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平成生まれの人知ってる?来年は60年に1度の「ひのえうま」(熊本県)



「DayDay.」MCで熊本出身の武田真一さんとリモートで結んでお伝えします。


(東島大記者)
今回は「丙午(ひのえうま)」です。緒方さん、そもそもひのえうま知ってますか。

(緒方太郎キャスター)
実は特集するまでよく知らなかったです。


(東島大記者)
よく見かける日本の人口の年齢別グラフです。ここに注目!1966年だけぽこんとへこんでいます。太平洋戦争終戦前後の数年間と同じぐらい生まれた子どもが減っています。昭和41年、1966年に何があったのか。「ひのえうま」の年に子どもを産むと良くないという迷信があって、そのためにこれだけの数の子どもの出生数が減りました。迷信が戦後引き起こした最大の事件と言えるかもしれません。実はこのひのえうまが来年めぐってくるんです。


ひのえうまは干支のひとつです。干支は十二支と十干があって干支は子丑寅…の12、十干は甲乙丙…の10。組み合わせは120通りになりそうですが、実際の干支の組み合わせは60です。つまりひのえうまは60年に一度回ってくるわけです。でも、ひのえうまという干支そのものに悪い意味があったわけではないんです。

坂本冬美さんの名曲「夜桜お七」は、八百屋お七という実在した女性をモデルにした歌なんです。

江戸は本郷の八百屋の娘・お七。火事がきっかけで吉三郎という若者と恋仲になり、その思いは募るばかり。ああ会いたい、吉三さまに会いたい思い詰めたお七、また火事になればあの方と会えるのではと、あろうことか自宅に火をつけ火あぶりの刑になったという悲しくも哀れなお話。このお七がひのえうまの生まれ、そのため「ひのえうまの女性は気性が激しく惚れた男を食い殺す」なんてこじつけた迷信が生まれたわけです。


東島大記者もその丙午生まれ。とはいえ男はこの迷信にはあまり関係ないんです。問題は女性。女の子を産みたくないからと、この昭和41年・1966年、出生数が激減したんです。全国では1965年に182万人だった出生数が136万人に、熊本県では2万8920人から2万2578人に減ったんです。

(武田真一さん)
しかし私も丙午に近い世代ですが、さすがに今はもう影響はないんじゃないですか?ただ来年ということは、意識する人はことしのうちから子どもを作らないという選択をすることになりますね。

(東島大記者)
令和の熊本の人たちはひのえうまをどう考えているのか聞いてみました。


【VTR】
■街の人
「知っていたとしても気にしない派ですね、全然。迷信というか言い伝えだから、 そういうの信じないタイプなので気にしない」
■今年2人目を出産予定
Qもし来年だったら気にしてましたか?
「いや、気にならないです」
■ことし出産した女性
Qたとえば2人目を来年という時には?
「どうせならやめようと思います。確かに。そういう話があるのなら」


■30代女性
「もし自分の子どもが何かあった場合、いつもは(迷信を)気にしないと思うんですけど何かあった時は『ああこれがあったからなのかな』というのは頭の隅に残ると思います。


■「ひのえうま」の女性
「結構年配の方から『ひのえうまなんです』というと『気が強いんでしょう』とかそういうイメージで言われることはありますね」
Qちなみにご結婚は?
「していないです。これが関係あるかどうかはわかりませんが。でも昔お見合いの時に、お見合いしませんかって言われたときに『私ひのえうまなんです』と言ったらお断りされたことがあります」
Q来年「ひのえうま」なんですよ
「ですよね、はあ。ため息が出ちゃった」
Qうんざりしますか?
「いやですね。あんまり思い出したくないというか」


■10代女性
Q来年どうなると思いますか?
「ぜったいあると思う。あるよね。あると思います。やっぱり迷信はね、当たる。当たるというか、世界って何が起こるか分からないからね。こういう迷信もありえると思います」
Q自分たちは信じますか?
「信じ…ます!」
Q迷信とわかっていても信じる?
「はい!」
「えー信じる?信じないかも私、親が言うなら『あ、やめとく』っていうかも。いろいろあるじゃん。都市伝説とか結構信じる方なので、たぶん気にしちゃう方かもしれない」



【スタジオ】

(東島大記者)
100人の方にお答え頂きました。ありがとうございました。その結果は、33人が「知らない」、ちょうど50人が「気にしない」、17人が「気になる」でした。

