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【笑顔で交流が活力】災害公営住宅の自治会長 被災した古里の未来のために (岩手県)



東日本大震災の後、大船渡市に整備された災害公営住宅で、長年自治会長を務めている男性がいます。「震災を生き延びた自分たちは幸せにならなくてはいけない」、そう考え、地域の活性化に取り組む姿を取材しました。

熊谷さん
「満開です。きょう満開です」「(震災では)寒いときに被災したので、だんだん暖かくなってサクラが咲いてきて、少しは励まされて…『もう頑張るしかない』と思って立ち上がったことを覚えている。だから(毎年)サクラはひとしおですね」

大船渡市で災害公営住宅・平南アパートの自治会長を務めている熊谷信弘さん76歳。楽しい地域にしたいと、様々なイベントを開いています。

平南アパート自治会長 熊谷信弘さん(76)
「コミュニケーションがいつでも大事ですね」

震災直後の避難所

熊谷さん「家族全部、元気ですから…」

家族は無事でしたが、大船渡市末崎町にあった自宅を津波で流されました。
仮設住宅で丸5年暮らし、妻と2人、災害公営住宅に入居したのは震災から5年後の2016年。「夢のようにうれしかった」といいます。

熊谷さん
「住み心地は最高ですね。住めば都というか、それ以上に気に入って生活しています」「これは、新年交賀会に子どもたちも集まって…」

入居してまもなく9年。ずっと自治会長を務めています。こだわってきたのがイベントです。みんなで楽しく生活できるようにと、積極的に企画してきました。

熊谷さん
「当初スタートした頃は『お楽しみ会』を年に6回くらいやったこともある」「にぎやかになりますね」

50世帯のうち、高齢化などで20人ほどが亡くなりましたが、津波で被災していない人たちの新たな入居も多く、今は4割ほどを占めます。若い人の自治会への参加など課題はあるものの、将来のため頑張りたいといいます。

熊谷さん
「活発にやっているということで、他の人からも言われるので、いいと思っている、自分としては」「赤ちゃんのような、本当に創成期で、まだ10歳に満たない平南団地だが、我々が先頭になって(動き)、将来、今の40代・50代60代の人たちが退職した頃に楽しい生活になるように(と考えている)」

津波で流された集落の跡。ここで週1回、力を入れてやっていることがあります。
団地の活動とは別に行っている「カラオケ」。大船渡市内や隣の陸前高田から10人前後が集まり、歌でにぎやかに交流しています。

参加者
「会長に誘われてここに来た」
「この集まりは楽しい」
「(カラオケは)生きがい。楽しみがないと」

イベントだけではありません。熊谷さんは団地に池や畑を作り、さらに…。パークゴルフのコーナーまで整備しました。

「やめられない。ホールインワンとか」
「どこの災害公営住宅にもパークゴルフがあるところはないと思う。4ホール」

先月。お花見に合わせて開いたカラオケは、特に盛り上がりました。この日は景品を用意。

「いやー、気持ちいいですね」

それぞれ、生活の不安がないわけではありません。

こちらの漁師の男性は、ワカメの価格が去年より低いことが気がかり。
気仙沼から来た寿司職人の男性は、最近、仕事がないと嘆きます。

気仙沼から来た寿司職人の男性
「コロナになってからダメ。(注文の)電話が来なくなった」

それでも、笑って交流することがあすへの活力になります。

「俺きょう楽しみで4時半に起きた」
気仙沼から参加した女性「やっぱり人のふれあい、出会いね、いいですね」

熊谷さん「また、(こういう企画を)やろうかな」

平南アパート 自治会長 熊谷信弘さん
「(津波で)被災をした後、多くの人たちに支援してもらい、いろんなサポートや励ましをしてもらったので、私たちは幸せにならなければダメなんですよ」「(震災を)生きた俺たちはね」

津波で被災した古里の未来のために。日々、笑顔ですごします。

(05/21 18:46 テレビ岩手)

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