■大船渡山林火災 どうなる「山林の再生」半世紀前の教訓とは(岩手県)
まもなく発生から3か月を迎える大船渡の山林火災です。「山林の再生」が大きな問題となっている中、行政が対策に乗り出しました。課題が山積する現状と、半世紀前の教訓について、吉岡キャスターがわんカメでお伝えします。
私は大船渡市三陸町綾里の山林にいます。こちらの山林は地元の製材会社「鹿児島屋」の及川会長が所有する山林です。見渡す限り木の根元は黒く焼け焦げています。
今回の山林火災は平成以降国内最大規模で、焼失面積のうちほとんどがこの山林のような個人などで所有する私有林です。
所有する人にとっては、焼けてしまった木の販路があるのか。局地激甚災害に指定されていますが、自分たちの山林の伐採や搬出の費用は行政の補助の対象になるのかなど、先行きが不透明な部分が多くて身動きが取れない状況なんです。
対策が急務となっている中、市の対策協議会の初会合が22日開かれました。
協議会は、大船渡市や県の関係者などが参加して行われ、「森林の復旧事業」について今後の方針などが示されました。
今回の事業は、被災した森林およそ3400ヘクタールのうち、人工林1700ヘクタールに対し4年かけて被害を受けた木の整理や造林を行うもので、激甚災害指定となったため、費用は国と県、市が負担します。
しかし、現時点の計画は事業範囲260ヘクタール、事業費10億円のみで、今後、整備範囲を追加する必要があり、課題は山積しています。
大船渡市農林水産部 山岸健悦郎部長
「災害復旧期間の4年間でやるとなると非常に難しい。期間の延長と自治体負担についてのさらなる財政支援を要望していきたい」
再生の範囲が、あまりにも広大で経済的にも時間的にも難題を突き付けられている形です。そんな中、こちらの山林を所有する鹿児島屋の及川会長が、47年前に経験した山林火災の現場を案内してくれました。半世紀を経て、今どうなっているのか、ご覧ください。
大船渡市三陸町の製材会社「鹿児島屋」の及川会長です。案内してくれたのは、いまから47年前1978年の4月に一帯が山林火災になったという現場です。
及川会長
「火が上がっていったわけよ」「ここからここまでが火が入って、2メーター前後火が上がったんじゃ ないか」
吉岡キャスター「当時は(焼けて)黒かった?」
及川会長
「そうそう」「火が入って(焼けた部分を幹が)くるんで(中が)腐っている」
火が最初に迫ったラインに並ぶ木の幹は、火災の影響とみられる跡が残っています。一方、その後方の斜面に立つ木にも延焼したということですが。
及川会長
「見てこれは全然何ともないだろう。全部まともに立っているこれも火が入っているんだから生きていれば当然(回復して)こうなる可能性の山が今回の山林火災でもあるのではないかと思う」
吉岡キャスター「ここまで火が入ったとしても、この上は?
及川会長
「この上は(木材として)使えると思う」「5年10年すると(焼けた)下の黒い部分は当然なくなってしまう。これ見えないでしょ」「火が入ったと言われないと分からない」「被災の程度、何センチまで火が上がっているかそれによって一旦(伐採せず)置いておきましょうとそういう方法もあるのではないかこの現状をみると」
こちらの山林も根元が焼けていますが、及川会長は「木は死なずに生存する」と見越して数年このまま残して木材としての価値が回復するまで待ちたいと話していました。
ただ「山林の再生」は、「木を切るのか、切らないのか」「補助金が出るのか、出ないのか」など、ケースバイケースで簡単には進められないんです。
まずは、山林の所有者と行政が意見交換する場が求められているんですが、22日の森林再生対策協議会では、聞き取り対象の所有者が数百人に上ることからまず郵送で意向調査を行い、その後、説明会を設ける予定も示され、まだまだ時間がかかりそうです。
山林火災の発生からまもなく3か月。現場ではいまも、難問にいかに対応するか模索が続いています。
(05/22 19:21 テレビ岩手)
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