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「盲導犬と生きるということ」 元パラ五輪メダリストの日常【徳島】(徳島県)



視覚障がいのある、元パラリンピック水泳金メダリストの男性と、サポートする盲導犬。

人生を共に歩む盲導犬との絆そして、盲導犬への理解など社会の現状を取材しました。


(記者)
「盲導犬は自分に合うと思いますか?」

( 酒井喜和さん)
「思いますね、僕以外では無理だと思うくらい、僕は思っています」

視覚障がいのある、酒井喜和さん43歳。

一緒に生活をするのは、ラブラドール・レトリバーのメスの盲導犬「キャリー」。

出かける時はもちろん、普段の何気ない日常も酒井さんとキャリーは共に行動します。

職場に向かう、酒井さんとキャリー。

ここから、1日が始まります。

職場までは、家から約1.2キロ。

朝は通勤や通学をする人が多くまた、歩道橋や踏切など視覚障がい者にとっては険しい道が続きます。

キャリーが、危険な場所を察知しました。

行く先を遮るように、体で酒井さんを静止させ、安全が確認できるまで動きません。

そして、安全が確認できると。

( 酒井喜和さん)
「フォワード、OK」

前に進んでいきます。

息はピッタリです。

この日、酒井さんとキャリーを出会わせた盲導犬歩行指導員・青木徹也さんが、大阪から数か月ぶりに様子を見に来ました。

(盲導犬歩行指導員・青木徹也さん)
「毎日通勤しているので、もうばっちりですね。歩調もあってますし」

訓練士の青木さんからも太鼓判が押されるほど、足取り軽やかに職場を目指します。

そして歩くこと約20分、酒井さんの職場に到着しました。

ひと仕事を終えたキャリー、水を飲むとすぐさま青木さんのもとへ。

仕事中は青木さんに甘えるのを、グッと我慢していたようです。

( 酒井喜和さん)
「(最初は)歩き始め速度が遅くて、たらたら歩く感じもあって困るなと思ってたが」
「最近、きょう以上のペースでサクサク歩いてくれるので、そこは変わりましたね」

(盲導犬歩行指導員・青木徹也さん)
「特に今回来るときも心配してなかったが、踏切もしっかり止まってくれて、心配するところはなかったです」

( 酒井喜和さん)
「本当ですか」

(盲導犬歩行指導員・青木徹也さん)
「本当です」
「後ろ姿からも伝わってくる、2人で(一緒に)歩いているということが伝わる」
「それは見てて、僕としても嬉しいですね」
「徳島県を出て(酒井さんは)色んなところへ行くので、なかなかペット犬では行けないところもある」
「盲導犬は常にユーザーと行動するので、キャリーは満足して日常生活を送っていると思う」

酒井さんは1982年に神戸市で生まれ、4歳から水泳を始めました。

しかし、中学3年生の時、あることがきっかけで目の病気が発覚します。

( 酒井喜和さん)
「自衛隊を募集を受けてみた。その二次試験の身体検査で」
「眼科検診で先生に病院を勧められて、受診をしたのがきっかけ」

診断結果は「網膜色素変性症」と呼ばれる、徐々に視野が失われる難病でした。

しかし、酒井さんは病気に心を落とすことなく、前向きに生きてきました。

実は酒井さん、視覚障がいがわかったあとも水泳を続けて2000年のシドニー、2004年にはアテネパラリンピックに出場し、金メダルを獲得するなどの輝かしい実績を残しました。

( 酒井喜和さん)
「うれしかったですね。人生の中での一つの大きなイベントだったので」
「今の自信の、根拠になっているかと思います」

その後、スポーツが好きだったことから、体に関わる仕事、そして選手時代、裏方から支えてくれた人たちへの感謝の気持ちから、鍼灸師や理学療法士の資格を取得。

2016年から徳島市で整体院を開業し、一人で切り盛りしています。

そんな酒井さん、2年ほど前に目の病気が急激に悪化しました。

( 酒井喜和さん)
「コロナの前後くらいですかね、急速に悪くなって字が読めなくなり、自分の手の指紋がわからなくなり」
「爪がわからなくなり、急速に進んだ時期がありましたね。」

現在は光を感じ取れるほど。

そんな中、イベントで盲導犬歩行を体験し、歩行の速さに衝撃を受けます。

( 酒井喜和さん)
「杖を使って歩いていると、そんなに早く歩けるわけではなかったが」
「犬に引っ張られるような勢いで、風をかんじるような」
「これなら昔みたいに、すたすた歩けるかなと思って 」

そして、2023年11月からキャリーと共に生活をしています。

月に一度の定期健診や毎日のブラッシングなど、自分のことだけではなく、キャリーの世話を最優先する酒井さん。

たくさんの人の助けがあってここまで共に歩んできました。

しかし、すべての人が盲導犬に理解があるわけではありません。

( 酒井喜和さん)
「直接経験して実際は入れなかったのは、飲食店、居酒屋さんと理髪店」
「盲導犬とペットの区別が難しい状況だったのかなと思うが、犬は困ると断られて」
「盲導犬と生活するというのは、自分たちの活動範囲、行動範囲 を広げる一つの手段だと思うが」
「逆に盲導犬と一緒にいることで、自分の行動範囲が狭まってしまうという体験なので」
「とても、残念な気持ち になった」

日本盲導犬協会によりますと、全国の盲導犬ユーザーの約半数近くが、飲食店の入店拒否や、交通機関での乗車拒否などを経験したと回答しました。

まだまだ、理解が進んでいないのが現状です。

そしてこんな不安も…。

( 酒井喜和さん)
「盲導犬やユーザーの写真を、勝手に撮らないでほしい」
「私たちは視覚に障害があることで、カメラが向けられていることにも気が付けずカメラの音がした」
「なんだろう?としか気が付かない」
「そのお陰ですごく不安になる、自分たちが撮られているんじゃないかと気になる」
「私たちのプライバシーに繋がることだから、出来れば写真を撮らない、カメラを向けないででほしい」



目の不自由な人の生活をサポートする盲導犬、県内でも7頭がパートナーとして活躍しています。

これまで以上に世の中の理解が進み、本当の「自由」を実感できる未来を夢見て。

酒井さんはきょうも相棒「キャリー」と共に歩みます。

年々盲導犬への理解が進んでいるとのことですが、VTRを見てまだまだ理解が広がっていないという現状もわかりました。

特に勝手に写真を撮られるというのは、視覚障がい者にとって恐怖だと思う。

誰もが不自由なく、温かい世の中になってほしいと思う。

(09/10 18:02 四国放送)

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