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逸品C啄木ゆかりのいちごジャム 「夏いちご」で商品化(岩手県)



今月のシリーズ「逸品」。4回目は、夏に収穫できる「夏いちご」を栽培する盛岡市の農家です。石川啄木ゆかりの「いちごジャム」をつくり、新たな逸品として注目されています。

盛岡市渋民に、4月オープンしたばかりの「道の駅もりおか渋民たみっと」。ここに、ひと際目を引くキッチンカーが。店を切り盛りするのは、いちご農家の菊地潤さんです。

菊地さん
「これが自分の農園の『夏いちご』を100%使った、けずりいちごになります。フワフワに削ってるので、口当たりも滑らかですし、何よりいちごを100%削ってるので、溶けても生のいちごに戻るだけなんです。自分で栽培しながら毎週1回とかそんな感じでキッチンカーを出店してますね」

盛岡市渋民にある「玉山うるおいいちご園」。菊地さんは脱サラし、2021年から夏いちごを専門に栽培しています。

菊地さん
「夏いちごと呼ばれる『すずあかね』という品種ですね。だいたいスーパーに出回っている『とちおとめ』とか『紅ほっぺ』というのは、9月くらいに植えて12月クリスマスに採れるという感じなんですけど、これは全く違う品種で、『夏いちご』と呼ばれるものは4月に植え込みを行って、7月くらいに採れるような。東北でも全国的にも生産量は少ないので、それをここで栽培してるような感じですね」

菊地さんが栽培している「すずあかね」は、爽やかな酸味と程よい甘さが特徴です。2025年2月にはその希少性と取り組みが評価され、盛岡ブランド品「盛岡夏いちご」の認定を市から受けました。さらに…

菊地さん
「こちらですね、まだちょっと試作品なんですけど。夏場に採れた『すずあかね』をヘタを取って冷凍してそれをジャムにして、夏から商品化しようと思っています。普通の甘ったるいジャムとまた違って、酸味も活かしつつジャムらしい甘さも持ちつつというところなので、そこら辺が他のとは違うなと思いましたね」

菊地さんが今年販売を予定しているのが、夏いちごの『すずあかね』を使ったジャム。特にこだわったのが、甘すぎず酸味のある味に仕上げたところです。この甘すぎないジャムを作ろうと思った理由、それは地元玉山出身の歌人、石川啄木の存在でした。

菊地さん
「石川啄木が晩年ですね、いちごを食べたくてジャムを買ったが、ちょっと甘すぎて、もっと酸っぱい甘酸っぱいジャムが食べたいという文献が残っていてですね。その文献を見て、ぜひそれを再現してみたいなと思って、改めておあつらえというか、そういった品種になってるので、これはやはりそれにちなんだ商品を作るべきじゃないかなと思って、作っています」

盛岡市渋民にある「石川啄木記念館」。館内には、そのジャムに関する文献が残されていました。

担当者
「啄木が亡くなる時の様子を、奥さんの節子さんから啄木の妹の光子さんの方に送ったお手紙なんですね。その時の最期の様子の中に、実はいちごジャムを啄木が食べたという記述があるんです。いちごジャムを啄木が食べたんですけど、あまりにもちょっと甘かったということで、これであれば地元に戻って啄木自身がこしらえて自分で作っていい塩梅のジャムにしたいという理想を語っていたようです。おそらく地元で食べたいちごというのがこの甘酸っぱい感じのいちごだったんじゃないかなと思います」

啄木の晩年を物語る貴重な資料。100年以上の時を経て、菊地さんは啄木が好む味のいちごジャムを作り上げました。

菊地さん
「うちの先ほどお見せした、いちごのジャムを作ってもらってる工房があるところです。パティシエの方に作ってもらっています」

ジャムを製造しているのは、地元で菓子作りを行っている瀬川徹さん。菊地さんの取り組みに賛同し、ジャム作りを引き受けました。

菊地さん
「何個か要望というか、何回か試作品を作ってもらって、赤の発色もっとあった方がいいのかなとか。実績もある方ですし、僕としても盛岡の中で採れたものを盛岡の中で作って盛岡で発信していくっていうのはやはり夢に思っていたところだったので、それはもう申し分ないというか」

瀬川さん
「なかなかおいしい、いちごがおいしいので。できるだけ私の持っている技術でちょっと付加価値を付けて外に出していくという、そして地域を盛り上げていくという風にしていけばいいかなと思うので、今後もそういう挑戦はしていきたいと思います」

プロも太鼓判を押す、その仕上がり。菊地さんはこのジャムを通して、より多くの人に夏いちごの存在を知ってもらいたいと言います。

菊地さん
「地元で一つの農産物を作るにあたって、盛岡イコール夏いちごとか、盛岡といえば夏いちごが有名だよねという風になりたいと思っていたので、そういう所を夏いちごを見ただけであの人かとか思い浮かべられるような農産物が作れればと思っています」

菊地さんは、この夏いちごのジャムが玉山の特別な逸品となり広がって欲しいと願っています。

(05/22 19:15 テレビ岩手)

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