者の先駆者だ』 という意見があります。

障がい者が過ごしやすい社会を作ることが、超高齢社会で想定される問題解決の突破口になるということです。

障がい者からの声を参考にして整備を進めれば、皆が快適に過ごせる未来ができるのではないでしょうか。

昨年の夏、長江浩史さんとの出会いから私の活動がスタートしました 。長江さんは車いすユーザーであり、まちづくり団体「WeDOくまもと」の代表です。

長江さんが私にくれたのは声を届ける場所でした。長江さんがパーソナリティをされているラジオで、リスナーのみなさんに声を届ける機会をもらえたのです。テーマはもちろん「誰もが移動しやすく暮らしやすいまちづくり」 。出演を終えて長江さんが私に一言。「また一緒にラジオしようね」。

次の出演はかがわ総文の後になりました。大会の報告もリスナーの皆さんにしてきます 。



さぁ私は皆さんの快適な未来のために動き出しました。これからも皆が協力し合える平等な未来のために私は歩み続けます。だからお願いです。みなさんも自分に関係があること、という思いで周りに目を向けてください。そうすれば差別のない、平等な未来が待っているはずです。みなさんの快適な未来は私にお任せください。未来の先駆者 河野桃子、またどこかでお会いしましょう。


(緒方太郎キャスター)
桃子さんが体いっぱいに社会に語りかける姿に、私は目の前で圧倒されました。桃子さん自身も弁論を通して自分に自信が持てるようになったといいます。一人ひとりの意識が少しでも変われば優しい社会に近づくはずです。

(08/29 20:19 熊本県民テレビ)

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