ただ10代20代の「気になる」この方たちも最初の答えはほぼ「知らない」、私の説明を聞いて、「気
になる」に変わった人。そして50代の「気になる」のうち3人は自分自身がひのえうまという女性で、迷信は信じていないけど、気にならざるを得ない人生だったという意味です。そして特徴的なのは、30代。この人たちもほとんどは最初は「気にならない」という答えでしたが、「自分が子どもを持つとしたら」「二人目を持つとしたら」と私が重ねて聞くと「気になる」「ひのえうまは出産しない」と答えた人が一定数いました。

(武田真一さん)
少子化の時代だからこそ、子をもうけようという人は、少しでもよい家庭環境や教育環境を与えてやりたいという意識が高くなっているように感じます。たとえ迷信でも、丙午生まれというハンデを背負わせたくないと考える親もいるかもしれません。またSNSでの拡散も油断できません。例えば「能登半島地震は人工地震だ」という荒唐無稽なデマがあっという間に拡散したこともありました。まさかと思いながら本気で信じてしまう人がいてもおかしくない時代です。

(東島大記者)
果たして来年、出生率は下がるのか下がらないのか。こうした問題についてこのほどひのえうまを研究したこちらの本を書いた専門家に聞きました。


【VTR】
■大阪大学・吉川徹教授
「大阪大学の吉川徹です。現代日本社会をデータを基に分析する社会学を専門としております。出生率の低下は私は起きないと考えています。若い世代の人たちがまったく知らなかったことが、新たにひのえうまの迷信というのがあるよと知らされたことで、爆発的に流行することはありうるかなと思うんですね。ただその一方でひのえうまって いうのは、ある特定の人たち、つまり結婚してこれから子どもを持とうと思っている人たちが子どもを産むかどうかということで、人口・出生の減少が起きるという現象であるわけです」
「今は子どもを積極的に持ちたくないという思いの方がひのえうまの迷信よりはるかに強くて、ひのえうまはその中に 埋没しちゃってるという。言い方を変えるとそれだけ深刻な少子化の状況に私たちはあると。ひのえうまの赤ちゃんを減らすということすらできないほど、社会が子どもを産まない方向に抑制しているということになるかと思います」


【スタジオ】
(武田真一さん)
ひのえうまなど関係ないほど、子を持つ意識が薄れているのではというのは、衝撃的な分析ですね。

(緒方太郎キャスター)
そうですね。出生率は下がらないという結論は良かったですが、それをのみこむような子どもの減少が続くということですね。

(東島大記者)
そして吉川さんは、私たちメディアとひのえうまについてもこのようなことを指摘されていました。


【VTR】
■大阪大学・吉川徹教授
「人の命に関わるという意味でひのえうまという(迷信)は別格です。世界的に見てもないですし、日本の歴史を見てもない。メディアが、新聞でも週刊誌でもテレビでも報道して、一瞬にして北海道から沖縄までの人々に同じ情報を伝えるっていうインフラがあった時期、そして それをみんなが見るという時期だったこそからこそ起きた。この特集を見て、それで昭和の時代だったら『うわ、こんなことを熊本県民テレビが言ってるよ』 って言って大変だっていうので、 次の日から社会的な反響が起きるということなんですよね。だけど今はそんなことがあったのかふーんって情報として仕入れはするけれども、それについてみんなが同じ形で信じて同じ方向に向かって動き出すというのはないですね」


【スタジオ】
(武田真一さん)
昭和のひのえうまも、メディアによって拡散されたんですね。やはり前回との違いは、メディアの役割が変わってきたということもありそうですね。

(東島大記者)
今はSNSで頻繁にデマやあいまいな情報が流されていて問題になるという点では当時と近いものもありますね。今でも、大安や仏滅といった「六曜」や、一粒万倍日、天赦日など、根拠のない言い伝えがメディアや広告のマーケッティングに使われたりしています。個人的に楽しむ分にはいいと思いますが、それで社会や経済が動くようなことがあれば、危うさを感じます。ただ例えばXでは「コミュニティ・ノート」という機能があり、誤った情報について別の投稿者が訂正したり注意を促したりできるようになっています。ひのえうまについても、そうした市民同士の自浄作用によって誤った拡散の仕方を防ぐことが期待できると思います。


(05/15 19:26 熊本県民テレビ)

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