■【特集】「あきたこまち」から「あきたこまちR」へ 課題と今後の展望は?(秋田県)
秋田県内では、各地で田植えが急ピッチで進んでいます。
市場デビューから40年余り、県内産のコメを代表するあきたこまちは、今年の作付けで、有害物質を吸収しにくいあきたこまちRに切り替わりました。
一方で、あきたこまちRは、収量が落ちるといった栽培試験データがあり、秋にどのくらいとれるかなどを含め、コメ不足の中、生産者・消費者ともに関心が高まっています。
これまでの動きでみえてきた課題と、今後の展望についてまとめました。
■県産米の信頼揺らぐ事態…基準値超えるカドミウム検出
先月。
県産米の安全性の信頼を揺るがす事態が明らかになりました。
小坂町で生産されたあきたこまちから、基準値を超える有害物質・カドミウムが検出された問題。
流通したのは、首都圏を含む11都府県で、基準値を超えた県産米の市場流通は、2004年以来の出来事でした。
記者
「思い当たる原因は?」
熊谷農進 熊谷聴 理事
「水不足が原因で(カドミウム対策の)湛水管理がちゃんと整わなかったのが原因」
県 水田総合利用課 伊藤恒徳 課長
「今年から(カドミウムの吸収率が低い)あきたこまちRの作付けができますので、まず作付けできるところはできるだけ転換をしてもらうこと」
「秋田米の信頼が揺らいでしまいますので、そこの部分(対策)については、各法人・農協に対して、重ねて周知徹底を図っていきたいと思います」
■新たな切り札「あきたこまちR」とは?権利主張する反対派も
土壌中の有害物質・カドミウムをほとんど吸収しない特性を持つ、あきたこまちR。
食の安全性の向上が期待されていて、2130トン余りの種子が、注文した県内の生産者に届けられ、作付けが進んでいます。
秋田県立大学 谷口吉光 名誉教授
「一番の問題は、選択の余地がないこと」
「こまちRが安全かどうかではない」
「つまり、選ぶ権利があるかどうか。自分がこまちRでいい人はこまちRを選べばいいし、その代わりこまちRと表示したコメを売ってください」
「そういうふうに生産者の権利、消費者の権利がきちんと確保されることが大事」
一方で、一部の生産者と消費者は「県民集会」を開き、あきたこまちRに課題や問題があるとして追及しています。
秋田県立大学 谷口吉光 名誉教授
「誰も栽培したことがないお米を一斉に切り替えさせて、しかも(従来種は)選べない。減収してもリスクは補償しない。食味が違ってもリスクは補償しない。なんてでたらめな政策なんだろうと思う」
「『あきたこまちRはカドミウムを吸収しない安全なお米です』とプラスのブランドにすればいいと思う。なぜしないかと言えば、私は(食味・収量に)自信がないからだと思う。県が」
■画期的なコメと期待の声も…表示のあり方は?
こうした反対派の主張に反論しているのが、科学ジャーナリストの小島正美さんです。
科学ジャーナリスト 小島正美さん
「(種苗法が改正しても)今回もあきたこまちの場合は、自家採取を認めているので、生産者の選択の自由がある。県外の(従来)種子も入手できる」
「生産者の自由を侵害するという反対は成り立たないんじゃないか」
日本人の食で大きなリスクになっていたカドミウムをほとんど吸収しない、あきたこまちR。
消費者だけでなく、大規模化や生産増を見据えた農業の現場でも、画期的なコメになると小島さんは指摘します。
科学ジャーナリスト 小島正美さん
「(カドミウム対策の)水張が必要ないし、田植えも必要なくなる。直接種子をまくだけなら、水を張って田植えをする作業も育苗も不要になる。そういう意味において、あきたこまちRは、本当にこれからの省力型大規模農法にふさわしい品種だと私は思いますね。それに期待している農家も全国にたくさんいる」
こまちRの普及は、日本のコメ農業に貢献できると太鼓判を押す小島さん。
一方で、反対派も主張していた流通段階での表示については、まだ課題が残っていると指摘します。
科学ジャーナリスト 小島正美さん
「(低吸収など区別する)表示がないと、在来のあきたこまちを買っちゃうかもしれない。逆に、個人的には表示をしてほしい」
「そういう意味で、消費者に知らせる意味があるので、区別する表示はあってもいいと個人的には思う」
表示に関しては、県議会でも質疑が行われましたが、結論は出ていません。
自民党 工藤嘉範 県議
「従前のこまちが欲しいという声で、生産者に注文が入る形であれば、何か差別化するべきというか」
「こまちRなのに、こまちとして流通しないものかという逆の心配をしてしまうんだけども」
県 水田総合利用課 大友秀樹 課長(当時)
「実態としては2割くらい未検査で、2割くらいは状態で流通している中で」
「優良誤認を与えることがないように、国・関係機関と連携しながら、消費者に不利益になるような扱いにならないよう(監視する)」
県が全国に先駆けて導入した、カドミウムを吸収しにくい品種・あきたこまちR。
流通の段階で、消費者や市場はどう評価するのか。
県内の生産者はその動向を注意深く見ています。
(05/22 17:50 秋田放送)
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