■【特集】八幡平市ICT医療@(岩手県)
岩手県は医師不足が深刻です。こうした中、八幡平市ではICT・情報通信技術を活用したオンライン診療を導入して成果を上げています。2回に渡って八幡平市の医療を紹介します。
雄大な岩手山のすそ野にある八幡平市。市は大更にある市立病院と旧安代町にある2つの診療所を運営しています。
3つの医療施設を管理している望月泉統括院長は、県立中央病院の院長を務め退官後八幡平市の医療を支えています。
八幡平市大更から田山地区までおよそ40キロ。車でほぼ1時間かかる田山診療所は常勤の医師が辞めてしまってから望月院長らが交代で診察に通っています。
八幡平市立病院 望月 泉 統括院長
「特に冬はホワイトアウト(雪などで視界が白一色)になり高速道路が閉鎖されたり医師が診療所に行けなくなる。その場合には休診にしなければならないあるいは医師が病気にかかるとか感染症にかかるとか、そういう場合に診療所は休診にしなければならない。オンライン診療を導入することで医師の移動がなくなる休診にしなくてよい、そういうメリットがあるし患者さんにとっても休診になると薬がもらえないということになる(オンライン診療によって)持続可能な医療提供体制が作れる」
雪深い八幡平市のなかでも特に雪が多い田山地区。八幡平市立病院がある大更から40キロも離れています。今年2月に撮影した田山診療所は、夏とは全く違う姿を見せていました。
記者「きょうもまたすごい雪ですね」
望月泉院長 「本当にね すごいですね。こちらから入りますので」
望月統括院長はこの日の午前中、市立病院で診察をした後田山診療所に来ました。この日は対面診療のほかオンライン診療も行います。八幡平市のオンライン診療は患者さんの家に看護師が行って一緒に診察を受けます。こうすることによって、デジタル機器が苦手なお年寄りも安心して診察を受けられます。
望月院長
「きょうは看護師さんが訪問したから良かったですね。ご飯は食べてるの?持ってきてもらった」
患者さん
「お昼はまあまあ食べましたけど、今はまだちょっとずつしか食べられない」
望月院長
「今度あまりにも具合が悪い時には点滴を持ってくから、きょうはご飯食べたのであれば、点滴は必要ないと思うけど。ご飯が食べられない時には点滴を考えましょうね」
望月統括院長はこうした地道な地域医療に取り組む一方、全国に1000もある自治体病院の協議会会長も務めています。協議会では地域医療再生に向けた課題と方策を話し合いました。
九州大学 尾形裕也 名誉教授
「コロナ禍の当初1、2年 私は幸いなことだったと思いますが、日本は先進諸国の中でコロナの患者数感染者数が少ない、あるいは死者数も少ない、これは大変幸いなことだったと思いますが、そこで出てきた議論としてなぜあの程度の感染者数で医療崩壊になるのか、あるいは病床ひっ迫ということになってしまう日本は世界で最も病床数が多いはずではないか、こういう議論がありました。これももっともな疑問だと思います。これに対する答えを一言で言うと病床は多いが人がいないということこれが最大の要因だった」
望月泉会長
「患者さん かかりつけ医どういうふうなみとりまで含めた医療を希望されるかということを進めていくかということであります。中小病院はそういうことをやっている。小澤先生ちょっと一言、小澤先生一言お願いします」
神奈川県三浦市立病院 小澤幸弘 総病院長
「高齢者の地域の情報共有をいかにしていくか、そういうところをしっかり情報共有をできるシステムを中小病院に与えていただきたい。今後これこそ地域に密着した中小病院が存続して行くための一番大事な必要事項ではないかと思っています」
望月会長
「今の話は情報ネットワークのような形でしょうか、情報の共有というのは」
小沢医師
「ある意味中小病院というのは、一つの共通の電子カルテを作っちゃったほうが良いのではないかと思います」
医療のデジタル化は大規模な病院はもちろん、きめ細かい医療を展開するため小さな診療場でも普及していくことが期待されています。
望月医師
「電子カルテは病院で進んでいるが、診療所レベルではまだまだ普及していないいま厚生労働省が標準型の電子カルテを提供して診療所に入れて行こうとしています。標準型の電子カルテを導入して情報の共有ができるようになればいいと思っています」
広い県土を有する岩手県。オンライン診療は医師不足に悩む過疎地域にとって有効な手段として期待されています。
来週はオンライン診療を支えるデジタル技術についてお伝えします。
(05/13 18:05 テレビ岩手)
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